5月1週目
ボブ子
「いってきまーす」
セミ子
「いってきまーす」
セミ子と別れて、自転車にまたがる。
今日から五月だ。五月もがんばるぞ。
[・・・ロードします・・・]
お昼休みだ。どうしようかな
選択1⇒教室
選択2⇒屋上
選択3⇒職員室
●屋上
廊下に出ると、サルシスくんがずんずんと屋上に歩いていくのが見えた。屋上には鍵がかかっているって言いに行こうかな。
本田サルシス
「やあ、キミは五津木くん! やはりボクの美しさは人を惹き付けてしまうのだね!」
ボブ子
「サルシス君、屋上に行くの? 屋上は鍵がかかっていて入れないよ」
本田サルシス
「ふふっ、ボクには屋上の風が似合うと思うだろう?」
サルシス君の手には鍵が握られていた。どうして持っているのかと思ったら、職員室から借りたみたい。
本田サルシス
「それに屋上にはね、ボクとお母さんとの忘れられない思い出があるのさ」
サルシス君はそう呟いて軽やかな足取りで屋上への階段を登って行った。サルシス君が屋上に行くなら、今日はやめておこうかな。教室に戻ろう。
[・・・ロードします・・・]
帰りのホームルームの時間になった。
伊藤忠良
「今日も一日お疲れさまでした。明日また会いましょう、さようなら」
さて、放課後になったことだし……
選択1⇒部活
選択2⇒校内散策
●校内
図書館でも行こう。どんな本を読もうかな……。
校舎とは別にある、まるまる三階建ての建物が学校の図書館だ。県内でも有数の蔵書数を誇っているらしい。
本棚から本棚へ渡り歩いておもしろそうな本を探しているとふと見知った姿を見かけた。
あそこの本棚の前に立ってるのって練絹君? 何の本を読んでるんだろう? こっそりと遠目で見た表紙は、『アンデルセン童話集』だった。童話とかが好きなのかな。
そんなことを確認していると、顔を上げた練絹君とばっちり視線が合ってしまった。
練絹八十
「……こんにちは、五津木さん」
ボブ子
「こんにちは。ごめんね、読むの邪魔しちゃった」
練絹八十
「いいえ。ちょうど区切りがついたところだったので」
ボブ子
「そっか。どんなお話読んでたの?」
練絹八十
「声を、失くすお話です。人魚の」
ボブ子
「人魚姫?」
練絹八十
「はい……。私は、彼女の気持ちが知りたいです。会って、話を聞いてみたい」
練絹くんの目が、どこか遠くを見るように投げかけられた。
男の子が人魚姫を好きなんて珍しいなぁ。
[・・・ロードします・・・]
家に帰って人心地ついたら、小腹が空いちゃったな。お菓子でも持ってセミ子のところにでも行こうかな。
セミ子
「あ、お姉ちゃん。おかえりなさい」
ボブ子
「ただいま。おやつにしよう」
セミ子
「そうしよう! ……そういえば、お姉ちゃん」
ボブ子
「なに?」
セミ子
「次の休みは一緒に出掛けよう! いいところ見つけたんだ」
ボブ子
「えぇぇ……。あんまり遠出はしたくないなぁ」
セミ子
「すぐ近くだからぁ!」
ボブ子
「わかったわかった。遊びに行こうね」
わがままを言うモードに入った妹を宥めるために、コップにジュースを注いであげた。
そういえば高校入学から一ヶ月、あんまり構ってあげてなかったかもなぁ。
今日は疲れたな。
もう寝よう。