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国守の巫女の座を奪われて、家守になりました。  作者: もり
第一章

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「それで、その化けの皮? が剥がれた時にはどうするんですか? 私のことを言うんですか? それに明美はどうなるんですか?」

「さあ? その時の状況によるな。リラだって、いきなり国守の巫女だって言われても困るだろ?」

「……確かに」

「だからさ、それまでに僕が色々と教えてあげるよ。あいつらにちゃんと対抗できるようにね」

「対抗?」

「そう。本来なら、リラはあいつらよりも魔力が強い。だけど、今のままじゃ魔力の扱い方もわからず、なす術がないだろ? いいように使われるのがおちだよ」

「そうかもしれませんけど……」

「うん、何?」

「いえ……」

「はっきり言え」

「はい! あの、今もまだ魔術師長? を超えられないラルス様が教師で、私はちゃんと対抗できるのでしょうか!?」

「うん、いい質問だね?」


 怖い、怖い!

 ラルスは笑ってるのに、すごく怖い! 負のオーラってやつが、真っ黒なのが見えるよ!

 可視化できるとか、ありえないよ!


 怯えながらも促されて答えた私の瓶詰を、ラルスは持ち上げて何かの上に置いた。

 あれ? ちょっと待って。これ、似たようなの理科の実験で見たことある!

 そう思っているうちに、ラルスは何かをぶつぶつと呟いた。

 途端に、透明の瓶の底に炎が見える。――って、見えるだけじゃなくて、熱い! 熱いって!


「ご、ごごご、ごめんなさい! ラルス様! 私、生意気を言いました! 申し訳ありませんでした! だから、炙り焼きはやめてください!」

「そう? まあ、そこまで言うなら許してあげてもいいよ」


 ラルスは笑いながらふっと炎を消した。

 マジ怖い。サド王子だ。超ドS王子様だ。

 なるべく逆らわないようにしよう。


 まだ瓶の底は熱く、瓶内の空気も熱い中で、私は心に誓った。

 そんな私のぐったり具合を見てか、ラルス様は瓶をテーブルに戻し、コルク栓を外してくれた。

 栓には息ができるように小さな穴はいくつも開いていたんだけどね。

 新鮮な空気を求めて、熱くなった瓶の側面をペタペタ登り、えいやっと瓶から飛び出た。

 ああ、気持ちいい。自由を感じ……ない。


 手足――じゃなくて前後の足は火傷したのか、じんじんして痛む上に、私はラルス様に尻尾を摑まれひょいと持ち上げられた。

 目の前でラルス様の綺麗な顔がぶらんぶらんと揺れている。


「そうそう。忠告しておくけど、逃げようとしないほうがいいよ? まあ、ずっと瓶詰はかわいそうだから、コルク栓は外してあげるけど、この部屋からは出ないようにね。ヤモリは魔術師にとっては色々と便利な道具だから、見つかれば捕まっちゃうよ? ヤモリの心臓は薬草と煮込めば強壮剤になるし、肝は乾燥させて風邪薬になるし、目玉も聖水に浸けておけば目の炎症に効くし、他にも色々と用途はある。だから、気をつけてね?」

「――はい」


 やっぱり怖いよー。

 そもそも、ヤモリを変化の術とやらで、私に変身させていましたよね?


「って、あのヤモリはどうなるんですか? 私の姿になった……」

「おそらく、明日にでも殺されるんじゃない? 心配しなくても死んだ後も変化の術は解けないから大丈夫。僕の術は完璧だからね。あ、もちろん言葉も解さないから、余計なことも話さない」

「……明美は、それを認めちゃうのかな……」

「いや、きっと巫女に穢れは知らせないように伏せられると思うよ。大方、街へ出したとかそんな嘘を吐くんじゃないかな? あ、そうそう。彼女が偽物だってばれたらどうするかって質問にまだ答えてなかったね」

「はい」


 気にはなってたけど、それをもう一度訊く勇気はなかったので、諦めてた。

 でも、ちゃんと覚えてくれてたんだ。


「まあ、彼女にも比較的強い魔力があるから、しばらくは大丈夫じゃないかな? まだ力を使うのに慣れないだけと思われて。ただ、巫女でないと知られた時には……」

「……時には?」

「さあ? あいつらがどうするかは知らないよ。だって、明日には国守の巫女の出現を大々的に布告するつもりのようだからね。今さら間違いでした、なんて言えるのかな?」


 楽しそうに笑うラルス様の笑顔はやっぱり歪んでいて、笑顔に性格も出るんだな、なんて呑気に思う。

 ヤモリになった自分を嘆くべきか、殺されなかっただけよかったと思うべきかはわからないけど、とにかくラルス様が信用できない人だってことだけはわかった。

 ああ、恐ろしや。

 もう帰りたいよ、お母さん……。


 その時、ドアにノックがされてすぐに誰かが入ってきた。

 普通、ノックして応答があってから入ってくるものじゃないの?


「失礼いたします、ラルス様。話し声が聞こえたようですが、どなたかいらっしゃっているのですか?」

「――いいや、誰も」

「そうですか? 女性の声が聞こえたようですが……」


 入ってきたのは、すらりと背の高い美青年。

 髪色は焦げ茶色で、瞳は黒。本当に真っ黒。

 というか、私の視力、よすぎない?

 ヤモリってどんな視力だっけ? うん、知るわけないし。


「殿下、女性を連れ込むのはほどほどになさってください」

「だから、違うって。お前の気のせいだろ、アレク。僕は確かに話していたけど、相手はこのヤモリだよ」

「……また、何の実験にお使いになるのですか?」


 やーだー! この殿下、女性を部屋に連れ込むんだって! 若いくせに不潔!

 って、言ってる場合じゃなくて、この美青年――アレクさんがじっと私を見る。

 うう、まさか人間ってばれてないよね? むしろそんなにしょっちゅう、ラルス様は実験にヤモリをお使いですか。そうですか。怖いです。


「違うよ。このヤモリはちょっと特殊でね。しばらくこの部屋で飼おうと思うからよろしく」

「……飼われるのですか? ですが、このように放していては逃げませんか?」

「特殊だって言っただろう? この部屋から出ることはないよ。だからアレク、そうだな……エサは一日三回やってくれ。あとは……任せる」

「――かしこまりました」


 色々と言いたいことがあるだろうに、それを呑み込んだ様子で、アレクさんは部屋から出ていこうとした。

 この部屋、変な器具はあるけど、とても豪華でたぶんラルス様の私室だな。

 そして、あれか。アレクさんは執事とか? 萌え。


「ああ、それとアレク。このヤモリの名前はリラだ」

「……名付けられたのですか?」

「そうだ。愛情が湧くだろ?」


 いらない! このドS王子の愛情はいらない!

 そう思った私をちらっと見て、アレクさんは小さく嘆息すると、踵を返して部屋から出ていった。

 構造からして、控室的な場所かな? 本当に王族なんだな、ラルス様。


「いいか、リラ。これからは、僕の従者のアレクが世話をしてくれる。だが、言葉は発するなよ。普通のヤモリのふりをしろ。いいな?」

「はい!」

「大声を出すな」

「いっ――!」


 素直に返事をしたのに、ラルス様からデコピンされてしまった。

 痛い、痛い。すごい衝撃なんですけど! 脳みそ――たぶんちっちゃなやつがぐわんぐわん揺れてる。

 涙目になった私を満足そうに見下ろして、ラルス様はローブを被って部屋から出ていってしまった。




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