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6 復讐者と魔王1

「ぐっ……ううぅ……」


 胸を貫かれたハロルドはその場に倒れたまま、立ち上がれないでいた。


「【魅了】が解けたというのは芝居か……俺を油断させるために……」


 いや、違う。


 ハロルドはすぐにその考えを訂正した。


 マルゴの目には、明らかに強い意志の光があった。

【魅了】をかけられ、己の意志を失った人間にはあり得ない光が。


 ということは、つまり──。


(マルゴは、自分の意志で魔王軍の残党に協力している……? 勇者パーティの一員でありながら──)


「なぜだ……お前は勇者パーティの一員だろう!」


 ハロルドは悲痛な声を上げた。


 信じられなかった。

 彼は、魔王を討った勇者パーティの一員──世界を救った戦士の一人である。

 まさしく、英雄の中の英雄。

 すべての騎士の規範ともいえる存在。


 それが、自らの意志で魔族に与するなど──。


「気に入らんのだ、その言い回し……」


 マルゴが憎々しげに告げた。


「勇者パーティの一員? 私は勇者のおまけだとでもいうのか? 断じて違う! 私は英雄騎士マルゴ! ユーノのような若造よりも、ずっと長く──英雄として称えられてきたのだ! それを……!」


 長剣を手に、マルゴが近づいてくる。


 ごうっ……!


 刃に薄緑色をした魔力の風がまとわりつく。


『七十七式疾風雷王剣(しっぷうらいおうけん)』。

 英雄騎士の代名詞ともいえる最強クラスの魔法武具だ。


「お待ちくださいな、マルゴさん」


 と、フランジュラスが彼を止めた。


「他のお仲間はともかく、勇者はまだ生かしておくべきでしょう」

「だが、彼は私が魔族とともにいるところを目撃している。【魅了】が解けた今、このまま解放するわけにはいかん」


 フランジュラスの言葉に反論するマルゴ。

 その会話の内容からして、やはりマルゴが魔族側にいるのは間違いなさそうだった。

 と、


「勇者パーティの一員でありながら、魔族に与するなんて!」

「許せない、マルゴ……!」


 ローザとイザベルがよろよろと立ち上がった。

 マルゴに斬りつけられたが、致命傷は避けたようだ。


 ──だが、決して浅い傷ではない。


「死にぞこないどもめ」


 マルゴが振り返った。


 冷たい目だ。

 とても諸国から敬意を払われている英雄騎士とは思えない、目。


 いや──。


(これこそが、この男の本性……?)


 ハロルドはゾッとなった。


    ※


 俺は魔王ヴィルガロドムスと対峙していた。


「……今のままじゃ勝てない、っていうのか」

『あくまでも可能性だ。勇者ユーノはもちろん、この男も【涅槃】に触れているようだ。どうやったのかは知らんが……』


 と、魔王。


『【光】の力を持つ者の成長を侮るな。現時点の戦闘能力では汝がはるかに上であろうが、彼らはあっという間に成長する。さらに』


 魔王の説明は続く。


『注意すべきは【光】に選ばれた勇者だけではない。その近しい者たち──仲間たち(パーティ)にも【光】の影響は浸透していく』

「勇者パーティにも……?」

『中には【涅槃(ねはん)】までたどり着く者もいるかもしれん』

「【涅槃】……」


【闇】を総べる存在である【奈落】の対極にあるもの──いわば【光】の元締めといったところか。


 マルゴの口から、その【涅槃】という言葉が出たことを思い出す。


 もしかしたら、あいつは自力でたどり着いたというんだろうか。

 あるいは、なんらかの助けを得て到達したのか。


 だとすれば、ユーノだけではなくマルゴとの来たるべき戦いにも十分な注意が必要だろう。

 あるいはファラにも──。


「俺がそれに対抗するにはどうすればいい?」

『一つは【光】と【闇】の両面を身に着けることだ。この国に点在する古代文明(レムセリア)の遺跡で試練を受ければ、それは叶うだろう』


 と、魔王。


 それはラクシャサからもすでに聞いている。


 以前にマイカと戦ったとき、奴が使った術式──【混沌】。

 それを俺も身に着ければ、ユーノがより強大な【光】を使ってきたとしても、十分に対抗できる──と。


『そして、もう一つは──この城の最深部にある』


「この城の……?」

『余とともに来てくれれば、案内しよう』

『魔王を信じてはいけません、宿主様』


 声が響く。

 俺のすぐそばに、黒衣の美女──ラクシャサが実体化した。


『いえ、【闇】の【端末605】──【刻印名(コード)ヴィルガロドムス】』

『【端末037】、【刻印名(コード)ラクシャサ】か。なかなか強力な端末を従えているようだな』


 髑髏の魔王が笑う。

 一方のラクシャサは険しい表情だ。


『600番台の端末は、私たちとはまるで役割が違います。決して心を許さないでくださいね、宿主様』

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