表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/131

15 闇と英雄騎士1

 人と魔族の大戦──。

 ユリンのスキルによって、人間と魔族の大軍同士の激突を察知した俺たちは、すぐに遺跡を出た。


「ユリン、さっきの正確な場所は分かるか」

「はい。少しお待ちください……ええと、【遠隔鏡像】をもっと拡大したり詳細を出したり……どの術だったかな……えとえと……」


 まだ『魔人』としてスキルを使うことにあまり慣れてないらしく、ユリンはあたふたしていた。


「落ち着いて、ユリンちゃん。肩に力が入ってるよ」


 シアが横から彼女を抱きしめ、両肩をもむ。


「えへへ、クロム様にいいところを見せたいと思って。ちょっと気負ってしまいました~」

「慌てることはない」


 俺はユリンに言った。


「お前の力は以前より上がっているみたいだからな。その力に戸惑うのも無理はないだろ。ゆっくりでもいいから、確実に術を使って感知してくれ」

「はい、クロム様」


 俺を見つめるユリンの目はトロンとしていた。

 陶酔したような瞳だ。


「では──映像の詳細を出します。【遠隔鏡像・詳細表示】」


 ふうっ、と息をついて、ユリンがふたたび術を発動した。


 ヴ……ン。


 前方に丸い鏡のようなものが現れ、そこに映像が映し出される。


 地平線まで続く草原で戦いが行われていた。

 おそらくシャーディ王国東部にあるディオル大草原だろう。


 マントとフード姿の巨大な骸骨が魔族軍を率い、数千数万の騎士や兵士と戦っていた。

 骸骨魔族が無数の魔法を放ち、人間たちを蹴散らしていく。

 その配下の魔族たちもそれぞれ人間たちを次々に倒していく。


 強い──。

 かつての魔王軍十三幹部が率いる精鋭軍と同等か、それ以上かもしれない。




 突然、空に一人の騎士の姿が映し出された。




「あいつは……!」


 マルゴだ。

 半透明の姿をしたマルゴが悠然とたたずんでいる。

 まるで、魔族の軍勢の主のように。


「なんだ、一体──」

「分かりません。突然、映像にマルゴさんの姿が割りこんできて──」


 戸惑ったように首を振るユリン。


「もしかしたら、この戦いにマルゴさんが絡んでいる、ということを示しているのかもしれません。すみません、まだこのスキルに慣れていなくて……」

「行ってみるか」


 謝るユリンを制し、俺は言った。


「これほど大規模な戦いに奴がかかわっているなら、なんらかの目的があるだろう。あいつのことだから、英雄騎士としての栄誉とかそういうものを求めているんじゃないか?」


 口元に嘲りの笑みを浮かべる。


「だったら、それを徹底的に破壊してやる。奴に対する復讐としては悪くない」

「ですが、これだけ大規模な戦場では危険が──」


 警告するユリン。


「危険?」


 俺の全身から黒い鱗粉が吹き上がった。

【固定ダメージ】の映像効果(エフェクト)である。


「【固定ダメージ】があるかぎり、どんな魔族だろうと人間だろうと俺たちに危険を及ぼすことはできない。最短距離でマルゴの下へ向かうぞ」


 この魔族軍の大侵攻に、あいつは必ず一枚かんでいるだろう。


 清廉な英雄様の、本当の姿を見てやるとするか。




 数日の行程を経て、俺たちはシャーディ王国へとやって来た。

 本来ならもっとかかる距離なのだが、ユリンの魔人としてのスキルを併用しながらの旅路だったおかげで、想定よりもかなり早く着くことができた。


 俺たちはユリンの映像で見た大草原へと向かう。

 その道すがら、


「おい、どこに行くつもりだ、人間?」

「ここから先は我ら魔族軍のテリトリー! 人間ごときが通れると思うな!」


 大量の魔族が俺たちの前に立ちはだかった。


 鬼人にバジリスク、ブロンズゴーレム、ファイアマンティコア……様々な種族の混成軍である。

 その総数は100を下らないだろう。


 なるほど、すでにここまで戦線が拡大しているということか。


「通る、と言ったら?」


 俺は彼らの脅しを意に介さず、言った。

 背後にはシアとユリンが控えている。


 二人とも臨戦態勢だが──まあ、彼女たちの助けは不要だろう。

「舐めやがって! てめえは殺す!」

「後ろの二人は上玉だ! 生かして捕らえろ!」


 魔族たちが雄たけびを上げて襲い掛かってくる。


 次の瞬間、すさまじい悲鳴と絶叫が響き渡った。


 飛び散る血しぶき。

 肉と骨の砕ける音。

 まさしく阿鼻叫喚だ。


 俺の進路に沿って、魔族たちが無数の光の粒子となって消滅していく。


【闇】のEXスキル【固定ダメージ】を止められるものなど、いない。


「シア、ユリン、俺から離れるな」

「はい、クロム様」


 背後に声をかけると、二人が同時に答えた。

 立ちはだかる魔族を片っ端から消し飛ばしながら、俺たちはまっすぐに進む。


 マルゴのいる戦場を目指して。

【大事なお知らせ】

「愛弟子に裏切られて死んだおっさん勇者、史上最強の魔王として生き返る」の3巻発売が決定しました! 2月15日発売予定です。4巻以降の続刊につなげるためにも、ぜひよろしくお願いします(下のリンクから作品ページや書報ページに飛べます)。

コミカライズ企画も進行中です~!


    ※ ※ ※


もし『面白い』『続きが気になる』と思ってもらえましたら、最新話の下のフォームから、ポイント評価をお願いします。

ぽちぽちっと押すだけで簡単に評価できます。

どうぞ応援のほどお願いいたします!m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!

執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。







Mノベルス様から書籍版・全3巻発売中です! 画像クリックで公式ページに飛びます
5nsm9ikyhyex6cuw779ybmn5kyeb_gcs_160_1pw_9ggn



コミック最終6巻、発売中です!
hsvpgtig5jf9fm1l08o7y6i1prn_2k2_1d2_1xr_l0kf.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] 同時に何作も書けたり本を出したりするのは、すごいですけど全てが中途半端にならないように祈っています。 まいんのように。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ