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王子様のロマン(シナリオ版)  作者: 運転手
1年 夏休み
18/28

お祭り(8月1週目)

番外編に他個別ルートを投稿しました。

セミ子

「おはよう、お姉ちゃん! 今日はお祭りがある日だよ! 私は学校の友達と行くんだ!」


 楽し気にぴょんぴょんと飛び跳ねるセミ子。今日は夏祭りのある日だ。

 結局、誰とも約束できなかった。けど、昨日の晩から楽しみにしてはしゃいでいたセミ子の姿を見ているとちょっとうらやましい気もする。

 今からでも勇気を出して誘ってみようかな? ……誘うには遅すぎるかな?



 以下の⇒「選択」から選ぶ

 ⇒「練絹八十」

 ⇒「桂木啓太」

 ⇒「本田サルシス」

 ⇒「下前学」

 ⇒「やっぱりいいや」



●下前学

 下前君を誘ってみようかな。でも下前君って、いかにも塾の夏期講習とか行ってそうな気がする。忙しいから無理かな? ダメ元でメッセージを送ってみたけど、なかなか返事がこない。

おやつ時を過ぎてもうすぐ日が暮れる頃にやっときた返事は、『返事が遅れて申し訳ない』から始まっていた。忙しくって行けないみたい。

やっぱり忙しいか。当日に誘っちゃったのは私だし、謝らせてしまって私の方が申し訳ないな。もうお祭りは諦めるか。





 [・・・ロードします・・・]





 日が暮れはじめて、そろそろお祭りが始まる頃。

セミ子が桃色のかわいい浴衣姿で現れた。ついこの間、お母さんにおねだりして買ってもらっていた新しい浴衣だ。


セミ子

「ねぇねぇ、見てお姉ちゃん! 新しい浴衣!」

ボブ子

「似合ってる。それ着て、友達とお祭りに行くんでしょ?」

セミ子

「うん、楽しみだなぁ」


 うきうきした様子のセミ子を微笑ましく思いながら見ていると、お母さんに呼ばれた。お財布を片手に手招きをするその姿に、嫌な予感がする……。


「ボブ子、あんた暇なんでしょ? セミ子のこと、お祭り会場まで連れて行ってあげてちょうだい。お小遣いあげるから」

ボブ子

「え、私? お母さんは?」

「お母さんだってたまには休みたいんです。よろしくね」

セミ子

「お姉ちゃん、早く行こう!」


 セミ子にぐいぐいと腕を引っ張られて、私はお祭り会場に行くことになった。まぁ、いいか。おこづかいも貰えたし。





 [・・・ロードします・・・]





 赤い提灯が灯る神社からは、なんとなく妖しい魅力を感じる。ソースの匂いと人のざわめき。やっぱりお祭りは来るだけでわくわくしてしまう。


セミ子

「あ、友達がいた! それじゃあ行ってくるね! 帰りにまた連絡するね!」

 子ども用携帯をしっかりと握ったセミ子が、友達を見つけてあっという間に駆けて行ってしまった。すごく楽しそう、いいなぁ……。なんて、妹に嫉妬するなんてちょっと姉として情けない。

私だって楽しまないと! セミ子が帰る時間まで、私もお祭りを満喫しよう! まずは、何か食べようかな。こんな時しか食べれない、綿あめとか? 

 綿あめ屋を探そうとした時、視界に何かがひらりと舞った。私の足元に落ちたそれは、淡い色のハンカチだった。誰かが落としたのかな?



 選択1「拾う」

 選択2「無視する」



●選択1「拾う」

 とりあえず拾っておこう。でも落とし物ってどこに届ければいいんだろう? お祭りの実行本部かな?

 一応ハンカチに持ち主のことがわかるような特徴がないかと確認していると、「あ」という声が前から聞こえた。あ、落とし物をした人かな?

 顔を上げると、そこには綺麗な浴衣を着た女の子。あれ。この子、最近見かけた気がする。

 女の子は顔を強張らせてこちらを見ている。そしてギュッと唇をかんだかと思うと、くるりと背を向けてしまった。


ボブ子

「あ、待って」


 思わず引き留めようと腕を伸ばしたところで、逃げ出した女の子がぴたりと立ち止まった。私の声が届いたのかと思ったけど、違った。彼女の前にはすらりと背の高いモデルのような男性が立っていた。ちらちらと横を通り過ぎている女性たちが視線を送るような、そんな人だった。

彼は視線を合わせるように腰を曲げ、少し叱りつけるような声で女の子に話しかけた。


男性

「だめだろう、マナミ。危ないよ。変な人に声をかけられたら困るし、心配だ。ちゃんと俺の腕を掴んでおきなさい」

少女?

「ご、ごめんなさい」


 素直に謝った女の子に男性は満足そうに頷く。そして女の子のすぐ後ろに立つ私を視界に入れて、不思議そうな顔をした。


男性

「マナミ、知り合いかい?」

少女?

「え、えっと……」


 うつむいた女の子が、男性の背中に隠れる。いかにも怯えたようなその様子に彼は困ったように眉を下げてから、私に笑いかけた。


男性

「すみません。何かうちの子に用事かな?」

ボブ子

「えっと、たぶんこれ、その子のものだと思うんですけど」


 私が拾ったハンカチを差し出すと、ああと男性は声を出して頷いた。そしてちょっと強引な仕草で私からハンカチを受け取ったかと思うと、首を傾けて後ろの女の子に声をかける。


男性

「これは俺がこの子に贈ったものだね。……なんだ、これを落としたからあわててどこかへ行ってしまったのか。こんなもの、いくらでも買ってやるのに」

少女?

「…………」


 男性の問いかけにも女の子は黙ったままだった。しばらく沈黙が続いた後、緊張したようなぎこちない動きで男性の背中から頭を出した女の子は私に頭を下げた。そしてまたすぐ、私から逃れるように隠れてしまう。

そんな女の子の様子に苦笑して、男性はその子の代理をするように私に軽く頭を下げた。


男性

「わざわざ拾ってくれてありがとう。……それじゃあ、行こうか」

少女?

「はい……」


 女の子は差し出された男性の腕を掴んで、私から顔を隠すように背を向ける。

 私は去っていく二人の背中をじっと見送った。

 恋人、という雰囲気じゃ無かったし。兄妹、なのかな?





 [・・・ロードします・・・]





 もっしゃもっしゃと両手に抱えた屋台飯を食べていると携帯が震えた。それはセミ子からのメッセージで、もう帰るらしい。まだ時間も早いし、もう少し遊んでいてもいいのに。(ムカついていた場合)私はまだまだやけ食いしたい気持ちなんだけど……。

とりあえず食べかけのものはすっかり全部食べてしまって、待ち合わせ場所に行く。あんまりあの子を一人にはできないと小走りで待ち合わせにたどり着くと、両手に景品の人形やリンゴ飴を抱えたセミ子が待っていた。無事にお祭りを満喫できたらしい。


ボブ子

「今日は楽しかった?」

セミ子

「うん! お姉ちゃんはどうだった? ……せめて、誰か知りあいにでも会えた?」

ボブ子

「会えたと言えば、会えたかな?」

セミ子

「そっか。出会いは大切にね!」


 セミ子と手をつないで私達は家までの道をゆっくりと帰った。

途中で、はしゃぎ疲れたセミ子が眠たそうに頭を揺らしていたから、引っ張る腕がだんだんと重くなっていたのには困ったけど。明日には片腕だけ筋肉痛になりそう。



他選択だったら……


●落ちていたハンカチを「無視する」ことにしていたら、

 まぁ、いいか。こんな人ごみの中、しゃがみこんでハンカチを拾うのも大変だし。それよりも早く綿あめをたべたい。

意外とすぐ近くにあった綿あめ屋は、幸運なことに誰も並んでいなかった。さっそく屋台のおじさんに、一本くださいと注文をする。

機械のなかでぐるぐると綿あめができていくのを待っていると、人ごみの中に目立つ人がいるのを発見した。

目立つといっても悪い意味では無い。綺麗に浴衣を着こなしたその男性は、まるでファッション雑誌から飛び出してきたようにすらりと手足が長くて、人ごみから一つ頭が上にあるほど背が高い。もしかしたら本当にモデルの人かもしれない。どこかで見たような顔だ……。


屋台

「お嬢さん、できたよ。100円だ」

ボブ子

「あ、はい」


 綿あめを受け取ってから、もう一度さっきの男の人を見る。やっぱり見た記憶があるような。でも誰だろう。思い出せないな。あ、でも、本当にモデルとかだったら、もっと周りの人も騒ぐよね?

 そんな風に考え事をしていたからか、どんっと誰かにぶつかってしまった。しかも綿あめまでその人の浴衣にべったりくっつけてしまった。


ボブ子

「あ、ごめんなさい」

少女?

「いえ。こちらも不注意で」


 ぶつかったのは、かわいい浴衣を着た女の子。下を向いてうつむき加減だった顔を上げて私を見ると、その子は驚いたように目を見開いて硬直した。あれ、この反応、前にもされたことがある……。


男性

「マナミ」


 誰かの呼びかけに、目の前の女の子がびくりと肩を揺らす。そして彼女の視線が私を通り過ぎて後ろへとおそるおそるという風に向けられる。気になって振り返ると、そこにいたのは人ごみの中で目立っていたあの男性だった。

その人は女の子に近づいて、ホッとしたように息をつく。


男性

「急にどこかに行くから心配したじゃないか。危ないから、ちゃんと俺の腕を掴んでいるのが約束だったろう」

少女?

「ごめん、なさい。ハンカチを、落として……」

男の人

「ああ、俺があげたものか。また買ってあげるよ。こんな人だかりで探すのは危ないから、やめておきなさい」

少女?

「はい……」


 どうやら女の子は落としたハンカチを探していて、男の人とはぐれたみたい。

あれ? そういえばハンカチって、さっき地面に落ちていたのを見かけたよね。もしかしてあれかな?


ボブ子

「あの、ハンカチならさっきあそこの方に落ちていたのを見かけましたけど」

少女?

「え……」


 私の言葉に反応したのか女の子はこちらに顔を向けかけて、でもすぐに怯えたように男性の背中に隠れてしまった。

え、なに、この反応。私、この子になにかした? そんなに強くぶつかったっけ?

 そんな彼女の反応を見て男性は何を思ったのか。長い腕を伸ばして、女の子の肩を何度か宥めるように優しく撫でた。そして私を見下ろすと、男性は素っ気ない態度で声をかけてきた。


男性

「君、ハンカチは向こうの方で見かけたんだね」

ボブ子

「そう、ですけど」

男性

「なるほど、ありがとう。……さ、行こうか」

少女?

「…………」

ボブ子

「あ」


 私から隠れたままの女の子の手を引いて、男性はさっさと行ってしまった。

なにあれ。全体にあの男の人、私があの女の子に何かしたって勘違いしたよね? あの女の子も何か言ってくれればいいのに! ちょっとカッコいい人を連れているからって調子乗ってるんじゃないの? なによ、私より胸無いくせにっ!

 ムカつきが収まらない私は、屋台やけ食いの旅に出ることにした。

[ああいう女に、男はすぐ騙されるわよね]


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