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死して屍、生き返りて鉄  作者: Rufe
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第0話・絶望の先の絶望

どうぞよろしく

それは、当然の帰結だったのかもしれない。

昔から私の大切な物は、この両手から滑り落ちていく。

大切な物を壊さないよう、無くさないように大切に抱え込んでいても、ふと気が付くと壊れて無くなってしまっていた。

「彼女」のことだってそうだった。

私は、「彼女」を一目見た時から恋に落ちてしまった。

そう、俗に言う一目惚れだ。

それから、私は「彼女」に告白し付き合いだしそして、給料三か月分の婚約指輪を携えて「彼女」にプロポーズをした。

「彼女」からの返答は、OKだった。

その返答を聞いた時、私は幸福の絶頂にあった。

だからこそ、だからこそ私は忘れてしまっていた私の逃れることのできぬ「定め」を。

私がその「定め」を痛いほど感じた日は、雨降る憂鬱な日だった。

「彼女」はその日どうしても外せない用事があった日だったらしい。

それでも私は「彼女」を引き止めるべきであった。

だが、全てはもう過去の出来事だ。

車が歩道を歩いていた「彼女」に突っ込んだらしい。

即死だった。

そして私の一番大切な物は、無くなった。

もう私には何も残されていない。

だからそう、車道に飛び出し鉄の馬が私を蹂躙するの感じながらも、そのことが当然の出来事であると感じている。

だが、最後にやってしまった。

婚約指輪をつけたままで死ぬのは「彼女」に失礼であったと感じながら、強烈な痛みを身体全体に受けながら意識が遠のいていった。


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今私は、困惑している。

何故なら目覚めてしまったからだ。

だがそれだけならよかった、だがそれだけではなかった。

ただ目覚めただけならあぁ死ねなかったで終わる、だが声を出そうにも声は出ず身体を動かそうにも動かなかった。

しかも、目に見える景色は欧州辺りのマーケットを連想させる出店のような場所ということがさらに私を困惑させる。

そして私を見つめている、酷く巨大な体躯の中年男性がいることに気がつく。

今にも叫びだしたい、だが声が出せないいや出なかった。

私は疑問、恐怖、混乱様々な感情を処理しようとしてはいたが、何故こうなった、そもそもここはどこなのか、この中年の巨大な男は何なのかを理解することが出来なかった。

そうこうしていると、また目の前に白い髭やら髪を長く伸ばした老人が現れ私を指さしながら中年と話し始めた。

「ご主人、この指輪はどこで入手したものなのかね?よかったらこの、ご老体に教えてはくれんかのぅ。」

「そいつですか・・・そいつぁ・・えぇと・・あぁ、そうだ!そいつは、今日気が付いたらあったんでさぁ。気味悪ぃ見てくれしてっけど高そうな指輪なんでこの際、売りに出しちまおうって思いましてね。ならべてたんですぜ。」

指輪・・・?

確かにこの老人と中年は私を指さしながらそう言った。

何を言っているんだ?

ナニヲイッテイルンダ・・・?

リカイデキナイ。

リカイデキナイハズナノニ、ワタシハ・・・私は今そのことを否定する事ができないのに気がつく。

本当なのかどうなのか、いまにも叫びだしたい衝動にかられるが体が言うことを利かない。

今にもこの二人につかみかかって問いただしたい。

だが、それは全て頭の中で終わる虚しい感情で終わるだけだった。

そんな私の心を知らず二人の会話は進んでいく。

「ご主人、この指輪金貨三枚でどうかねぇ・・?何ならお前さんの提示した金額でもいいんじゃが?どうかのぉ・・・?」

「き、金貨三枚でか、買ってくださるんですかぁ!!!そんなてっ、大金で買ってくださるってのに、ケチつけたら罰が当たりやすよ!!!」

「ほっほっほっ、そうかねぇ。それじゃあ、金貨三枚で、有難く貰っていくぞい。」

「はっははぁ、お、お買上げありがとうございました!!!」

そんな会話が聞こえたかと思うと、自分の視線が宙に浮いていくのを感じた。

そして老人の手のひらに私は収まった。

それと同時に、自分が指輪になっているということを嫌でも理解しなければならなくなった。

その時、ある感情が私の心を支配した。

ふざけるな…………ふざけるなっ!!!!!!!!!!!

なぜ私がっ!!!なぜ私をあのまま死なせてくれなかったのか!!!神を信じたことは無いが、あえて言わしてもらおう。おお神よ、貴方は非常だっ!!!生き返すだけでなく、自ら死を選べぬ存在にするとはっ!!!

よい買い物をしたという老人の顔とは裏腹に、私の心の中は「彼女」を失った時よりも深い絶望を心が埋めていった。






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