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4 覚醒する勇者1

『術者の欲求値及び意志値が規定に到達しました』

『儀式の進捗率が99%に到達しました』

『術者の【光】の出力が999%上昇しました』

『【位相】への転移能力を獲得しました』

『解析中』

『【白の位相(セフィロト)】への転移が可能です』

『転移しますか? Y/N』




 どこかから、声が響いた。


「セフィ……ロト?」


 呆然とつぶやく。


 次の瞬間、記憶が奔流のようによみがえる。


 そうだ、以前にもこんなことがあった。

 やはりラギオスの攻撃で消滅の危機を迎えたときのことだ。


 生きたい、という強烈な欲求がユーノの【光】を強くした。

 そして【黒の位相】という異空間に紛れこんだ。


 そこでクロムに再会し、戦いになった。

 右腕を失い、命からがら逃げてきたわけだが──。


 今度は【黒の位相】ではなく【白の位相】に移動できるようだ。

 名前からして、こちらが【光】の世界なのだろう。


 そして、その世界に行けば自分はもっと強くなれる。


 本能がそう告げていた。


「僕をそこへ連れて行ってくれ、聖剣よ」




『了解。【白の位相】への転移を行います』

『実行中……終了』




 気がつけば、ユーノは純白に輝く世界に立っていた。


「な、なんだ、ここは……!?」

『ついにたどり着いたようだな、マスター』


 いつの間にかユーノのかたわらにずんぐりと太った男が立っていた。


「ヴァーユ……?」


 聖剣アークヴァイスに宿り、【光】の端末を名乗る存在だ。


『【光】の強さはその者の欲望に起因する。欲とは、すなわちその者の望み。意思の根源。それが強まれば強まるほど、その者の【光】は輝きを増す──』


 謳うように告げるヴァーユ。


『マスターは己の欲望を今まで以上に自覚している。己の欲するもの。求めるもの。得たいもの。それをもっと強く思い浮かべよ。さすれば、マスターの【光】はどこまでも輝く──』

「僕の、欲望……」


 いきなり言われても、欲望をむき出しにするというのは簡単ではない。


「そう簡単には振り切れないよ。外聞もあるし……」

『外聞? 何を遠慮する必要がある』


 ヴァーユがささやく。


『己の欲望を恥じるな。認めて、受け入れろ。そうすれば、マスターはもっと大きな──誰よりも強大な【光】を得るであろう』


 その言葉はユーノの心に甘く染み入っていく。


「恥じるな……か」


 かつての彼は、清廉な勇者であろうとしていた。

 親友のクロムからイリーナを寝取ったことに罪悪感を抱いていた。


 少なくとも、心の片隅では。


 だが、そのイリーナも行方知れずとなり、魔獣と化したことを聞かされたとき、ユーノの心には変化が起き始めていた。

 彼女を助けたいという気持ちよりも、切り捨てようという非情さが勝っていた。


 イリーナが自分の前からいなくなったことは仕方がない。

 ならば、切り替えて『次』を探そう──。


 そう考えたとき、自分の本心がはっきりと見えた。


 女なんていくらでも手に入れればいい。

 欲望のままに貪ればいい。

 清くあろうとする必要はない。


「僕は、世界を救った勇者。望めば、どんな女だって手に入る」


 ユーノは歪んだ笑みを浮かべた。


「いや、女の方から寄ってくる。くくく、全部僕のモノにしてやるぞ。手始めに──」

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。







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― 新着の感想 ―
[気になる点] 勇者との対決は予定調和で、 強くなる事は、状態をみれば予想できる事ですね。 それを視点変えてまで描写する意味は、 今後、出てくるという事でしょうか? 勇者が行う胸糞も、描写しそうな…
[一言] 光なのに心が闇か。
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