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国守の巫女の座を奪われて、家守になりました。  作者: もり
第二章

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26/27

 

 心配したのもつかの間、ベッドに入るとすぐに眠ることができました。はい。

 ということで、無事に食あたりがないことを証明できたからアレクさんに報告。

 食あたりは基本的に短時間で発症するはずだからね。


「アレクさん、あれはやっぱり食べられるみたいです。だからみんなに食べても大丈夫だって伝えていいですか?」

「もちろんです。リラさん、ありがとうございます。どうやってお礼をすればいいのかわかりません。ご自分が犠牲になったかもしれないのに……」

「そんな大げさな。それに何かあればアレクさんが助けてくれたでしょう? だから安心して実験できたんです」


 てへへと笑って答えたけど、なぜかメイドさんは目頭を押さえてる。

 いや、ほんとに大したことじゃないんです。

 それからはアレクさんの采配で、治癒魔法のできる人にしばらくお城に常駐してもらうことになった。

 もしかして遅効性の毒とかだと大変だから。

 昨日の手順を全て見ていたおじさん――料理長が中心になってイモ煮を広めてくれることになったんだよね。


「おじさん、もし手が荒れたりするようだったら、革手袋か何かで保護してくださいね」

「ああ、わかった。色々ありがとうな。最後にお嬢さんの名前を教えてくれないか?」

「リラです」

「リラか……綺麗な名前だな」

「ありがとう。おじさんは?」

「マークだよ」

「マークさん、私のほうこそありがとうございました。もしイモ煮を食べて異変があったらすぐに治癒してもらってくださいね」

「そんなに心配するなよ。それじゃあ、リラ……身分違いの恋は苦しくて大変だろうけど、頑張れよ」

「はい?」

「達者でな。俺たちは応援しているからな!」

「え? あ、はい。ありがとうございます?」


 なんのことだかわからなかったけど、馬車に乗ってから気付いた。

 さっきの言葉は私とアレクさんのことだ!

 違うのにそう見えたのか……。

 おじさんたちには多大なる誤解を与えてしまったけど、まあそのうち忘れるよね。


 なんて思いながら、また馬車にアレクさんとメイドさんと乗って出発。

 ちなみにメイドさんの名前はリムさん。

 あのイモ煮がみんな食べられるようになったら助かるね、なんて話しながら旅を続けた。


 だからまさか、あのイモ煮が〝リライモ〟なんて名前で世界中に広がるなんて思ってなかったよ。

 いや、名前はいいんだ。イモだけど。

 だって世界中の食糧不足の助けに少しはなったんだから。

 問題は、私とアレクさんの身分違いの恋(誤解)まで広まってしまったこと。

 まあ、それを知ったのはアレクさんの故郷――シェプラード帝国に入ってからなんだけど。


 だけど帝国に入ったばかりの私は、あまりに平和だった旅に疑問を感じてた。

 だって、ついこの前まで戦争してたのに、あっさり国境を越えられたんだよ。

 しかも、私たちが通った道には戦争の傷跡みたいなのが全然なかった。

 もちろんそれは喜ぶことかもしれないけど、でも不思議な感じなんだよね。


「あの、アレクさん……」

「どうしました?」

「ここって、戦争はなかったんですか?」

「ああ……このあたりでは直接の戦いはありませんでしたから。それに……」

「それに?」

「本当に剣を交えての戦いはほとんどなかったのですよ」

「え? でも……」

「私たち帝国の者はこの戦が無駄だということはわかっていました。それは辺境伯も同じです。ならば早々にこの戦を終わらせようと和睦を申し出たのですよ」


 それってすごく寛大な申し出だよね。

 攻められたほうが――優勢なほうが戦争を終わらせましょうって言ってくれるなんて。

 でも王宮で聞いていた話はどんどん戦況が悪化してて、兵士さんたちは明美を待ち望んでて、のらりくらりな王子様たちに腹を立ててたんじゃなかった?

 その疑問が顔に出てたみたいで、アレクさんは申し訳なさそうに微笑んだ。


「戦争とは情報戦でもありますから」

「じゃあ、王様も王子様も魔術師さんたちも騙されていたんですか? 本当は兵士さんたちから明美へのラブコールはなかったってことですか?」

「ラブ……何とおっしゃいました?」

「あ、えっと、明美を――国守の巫女に助けてほしいって要望です」

「あるにはありましたよ。やはりこのまま帝国に与するのは納得いかないという一部の者たちは再び争いを始めたがっていましたからね。国守の巫女が現れたことで、諦めていたものが手に入ると思ったのでしょう」


 アレクさんはにっこり笑って話してくれるんだけど、その内容はとても怖い。

 だって、そんな人たちがいたのに王宮に伝わっていたのは帝国と辺境伯が操作していた情報ばかりだったんだよ?

 もちろん争いはないほうがいい。

 だからアレクさんも辺境伯も間違ってはいなかったと私は思うんだけど……複雑。


「あの、アレクさん」

「はい、何でしょう?」

「私のことは……私が国守の巫女だってことは、帝国の人たちも知っているんですよね?」

「はい。リラさんのことは、今や帝国だけでなく世界中に広まっていると思いますよ」

「それって……やっぱりみんな私の力を欲しがりますか?」

「ええ、間違いなく。ですから、リラさんはある意味正しい選択をされたのですよ」

「正しい選択?」

「この世界では今、シェプラード帝国が一番力があると言っても過言ではありません。その帝国に保護されることになるのですから、他国はリラさんに簡単には手を出せないでしょう。ですから、ラルス様はリラさんを手放されたのです。もちろんリラさんの意思を尊重されたというのもありますけど、今のポセンア王国ではリラさんを守り切れないでしょうから」

「ラルス様が……」


 確かにラルス様の力はとても強いけど、まだまだ混乱している王国では私を守ることは難しいとは思う。

 でも私は自分でちゃんと身を守れるし、ラルス様に心配される必要はないのに。

 ラルス様はいっつも何も言わずに一人で決めちゃうんだから。

 腹立つなあ、もう!




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