13 【闇】の制御
俺たちは魔王軍のアジト跡にとどまっていた。
ただでさえ、俺たちはライオットやイリーナたちの件でお尋ね者だし、まして今はユーノとの決戦を控えている時期だ。
外を出歩くことで、無意味にリスクを増やしたくはない。
その点、魔王軍のアジトならすでにユーノたちによって破壊されており、あらためて攻め入ってくる者もいない。
また、一般市民もまず立ち寄らない場所だ。
隠れ家としてはうってつけだった。
そしてもう一つ、俺がここに留まる理由がある。
それは──【闇】の力の制御訓練である。
「ぐっ……ううううっ……」
俺はその日も【闇】を使いこなし、飼いならすべく訓練に励んでいた。
体中からすさまじい『力』が湧き上がる感覚──。
だが、それはどうやら諸刃の剣らしい。
魔王を討った後、俺はラクシャサからそう教わった。
俺の【闇】は完全解放された──のはいいのだが、人間が扱うには出力が大きすぎるのだ。
ある程度自分でコントロールし、普段は抑えておかないと、俺自身の生命力を一気に使い果たしてしまうんだとか。
そういうわけで、俺はここ一か月ほど訓練を行っていた。
体内で暴れまわる強大なエネルギーを抑えこみ、必要最小限の分量だけを顕現させる。
非常事態にでもならない限り、残りの膨大なエネルギーは使用せずに溜めておく。
……と言葉にすると簡単だが、実際はなかなかの難物だ。
少しでも気を抜くと、俺の内部で【闇】が暴走しそうになる。
「はあ、はあ、はあ……」
一時間ほどそうしていると、意識が薄らいできた。
この訓練は精神力を極限まで消耗するのだ。
「一休みしましょう、クロム様」
シアが駆け寄ってきた。
「お疲れ様です、クロム様」
と、ユリンもやってくる。
二人の美少女が左右から俺に寄り添った。
「だいぶ感覚をつかんできた」
俺は彼女たちに支えられながら、わずかに笑みを浮かべた。
手ごたえはある。
完璧にコントロールできるようになったとは言い難いが、以前の俺よりもはるかに強くなっている。
はるかに、【闇】が深くなっている。
そうして、連日訓練に明け暮れているうち──ユーノが行う式典まで、あと一日となった。
つまりは、決戦前日だ。