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2日目

昨日の今日ので頭の中は大変忙しいが、今日は昨夜ほど動揺はしていないので整理するために記す。ついでに書くならこぶの痛みは未だに引かない。鉄鍋に、あれだけしたたかにぶつけたんだから仕方ないとはいえ、痛いものは痛い。こぶだけで済んだのはむしろ奇跡だとは思うけども。


さて、この摩訶不思議現象を、なんとか名称をつけるために前世の記憶を思い出したと定義するとして。

今日一日、その前世の記憶を思い出したことによって、随分とものの見え方が変わってきたように思う。


具体的にいうと、まず、空を飛ぶ羽鹿を見て朝一で叫びそうになった。

以前生きていた世界では鹿は空を飛ばない。というか鹿に羽はない。ちなみに朝一で心臓に悪い目覚ましになってくれた羽鹿は射落として朝食にした。昨日買ったのよりも美味でした。ごちそうさまでした。きちんと平らげて食べきれなかった分は干し肉にして、骨は洗って川に流した。……あの肉高かったのに。今度から自分で狩ろう。

しかし、ジビエ、なる料理は存在しており、野生の動物の肉を食べる文化はあった。前世では、大概の肉は畜産によってもたらされるものだが、しかしそれでもそのような料理は存在していたようだ。

そのおぼろげな知識を駆使してさばいて味付けをしたら、この世界のどんな料理よりも美味かった。主観かもしれないが。

前世のそれを完全に再現できたとは言わないが。しかし肉をパンに挟むのは盲点だった。これはいい。発明した奴天才か。確かサンドウィッチ伯爵が発明したからサンドウィッチになったとかそんな感じらしい。安直だな。

どうも天才ではなさそうだ。


しかしまあその記憶を思い返してみれば、その世界には魔法がないというのに、随分と便利なものが多かったように思う。炎が出ないのに鍋があったまるとかなんだ、あれで魔法じゃないとか、あの世界怖過ぎないか。一体どんな仕組みなんだ。


いや、前世では私も理解していたのだろうが。やはり混乱の影響で、今の私にとっては向こうの世界の方がとんでもない未知の世界だ。いや当然か、私にとっては向こうは異世界なのだから。

あとあれだ、電子レンジとかいうあれ。箱の中に食べ物突っ込んでスイッチ入れたら料理ができあがるとか、なんなんだ、魔法の箱か。魔法ないんじゃなかったのか。魔法なくても魔法の箱はありってか。意味がわからん。いや、理解はしてるんだが情緒が追いつかないというか。


ううん、やはり混乱している。

とりあえず、明日は羽鹿を見て叫ばないようにしなければ。この辺りは羽鹿の生息地として有名だから。羽鹿は割とどこにでもいるけど。


それはそれとして、またガラントのギルドから依頼が来た。今度は港町オーサにフライングフィッシュが出たから駆除してくれ、だそうだ。フライングフィッシュもさして珍しいものではないが、魔法元素の影響を強く受けて魔物化したものは凶暴で、飛びながら帆船の帆を突き破ったり、漁獲用の網を噛みちぎったりするから、港町には死活問題なのだ。


そういえば、前世では魚料理も充実していたな。いや、オーサもなかなか美味の揃う街だが、なんというかこう、繊細さ? そう、繊細さが違うのだ。方向性というか。サシミ、というあれ、あの見た目に美しいものはなかなか見ない。まあ、あんなに美しく仕上げる前にこちらが捌かれてしまうこともあるから、やってられなかったんだろうなあ。見た目を気にする料理なんて宮廷料理くらいのものだ。

その記憶によれば、魚、ミルクで煮込んだら美味しいらしい。明日はそれ試してみるか。

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