表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/120

97話 新選組

「フフフ……ワレらと争うつもりらしいぞ、あの者たち」

「笑止!」

「あ~ぁ、ヤだねぇ。自分の力を過信してるヤツってさ」

「つーか、あれっしょ? ウチらのことナメてんっしょ?」

「まじウケるっ」

「いやぁ~……やめた方がいいと思うなぁ。なぁ~んか嫌な感じがするんだよなぁ~……やだなぁ~やだなぁ~……なぁ~んか怖いなぁ~……」

「…………どうでもいい。早く終わらせよう」


 ウセロの後ろに並んだ七人の男たちが口々に言葉を発する。

 ……稲川さんっぽい人がいるな。


 とにかく、どいつもこいつも腕に覚えがあるのか、妙に落ち着いていて、そして不敵に笑っている。厳しい戦いになるかもしれない…………なんだけども。


「コーシさん……あの人たちって……人、ですよね?」

「まぁ……獣人ってやつの仲間なんじゃないか?」


 新選組の七人は、全員が全員、人間の顔をしていなかった。


「気になるか、敵共よ! フフフ、ならば仕方ない……光栄に思うがいい。貴様らに、我らの名を聞かせてやろう!」


 たぶん、チームとか組まされて変な連帯感が生まれているのだろう。

 みんなノリノリで名乗ってくれるようだ。


「我は、マグロ人のマグ!」

「カツオ人のイソ!」

「イカ人のゲソだよ」

「ハリセンボン人のボンだしっ!」

「イワシ人のワッシーとか、まじウケるっ」

「あぁ~、ボクねぇ~、アンコウ人のチョーっていうんだけどねぇ~……ん~……仮にAさんとしとこうかなぁ……」

「…………」


 と、こいつら揃いも揃って魚介類の顔をしているのだ!


「我らっ!」

「「「「「「新鮮組っ!」」」」」」

「漢字が違うっ!」


 ピッチピチの方かい!?


 で、いくつか突っ込みたいことがある!

 マグロ人のマグ? まんまだな、おい!?

 カツオ人のイソ? お前それ磯野から取ってるだろう!? 誰だ、その名前付けたの!? また昔の転移者か!? 長寿番組だもんね!

 イカ人のゲソ? 上半身の存在感なくさないであげて!

 ハリセンボン人のボンだしっ! って、知らねぇしっ!

 イワシ人のワッシー? いちいちウケんな! ツボが浅いんだ、お前は!

 そして稲川! 本名名乗った後で仮にAさんとしてんじゃねぇよ! チョーさんね! チョウチンアンコウじゃないけどチョーさんでいいのね!?

 そして最後のやる気なし男! 見た感じ、まんまエビだけど! エビ以外の何物でもない顔してるけど、一応名乗ってくれるかな!? 参加しようぜ、こういうのは!


「そっちの赤い顔したヤツの名前は?」


 聞かないと気持ち悪いので一応聞いておく。

 すると、エビ男はチラリとこちらへ視線を向け、面倒くさそうにため息をついた。


「…………エビ人の、エビ」

「まんまかよ!? もうちょっとひねれよ、名前なら!」

「……別に………………どうでもいい」


 クールなエビだこと!


「……あの、コーシさんがなんかアツいんですけど……」

「コーシのスイッチは変なところでオンになることがあるようね……他人のフリをしましょう」

「そんなっ、コーしゃまが気の毒なのじゃ」


 えぇい、うるさい! こんなおかしな集団、突っ込まずにいられるか!

 授業に『ツッコミ』って教科があったら、イントロダクションで出てきそうなくらい突っ込みやすい集団じゃねぇか。


 そしてニコ……気の毒扱いは、地味に刺さる。


 そんな騒がしい連中を、ただ一人鋭い視線で見つめていたグレイス。

 抜いた剣で自分の肩をトントンと軽く叩いている。


「よし。帰るか」

「飽きないであげて!? お揃いの服とか着てテンション上がっちゃってるんだよ、きっと!」


 ほら、アレだ。

 文化祭でお揃いのTシャツとか作っちゃう人たち、あんな感じの『アゲアゲ』なテンションなんだよ。『バイアス』『ぶちアゲ』なんだよ、きっと。よく分かんないけど。


「敵は八人……グレイスがいてくれないと、俺たちだけではどうにも出来ない」

「ほぅ……」


 豆鉄砲をくらったハトのように目を丸くし、これまたハトのような声を漏らしたグレイス。


「ワタシを頼ってくれるのか?」

「当たり前だろう。めっちゃ頼りにしてるっての!」

「……ニコラコプールールーよりもか?」


 なんでそこでニコと比べるんだよ?

 ……だが。


「接近戦重視の敵で、且つ室内だからな。グレイスが一番の頼りだ」

「よし、やろう! 瞬殺だ! そなたらは、ワタシの引き立て役として美しく散るがいい!」


 ここまで散々頼りにしていたのに……言葉にするって、凄い威力を発揮するんだな。


 ……と、俺の背後でも動きがあった。


「エルセよ、スティナを頼むのじゃ」

「ふぇっ!? ニ、ニコさん、どこ行っちゃうんですか!? 結界は!?」

「すまんのじゃ…………ワシには、倒さねばならん女がおるのじゃっ!」


 ニコォ!?

 なにムキになってるの!?

 しかも倒さねばならぬ『女』って!? それ確実にグレイスのことだよね!?


「コーしゃまは、ワシが守るのじゃっ!」

「ふふん! 残念ながら、コーシはワタシが頼りなのだそうだ! 『後衛』として守備に徹せよ、ニコラコプールールー!」

「否じゃっ! ワシが、終わらせるのじゃっ!」


 うわぁ……シムの街のツートップが衝突してる…………言葉にするって、マジですげぇ威力を発揮するんだな……


「コーシさん……どうするんですか、これ?」

「これだから、コーシは……」


 なんだか、背中に冷たい視線が突き刺さっている。


 まぁ、とりあえず…………


「俺ら三人は、『いのちをだいじに』で」


 新鮮組の連中には申し訳ないが……二人の相手は任せた。


 今、シムの街の頂上決戦が、すげぇどうでもいいことをきっかけに、始まる――

 ……どうしてこうなった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ