4月4週目
4月3週目は、特別イベントがないので飛ばします。
ボブ子
「いってきまーす」
セミ子
「いってきまーす」
家を出ると、セミがくるりと私を振り返った。
セミ子
「気になっていた人と今日はお話しできるかも。お姉ちゃん、選択は慎重にね」
手を振って学校へ向かうセミ子を見送った。妹はたまに不思議なことを言う。
さて、今日も一日がんばるぞ。
自転車をこいでいくと、曲がり角で違う自転車とぶつかりそうになった。
ボブ子
「ご、ごめんなさい」
桂木啓太
「ううん。僕も不注意だったよ。ごめんね」
ボブ子
「あれ? 桂木、先輩?」
なんとぶつかりそうになった相手は桂木啓太先輩だった。
先輩は私の方をじっと見て、心底不思議だという風に小首を傾げる。
桂木啓太
「どうして桂木先輩なんて他人行儀なの? 啓太でいいのに。……そう距離をとられると、悲しいよ」
ボブ子
「えっと、ごめんなさい。啓太先輩」
桂木啓太
「せっかくだから一緒に学校まで行こうか」
ボブ子
「は、はい」
啓太先輩と一緒に学校まで登校した。
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下前学
「まったく! 君ってやつは大馬鹿ものだね!」
自分の教室に向かう途中、思わず足を止めてしまうほどの大声が廊下に響いてきた。どうやら、隣のクラスからみたい。いったいどうしたんだろう……。
気になってそっと隣の教室をのぞいてみると、下前君が顔を真っ赤にして、本田君に怒っていた。
ってあれ、どうして本田君、学ランなんか着ているんだろう。彼も演劇部し、その衣装でも着たのかもしれない。私もセーラー服を着るのかな?
本田サルシス
「やっとわかったのさ! ボクに似合うのはブレザーじゃない、学ランだってね! どうだい、昨日までとはボクの輝きがまったく違うだろう! 遠慮なく、褒めてくれて構わないよ!」
下前学
「見てわからないのか、僕は怒っているんだぞ! 似合う似合わないではなく、ちゃんと学校指定のブレザーを着たまえ!」
本田サルシス
「じゃあ、このボクに学ランは似合わないとでも言うつもりかい?」
下前学
「え、それは……似合ってはいると思うが。いや、でもそういう話ではないんだ! 話を反らさないでくれたまえ!」
本田サルシス
「ははは! 学くんは真面目だなあ!」
下前学
「君はもっと真面目にしたまえよ!」
どうやら、本田君が学ランを着ていることに下前君は怒っているみたい。
でも本田君は涼しい顔で、新品下ろしたての学ランを見せびらかすようにポーズをとっている。
あ、あれ。本田君と、目が合った……。
本田サルシス
「やぁ、キミ! ボクの美しい姿をわざわざ見に来たのかい! 輝きを増したボクの姿を存分に堪能するがいいよ!」
下前学
「そんなわけないだろう! 君が変な格好をしているから、つい見てしまっただけだ」
本田サルシス「ああ! 人を惹きつけてやまない美しいボク! たまに自分が怖くなる!」
下前学
「いい加減にしたまえ! まったく、君からも本田に言ってくれたまえ。ちゃんとブレザーを着ろと」
本田サルシス
「似合っているからいいじゃないか、ねぇ?」
えっと、私は……。
選択1⇒「似合う格好をすればいいよ」
選択2⇒「ちゃんと制服は着ないと」
●ルート1「似合う格好をすればいいよ」
本田サルシス
「ほら、学くん! ボクの美しさの前には、規則なんてあってないようなものさ!」
下前学
「そんなわけないだろう! なんだ君は、こいつの信奉者か? まぁ本田は華やかだからな。ファンになるのもわからないでもないが、甘やかすのはやめたまえ。さらに手がつけられなくなる」
本田サルシス
「まったく、学くんは素直じゃないね! さて、ボクのファンらしいキミには、サインをあげよう! さぁ、名前を教えてくれないかい!」
ボブ子
「えっと、五津木ボブ子です。本田君は知らないかもしれないけど、私もおんなじ演劇部なの」
本田サルシス
「そういえば見たことがあったよ! なら、本田君なんて呼び方はナンセンスだ! サルシスで構わないよ! 学くんも学くんと呼んであげてくれたまえ!」
下前学
「……いや、僕は下前でいい」
本田サルシス
「そうかい? さて、キミはどっちの手がいいのかな」
サルシス君は私の手をとり、手の甲にサインペンでさらさらっとサインを書いてくれた。
好意でやってくれたのは分かるんだけど、手の甲じゃなくて、せめて紙に書いてほしかったな……。
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お昼休みだ。どうしようかな
選択1⇒教室
選択2⇒屋上
選択3⇒職員室
●教室
教室でのんびりしようかなぁ。
クラスの女の子とおしゃべりをした。
友人A
「隣のクラスのシタマエ君って知ってる?」
友人B
「シタマエ君?」
友人A
「合同体育で一緒だった眼鏡の、語尾が「~したまえ」の子」
友人B
「ああ! なるほど、「したまえ、したまえ」言ってるからシタマエ君なんだね」
友人A
「ちがうちがう! 本名も下前だから! あだ名もシタマエみたいだけどね」
下前君かぁ。朝のあれから、彼はどうしているんだろう。
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帰りのホームルームの時間になった。
伊藤忠良
「今日も一日お疲れさまでした。明日また会いましょう、さようなら」
さて、放課後になったことだし……。
選択1⇒「部活」
選択2⇒「校内散策」
●校内散策
購買にでも行ってみようかな。
うちの購買には、なぜか缶詰が売っている。しかも、焼き鳥、コンビーフ、シーチキン、鯖の水煮などなど多種多様だ。
中庭のデブ猫も、ここの缶詰を貰っているのかな?
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家に帰って人心地ついたら、小腹が空いちゃったな。
お菓子でも持ってセミ子のところにでも行こうかな。
セミ子
「あ、お姉ちゃん。おかえり」
ボブ子
「ただいま。おやつにしよう」
セミ子
「うん。ところでお姉ちゃん、今日の学校はどうだった?」
選択1⇒「眼鏡の子と話した」
選択2⇒「金髪の人と話した」
●ルート2「金髪の人と話した」
ボブ子
「サルシス君っていうんだけどね、一度会ったら忘れられないぐらい強烈な人だったなぁ」
セミ子
「ほっほう?」
ボブ子
「なによその反応」
セミ子
「え、寝ても覚めても忘れられないぐらい、その人の姿が焼き付いてるんでしょ?」
ボブ子
「そんなことは言ってないでしょ! 楽しそうな人なのよ」
いまだににやにや笑うセミ子の額を軽く叩いておいた。
さて今日は疲れたな。
もう寝よう。
他選択だったら……
●下前君に味方して、「ちゃんと制服は着ないと」
下前学
「ほらみろ、本田! 学ランは似合うが、それを着るのは放課後だけにしたまえ!」
本田サルシス
「でも、学くんもボクに学ランが似合うと認めているじゃないか! 似合うものを着ないなんて、それは罪にも等しいよ!」
下前学
「その罪はボクが許してやるから、制服を着たまえ! まったく、話は平行線だな。君も巻き込んで申しわけなかったな、えっと……」
ボブ子
「わたしは五津木ボブ子です。隣のクラスなの」
下前学
「そうか。自己紹介が遅れたな、僕は下前学」
本田サルシス
「ボクは本田サルシス! サルシスと気軽に呼んでくれても構わないよ!」
下前学
「……もう、こいつは放っておいた方がいい。もうすぐ予鈴も鳴るから教室に戻りたまえ。こいつは僕が責任を持って説教しておく」
本田サルシス
「ボクはどんなに言われても、学ランさ! それが僕の信念なのだからね!」
サルシス君の言葉に、また下前君が口はへの字に曲げて向き直る。あのやり取り、いつまでも続きそうだなぁ……。
私は下前君のこれからを祈りながら、自分の教室へ向かった。
【どうあがいても下前君は苦労します】
●セミ子との会話で「眼鏡の子と話した」と言うと、
ボブ子
「下前君って子なんだけどね、真面目すぎて苦労しそうだったなぁ」
セミ子
「へぇ、他には? なんか特徴ないの?」
ボブ子
「他? ……運動神経が悪い」
セミ子
「そういうダメなところが放っておけない? 好き?」
ボブ子
「そういうのじゃないけど、でも心配になる感じかも。いつも緊張した感じで」
セミ子
「ふぅ~ん」
ボブ子
「ちょっと、なにその笑い方」
にやにや笑うセミ子の額を、ぺちんとはたいておいた。
【下前君は、体育の成績を座学でまかないます】