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国守の巫女の座を奪われて、家守になりました。  作者: もり
第一章

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 お父さんがメタボ腹をどうにかする、今度こそダイエットをすると宣言して、お母さんがご飯を減らして、私たちの食事を見て、やっぱり食事制限ではなく運動で痩せると言って、私たちが呆れるの繰り返し。

 お父さんのダイエット宣言も何回目だよ、もう。


 呆れてため息を吐くと、「おい!」って怒った声がする。

 あれ? お父さんって、こんな声だっけ?

 そう考えて、自分が夢を見ているのだと気付いた。

 夢? この日常が? どうせ夢ならもっと楽しいことがいいのに。


「おい、リラ! 出てこい!」

「――っ!」


 ドスのきいた声に、驚いた私は跳び上がった。

 そしてまたまた棚に頭をぶつける。

 痛い。

 その痛みが私を現実へと急速に覚醒させる。

 今の声はドS王子だ。

 自分の手を見れば、思った通りヤモリの足。


 お父さん、お母さん、とても楽しい日常をありがとうございました。

 毎日、生意気ばかり言ってごめんなさい。

 りらは元気にヤモリになってます。

 だからどうか、私がいなくても悲しまないでください。


「おい、呼んだらさっさと出てこい!」

「はい!」

「大声を出すなと言ってるだろ?」

「すみま――っ!」


 勢いのままに返事をして、勢いのままに謝罪しかけて、デコピンならぬアゴピンされて、さらに棚に頭をぶつけた。

 い、痛い……。


「隣の部屋にはアレクがいるんだ。女の声がしたらまた文句を言われるだろ」

「……独り言はいいんですか?」


 できるだけ声を潜めて問いかければ、ラルス様は鼻で笑った。


「僕が一人で何か言っていても、アレクはいつものことだと気にしない」


 それはすごく残念なことなのに、なぜこれほどに威張って言えるんだろう。

 そう思っていたら、私の考えを読んだように、ラルス様は付け足した。


「呪文の練習など、よくしているからな。頭に入れたい書物の内容は音読してもいる」


 なるほど。さすが根暗王子。

 納得している私から、ラルス様の視線はガラスケースに移り、満足そうに頷いた。


「さすがアレクだな。仕事が早い。それに比べてリラは……」

「はい?」

「せっかくアレクが用意した食事を残すな。ちゃんと最後まで食べろ。足の一本くらいどうとでもなるだろ?」


 どうとでもならないし、食べ残しでもありません。

 反論しようとして、ラルス様は興味がないのか、私からさっさと離れてソファにどすんと座った。


「先ほど、処刑されたらしいぞ」

「え?」

「お前が処刑されたんだよ。災いの魔女として絞首刑になったらしい。本来なら火あぶりだが、目立つからな。おそらくどこか目立たない場所まで運んで、そこで死体は燃やされるんじゃないか?」

「……処刑」

「ほら、窓の外を見てみろよ。いくつか上がっている煙のどれかが、お前を焼いている煙かもな」


 にやにやしながら言うラルス様は本当に意地悪で、私はやめればいいのに、ついぺたぺたと壁を伝って窓へと向かってしまった。

 そして外を見れば、どうやらお城は小高い場所に立っているらしく、街並みが一望できる。

 夕暮れ時だからか、街からはたくさんの煙が上がっていて、普通にご飯の支度をしているんだなってわかった。

 あの中に、自分の死体を焼いている煙があるとは信じられない。

 すると、背後からぷっと噴き出すラルス様の声が聞こえた。


「お前は本当に馬鹿だな。煙なんて上がるわけないだろ? 王宮魔術師たちが関わっているんだ。魔術で一瞬にして灰と化しているよ。その灰さえも、壺に入れられ封印されるだろうな」


 くっくと笑うラルス様が嫌いだ。

 平気で人を殺して灰にしてしまう魔術師たちが嫌いだ。

 そんなことを王様が命じたのなら、本当に許せない。

 こんな国、大嫌いだ。


 例え本当は私じゃなくて、殺されてしまったのがヤモリでも、よかったなんて思えない。

 ヤモリがかわいそう。私もかわいそう。

 そして、明美は? 私が殺されたって知らないんだよね? 私のことが心配になったりしないのかな?

 もう嫌。みんな、みんな大嫌いだ!


 そう思った瞬間、ものすごい閃光が走った。

 と、同時にお腹に響くほどの轟音がお城を揺らす。

 驚いた私は窓から手を離してしまい、べたっと落ちた。

 い、痛い。


「おいおい、そんなに怒るなよ」

「……はい?」

「確かに魔術師たちは馬鹿だが、城の者にも街の者にも罪はないんだから」

「……えっと?」


 訳がわからないでいる私の傍にラルス様はやって来て、窓の外を眺めた。

 先ほどの光と轟音は雷だったらしく、それをきっかけにしたようにあちらこちらで稲光が走り、轟音が響いている。

 しかも雨まで降ってきた。


「今頃は、魔女の呪いだ、怒りだって、魔術師たちは鎮めの儀式のために大慌てだろうな」

「鎮めの儀式?」

「ああ。この突然の雷雨は災いの魔女の呪いだと思っているはずだ。それにしても、さすがだな。呪文の詠唱もなしに、これほどの雷を落とすことができるとはな。どうせなら田畑の上にでも雨を降らせてくれればよかったんだが、まあここも日照り続きだったし、いいか」

「……ひょっとして、この雷や豪雨は私のせいなんですか?」

「なんだ、気付いていなかったのか。お前、さっき自分が殺されたと知って、怒ったんだろ? その感情がそのまま表れたんだよ。あとは制御する力をつけることだな」


 まだよく呑み込めないでいる私を無視して、ラルス様はぱっと部屋を明るくした。

 え? 電気?

 驚いてきょろきょろする私に気付いたのか、ラルス様がめんどくさそうに教えてくれた。


「光の魔術だよ」

「え? ですが、牢屋では蝋燭を……」

「あそこは、一切の魔術を遮断されるような仕組みになってんだ。魔術を使って囚人が逃げ出したら困るだろ?」

「そっか……」

「じゃあ、僕はあいつらの慌てぶりを見てくるから、リラはおとなしくしとけよ」


 部屋が明るくなったお陰で、外の稲光の威力は少しだけ緩和されたけど、やっぱりすごい雷雨。

 楽しそうにラルス様が出ていくと、私はぼんやり外を眺めた。

 これが私の力? 私が怒ったから?

 雷鳴が轟くたびに、お城のどこからか悲鳴が上がり、何となく申し訳ない気持ちになってくる。

 雷が私のせいなら、どうかもう収まってください。


 そう願いながら窓の外を見ていると、気のせいか雨足が弱くなり落雷の数が減っていく。

 うそーん。偶然……じゃない?

 なんて言うか、ゲリラ豪雨は始まった時と同じに、急に終わった。

 えっと……この雷雨で被害が出てないといいな。

 偶然だとは思うけど、このままだと本当に私が災いの魔女になっちゃうよ。





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