祭りの夜
君は、今どうしている?
神隠しに逢ったはず兄から、手紙が届きました。
子供の様に愚かに。挫かれて。
千切れた彼岸花の花弁は、静かに炎に燃えていました。
ざざん…ざざん…潮騒がどこからともなく聞こえてきて、私は、失くした小指を探すのです。
戸棚の中の髑髏が嗤っています。
祭りの夜。黒猫が鴉と盆踊りをしている所を、目撃してしまった。
蓮の上で、蛙が奇妙にけたけた嗤って此方を指さしている。
お賽銭を投げ入れようとして、真っ赤な色の呪い文を入れてしまった。
鼻の中から、駒が飛び出してきて、これは瓢箪ではなかったか、と驚いているようである。不思議な祭りの夜。
夕暮れ時、暑さがほとぼりを冷まし、魑魅魍魎が百鬼夜行。
人の見えないところで列をなして、人の魂を運びます。
恩師の魂も、どこかで彷徨っているのでしょうか?
お風呂の窓から火の玉を目撃してしまいました。
懐かしさに、会いに来る魂。
地蔵の眼が、怖いのだ。
恩師はそう言ってよく悩んでいました。
遠き想い出、ヒグラシの鳴き声。
両の掌から、小鬼の詰まったビー玉が零れ落ちて、篝火の中へ零れ落ちてゆく。
アーヤレコーヤレ、遠くの海の巫女が、龍神をなだめるために身を投げる夕べの頃、
私は、8月15日に丸をしているカレンダーを眺めている。
入道雲が背を高め、遠雷がゴロゴロと聞こえてきた。
都の宝物は部屋の片隅に。
アイロニーは、メロウな街に置いてきました。
また今年も朝顔の静かな夏。
君の横顔が陽炎に燃えて、太陽はギラつく。
蝉の鳴き声が、汗だくで部屋に横たわる私を苛める。
お前ら、覚えて居ろよ。
水晶の石をサイダーに沈みこませると、鉱石ラジオが勝手に今日の気温を伝え始めた…
部屋の隅に、赤い眼の鬼が膝を抱えて蹲っている。
亡くなった人には、出会えましたか?
向日葵の咲いていた夏はもう終わってしまって、街中、秋雨でしとどに濡れています。
影法師の子守歌は、軽やかなに死を招く。
お前は、なんで生きているんだ?
問いかけに答える声は、ありません。
ただ眠る懐古蝸牛。
オレンジ色の不気味な灯りの下を通って、帰り道。
一日中降った雨は、水田を水浸し。
夜は暗い。
今だったら、泥田坊と仲良しになれるかな。
田を返せ、魂食わせろ。
傘もささず歩く人。
雨に濡れて、道端に堕ちている花、薫る。
壁の染みが、人の顔、水の匂い。
まだ、蝉、啼いている。
季節は秋。