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王子様のロマン(シナリオ版)  作者: 運転手
1年 夏休み
17/28

7月4週目

セミ子

「おはよう、お姉ちゃん! 今日もお休みだよ!」

ボブ子

「おはよう、セミ子」


 今日も夏休み中。どうしようかな。



 選択1⇒「学校に行く」

 選択2⇒「外出する」



●選択2「外出する」

 セミ子が折角教えてくれたんだし、映画を見に行こうかな。駅前の小さな映画館にいくと、随分と人で賑わっていた。そりゃそうか、夏休みだもんね。

 チケットを発券して、お供のポップコーンを買う。これで準備万端と指定のシアターに向かっていると、特徴的な目立つ後ろ姿を発見した。

 あの輝く長い金髪。すらりと伸びた手足。特にストライプシャツの袖口から見える腕はいつも腕立て腹筋をしているからか意外としっかり筋肉がついている。


ボブ子

「サルシス君、だよね?」


 思わず呟いただけ。届く声を出したわけじゃないのに、それに反応したようにその後ろ姿は振り返った。

 ……ああ。やっぱり、サルシス君だ。


本田サルシス

「やぁ! 奇遇だね! もしかて今話題のあの映画を観に来たのかい?」

ボブ子

「うん。面白そうだったから」

本田サルシス

「うん! ボクもすごく期待してるんだ!」

 

 その青い瞳はぱちぱちと弾けるように耀いていて、こちらにまで光が溢れ出してくるようだった。本当に楽しみなんだな。


本田サルシス

「そうだ。同じ演劇部として、観賞後に感想を言い合わないかい? 終わったら、あそこの映画館入り口で待ち合わせして!」

ボブ子

「えっと、うん。いいよ」

サルシス

「良かった! これでさらに楽しみが増えたね!」


 サルシス君はダンスステップを踏むようにシアターの指定席へと向かっていった。

 つい勢いに呑まれて頷いたけど、でも、私も楽しみになってきたな。


 上映映画の内容はこうだ。

 ――善悪もわからなかった人形が、人と交流することで少しずつ人間らしくなっていく。そして一人の少女に恋をするんだけど、でもどうしても人形に結びついた糸が切れなくて苦しむお話。

 ありがちなお話ではあるけれど、それを感じさせない映画だった。なんといってもこの映画が話題になった理由。二人?一役なのだ。二人と言っても、一人は有名な俳優だけどもう一人は俳優じゃない。実寸大の本物そっくりな人形を実際に使った二人なのだ。俳優もさることながら人形を動かしている人の技術も凄かった。

 上演後はなんとも言い難い感覚に襲われて、小走りでシアターを出て待ち合わせ場所を目指した。

 いますぐ語りたい!

 そんな気持ちがシンクロしていたのか、待ち合わせ場所にたどり着く前に、いつのまにかサルシス君が私の隣に並んでいた。

 顔を見合わせて頷き合う。そのまま二人で走り出すように向かったのは、じっくり語り合えそうなカフェだった。

 勢いよくお店に飛び込んできた私達に店員さんは驚いていたようだけど、目に入らなかった。案内される前に空いていた席に腰を下ろし、全身に満たされた映画への思いを日が暮れるまで吐き出した。





 [・・・ロードします・・・]





 夏だから当たり前だけど、今日も庭の植物は弱ってしまっている。ホースで水を撒いていると、同じく如雨露でプランターに水をやっているセミ子が声をかけてきた。


セミ子

「そういえば、もう来週がお祭りだよお姉ちゃん。もう一緒に行く人は決まってるの?」

ボブ子

「それが仲良い友だちが皆、帰省してて」

セミ子

「じゃあ、今すぐ誘いなよ! 夏はなんども来るけど、今は一回しかないんだからね!」

ボブ子

「あ、はい」


 思わず頷いてしまった……。

 確かに折角のお祭りなんだから、行って誰かと楽しみたいよね。

他選択だったら……


●「学校に行」って、「図書館に行く」なら、

 夏期課題に必要な資料を借りに行こう。

 図書館に行くと、一歩踏み入れただけでため息が出そうな冷気が流れてきた。冷房が利いていてとても涼しかった。

 どこに目当ての本があるかと本棚を見て回っていると、図書館の机に大きな白い紙を広げて何かを作業している小さな頭が見えた。よく見ると、それは下前君だった。

 何冊かの雑誌を開いて、ふむふむと頷きながら何かを真剣に書いている。何をしているんだろう?

さらに近づいているけれど、よっぽど集中しているのか下前君は気づかない。開いている雑誌の中身はーー


下前学

「う、うわっ! いつからいたんだ!」


 下前君がこちらを振り向いて、眼鏡越し丸い瞳が大きく見開いた。かと思うと開いた雑誌をバタバタと閉じて、私に見えないように覆い被さって隠してしまう。


下前学

「な、なんで君がここにいるんだ!」


 涼しい図書館で顔を真っ赤にした下前君が思わずといったように叫んで、それからハッとしたように自分の手で口を押える。その姿はとてもバツが悪そうで、視線があちらこちらを彷徨っている。


ボブ子

「夏期課題の資料を借りに来たんだよ。下前君は……何をしていたの?」

下前学

「僕は、その……調べものだ」

ボブ子

「なんの?」

下前学

「な、なんでもいいから! 君は資料を探しに来たんだろう! 僕のことはいいから、行きたまえ! そういえばあっちの棚に夏期課題に良さそう本があったぞ!」


 よっぽど私の注意を反らしたかったのか、わざわざ席を立っていくつかおすすめの資料を教えてくれた。おかげで探す手間が省けてラッキーだったな。

 ……それにしても、なにをあんなに熱心に見ていたんだろう。気になる。

【隠したいのは、男の子の性なのか】

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