3日目
なんというか、大失敗だった。
依頼ではない。そっちは大丈夫だった。というかむしろ、驚くほど快調に進んだ。
そう、フライングフィッシュの駆除は滞りなく済んだのだ。偶然にも、コルネリの修道院から来ていた修道士が、魔法石で風の網を広げてくれたおかげで、あとは私が斬って燃やすだけだった。久しぶりにチームプレイをした気がする。以前も書いたが泣いてない。
フライングフィッシュを追いかけ回す必要もなく、追い込み漁の要領で追い立て、後は一網打尽。驚くほど楽が出来た。修道士さまさまだ。修道士にはろくなのがいないと思っていたが、多少は認識を改めた。
ちなみに、私がいい感じに斬って炭化するまで焼いたフライングフィッシュは砕いて肥料にするらしい。抜け目がないというか、たくましいというか。…褒めているつもりなんだが褒め言葉らしくない言葉しか出てこないのでこの件についてはこの辺で。
………失敗したのはお礼にと貰った食用フライングフィッシュを早速牛乳で煮た方だ。
結論から言うと、溶けた。
鍋の中はぐつぐつ煮込まれた、バターの香りも豊かなミルクのスープに魚が溶け込んだものだけが残った。
いや、仕方がない。私が貰った魚は、食用フライングフィッシュの一種だ。つまり前世の魚とは違う。前世では魚は空を飛ばない。だから次は普通に海で泳いでいる方の魚で挑戦することにする。
虚しく煮えたぎるミルクのスープは適当に味付けをして、昨日のパンの残りが硬くなったやつを放り込んで煮込んでみたら結構美味しくできたので、きちんと平らげた。魚についていた塩みがいい味を出していた。これはこれでありだ。
フライングフィッシュは調味料、覚えた。煮込んだら溶けるんだなあいつら。焼いたら普通に個体のままなのに。焼きフライングフィッシュは、コリコリしてて美味しいんだ。酒の肴に好む冒険者も多いが、私は断然トニックウォーター派だ。いや、蒸留酒も捨てがたいが、塩味を効かせた焼きフライングフィッシュには絶対にトニックウォーターだ。これは譲れない。塩味にダメ押しのフルーツソースをじゅわっとかけて食べるのが一番だとも。
しかし、なるほど道理でオーサでは焼きフライングフィッシュの店しかないわけだ。煮込みフライングフィッシュはもうそれスープだったんだな。理解した。当たり前過ぎて疑問にも思わなかった。
そうだ、前世では魚は射るものではなく釣るものだった。ということは、射る方の魚と釣る方の魚が別ものだということだろう。なんで気づかなかったんだろう! 盲点だ。
それはさておき、依頼が予想以上に早く片付いたことに喜んだシティマスターが、明日また町に来てくれと言っていた。今日は星が綺麗だから野営をしているのだが、そういうわけで明日はオーサの宿屋に泊まろうと思う。
フライングフィッシュに突撃されて穴が開いた壁を修繕する手伝いもできたらいいんだが。