6 勇者と真祖1
「……ノックくらいしたらどうだ、ファラさん」
「もう、怒らないでよ。あ、ヴァーユもいたの」
基本的にヴァーユを見ることができるのは聖剣の所持者であるユーノだけ。
ただし【光】や【闇】の力をある程度宿すものは、ユーノと同じくヴァーユの姿を見ることができる。
ファラは──いや、彼女だけでなくパーティメンバーであるイリーナやライオット、ヴァレリー、マルゴもだが──ユーノとともに儀式『闇の鎖』にかかわった面々は、ある程度の【光】を宿すらしい。
ヴァーユがそう説明していた。
だからファラは彼の姿を見ることができるのだ、と。
「謝れ」
「えっ? ちょっと、そんなささいなことで……」
「謝れ、と言った。君はこれから僕のものになるんだ。なら、服従してもらおう」
「ユーノ……?」
ファラは戸惑った様子だ。
この女をモノにしたい。
思う存分貪りたい。
自分だけの所有物にしたい。
身も心も支配したい。
強烈な願望が湧き上がる。
「跪け」
「は……はい……」
ファラは稲妻に打たれたようにビクンと震えると、彼の足下に跪いた。
「今日からお前は僕のモノだ。いいな」
「……はい、ユーノ……様」
ファラが素直にうなずく。
普段の勝気な態度が嘘のような、従順なふるまいだった。
「くくく、お前だけじゃない。ファルニア姫もすぐに僕のモノにしてやるぞ」
ユーノが笑う。
欲望のままに、僕はもっと強くなる。
世界中の美女も、富も、名声も──。
すべてを手に入れてやる。
魔族フランジュラスが率いる一軍との戦闘は、最終局面を迎えていた。
優勢なのは、ユーノが率いる軍勢である。
「右翼の魔族はファラと騎士団で押しこんでいる。こっちは問題ないだろう」
本陣から戦況を見て、つぶやくユーノ。
「左翼の魔族は、一体一体の戦闘力は低いけど、とにかく数が多い。お前の『星』属性の聖剣で薙ぎ払え、ファルニア」
「はい、ユーノ様」
傲然と命令するユーノに対し、かたわらの女──勇者ファルニアはうやうやしく一礼した。
当然のごとく、彼はすでにファルニアを己の女としている。
ファラ同様に押しの一手で迫ると、あっけないほど簡単に彼女はユーノのモノとなった。
(今まで女性に遠慮しすぎていたんだな、僕は)
ユーノは内心で笑う。
今や自分は世界最強の──いや、おそらくは史上最強の勇者なのだ。
かつて魔王を倒して世界を救い、今また魔族軍の侵攻からふたたび世界を守ろうとしている。
そんな最高の男になびかない女などいるはずがない。
(僕が望めばどんな女だって思いのままだ)






