表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国守の巫女の座を奪われて、家守になりました。  作者: もり
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/27

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

「ほう。よくわかってるじゃないか」

「冗談は冗談が通じる人に言うべきでした」


 あの騒動から三日。

 新しく貸してもらった部屋に入ってきたラルス様に向けて、スカートを摘まんでメイドカフェごっこをしたけど通じるわけがないよね。

 はい、私がバカでした。

 私が一人でいじけていると、ラルス様はなぜかじっと私を見た。

 何? 怖いんですけど。

 このメイドさんの服、なかなか似合ってると思ってたのに変?


「もう行くのか?」

「寂しいですか?」


 予想外のことを言われつつ咄嗟に返したけど、ラルス様らしくなくてびっくり。

 きっと私の目は真ん丸になっちゃってるよ。


「そうだな。これでお前が部屋から抜け出したときに心配しなくてすむからな」

「やだ、ラルス様が素直。熱でもあるんですか? ――いたっ!」


 本音が思わず出たら、ラルス様にまたデコピンをされてしまった。

 正確には人差し指で放った軽い空気砲がおでこにあたったんだけど。

 か弱き乙女にデコピンをするなんて、ドS王様だよ。


「暴力反対!」

「じゃあ、二度と戻ってくるなよ」


 私の抗議を無視してラルス様はひらひら手を振って出ていってしまった。

 どうやら今のは別れの挨拶だったみたい。

 三日ぶりに会って、たったそれだけ?

 本当に二度と会えなくなるかもしれないのに「二度と戻って来るな」って言われちゃったよ。

 なんて冷たい……って、あれ? ちょっと待って。

 私の記憶を巻き戻し巻き戻し。


 さっきラルス様は「部屋から抜け出したときに心配しなくてすむ」って言わなかった?

 言ったよね? うん。確かに言った。

 ということは、部屋から抜け出してたの(主にトイレで)バレてたんだ!


 いやー! あれだけバレないように用心してたのに!


 くそう。知ってたなら知ってたって言ってくれればいいのに。

 ラルス様ってば、意地悪だ。きっと私が抜き足差し足忍び足でこそこそしてるのを笑ってたんだよ。

 いや、心配してたのか。そう言ってたもんね。

 ……って、マジで!? ラルス様が心配!? 私を!?


 信じられないけど、そうか。

 ラルス様ってば、ツンテレだったんだね。

 ツンでデレてはないけど恥ずかしがり屋さんのテレ屋さんってことで。

 そう思うと、おでこの痛みもじんわりと……やっぱり痛いし!

 えっと、治癒魔法ってどうやるんだっけ?

 なんて考えてると、ノックの音がして返事を待たずにドアが開いた。


 入ってきたのはアレクさん。

 うん。格好は侍従さんから皇子様になってるけど、変わらないね。


「お帰りなさいませ、ご主人様」

「素敵な出迎えですね。ドレス姿もお似合いでしたが、メイド姿も可愛いくていいですね」

「いえいえ、そんな……」


 さすがアレクさん。

 油断も隙もないお言葉で。


「リラさん、準備はできましたか?」

「はい。準備はメイドさんがしてくれたので、私は身一つで出発できます」


 人間に戻った私は、制服だけで何もなかった。

 召喚されたときに持ってた鞄はどこに消えたんだろう。

 悲しく寂しいけど、それより問題はこれからの生活だったわけで。

 着替えさえない私にラルス様ではなくて、なぜかアレクさんが手配してくれたメイドさんがドレスを着せてくれた。――けど無理。

 ドレスを着て普段から生活するとか無理に決まってるよ。

 毎日が結婚披露宴ですかって感じだ。

 結婚相手もいないのに。


 そういうわけで、メイドさんにお願いして制服を見せながら「こんな服がいいです」とお願いしたら、色々と用意してくれたんだよね。

 どうやら街の洋服屋さんで買ってきてくれたらしい。

 メイドさんがあまりに優しいので、つい「一緒に旅しませんか?」って誘ってみたら「ぜひ」って返事!

 わーい! と喜んでいたら、メイドさんは帝国の人だったと判明。

 要するに里帰りってことですね。

 メイドさんもスパイでアレクさんの部下だったと。


 もう何を信じればいいのやら。

 だからこの世界ではすべてが敵ってくらい、私は尖ったナイフで生きていくんだ。

 荷造りはメイドさんがしてくれて、その中に大切な制服を入れてもらった。

 もちろんちゃんと保護魔法もかけてる。

 んで、何で今私がメイド服を着ているのかというと、可愛かったから。


 スカートはひざ下でぽわってしてて、袖も二の腕のところがぽわってしてて、あとは締め付けない程度にぴったりしてて可愛いんだ。

 紺色に白のエプロンとか、可愛すぎでしょ。

 ヤモリな頃から気になってたんだよね。

 というわけで、一着新しいのを用意してもらったのですよ。


「では、そろそろ行きましょうか」

「はい! って、私待ちだったんですか?」

「ん? ああ、いいえ。私もちょうど準備ができたのでお迎えにあがったのですよ」

「そうですか」


 これはたぶん嘘だな。

 アレクさんはラルス様が私と別れの挨拶をするのを待っててくれたんだと思う。

 みんなもっと本心で話そうよ。

 まあ、この世界じゃ無理だろうけど。


 アレクさんは私に腕を差し出してくるんだけど、これはひょっとしての腕組み?

 この世界では男の人が女の人をエスコートするのは普通なのかもしれないけど、私には難易度が高すぎるよ。

 しかも、アレクさんは皇子様で私は元ヤモリでメイドさんなのに。


「リラさん?」

「あの……私、一人で歩けますよ?」

「そうですね。ですが、ここにリラさんが手を添えてくだされば、私が嬉しいのです」

「……わかりました」


 アレクさんに笑顔で言われたら、これ以上は断れないよねえ。

 恥ずかしいけど我慢我慢。

 とにかく、これからもたくさんアレクさんのお世話になるんだから、できる限り良い子でいられるよう頑張ろう。

 さあ、新しい国――帝国に向けて出発だ!







 更新再開しました。不定期更新になりますが、よろしくお願いいたします。

 また活動報告にお知らせがあります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ