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論外魔力の魔法使い  作者: 宮地拓海


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58話 買い物の成果

「やっぱりコーしゃまだったのじゃ」


 両手に荷物を抱えたニコが俺たちと合流する。


「市場で騒ぎがあったと聞きつけて、大急ぎで駆けつけたんじゃが……間に合わんかったようじゃのぅ」


 申し訳なさそうな顔をするニコ。まぁ、俺たちだけでなんとかなったから、そう気にすんなよ。


「エルセよ。もふらを家に連れて帰るのじゃ。街中を連れ回すのはさすがに迷惑じゃからの」

「そうですね。では、充電が終わり次第一度戻りましょう」

「充電しといてやるから、先に連れてけよ」


 ウセロが逃げ出した後、エルセは即効でもふらから降りてきて俺の頭にらぐなろフォンを置きやがった。……約束だからしょうがないのだが……この遠慮のなさよ。


「もふもふ~」

「え? なんですか?」

「もふっふ~」

「ふむふむ」


 エルセがもふらと会話している。

 お前、いつの間にそんなスキルを……


「『もっふふ~』だそうです」

「それは聞いてたら分かる! 翻訳しろよ!」

「そんなの無理に決まってるじゃないですか。え、コーシさんって、『ウチのワンちゃんはしゃべるんザマスのよ』の人ですか?」

「お前の愛犬家に対するイメージが偏見に満ちてるのはよく分かったけども、俺はそうじゃねぇよ」


 お前が、さも「理解出来ますよ」みたいな感じで会話に応じたからそう思っただけだろうが。


「ふむ。どうやら、『一人で帰れる』と言うておるようじゃの」

「いやいや、勝手に逃げ出してきたヤツがなに言ってんだか」


 一人で帰れるならそもそも逃げ出してくるな。


「しょうがないわね。私が連れて帰ってあげるわ」

「おい、誰か。あいつそのまま戻ってこないつもりだから捕まえておいてくれ」


 この後カチヤの家に行って風のタリスマンの話を聞くんだよ。お前なんか情報持ってんだろ? 一緒に来いよ。


「しょうがないわね。じゃあ、みんなで戻りましょう」


 仲良しか!? とも思わなくもないが、この案に反対する理由はなく、じゃあ、まぁ、みんなで行くか。と、相なった。


「カチヤも来るか?」

「ほゎっ!? ア、アッチもいいんでしか?」

「だって、売る物もうなくなっちゃっただろ?」

 

 カチヤの店の商品は、俺とスティナでほとんど買い占めてしまった。

 それに、カチヤは薬を買って早く帰りたいだろうし。


「ニコ。いい薬屋を知らないか? 弟が風邪で寝込んでるらしいんだ」

「それなら、近所に馴染みの薬屋があるのじゃ。案内するのじゃ」


 そんなわけで、カチヤを連れて、俺たちは一度ニコの家へと戻ることにした。


 もふらに乗って街を行く。


 ……すげぇ目立ってるな。楽だからいいんだけど。


「ニコは何を買っていたのかしら?」

「ワシらのご飯ともふらのエサなのじゃ」


 小さな体で大きな荷物を三つも四つも抱えていたニコ。

 なんでも、魔力の枯渇が緩やかになったおかげで体力的にも余裕が出来たのだとか。

 いや、パワー上がり過ぎだろう。俺でも辟易しそうな大荷物だぞ。

 ……もしかして、魔力の枯渇を完全に止めたら怪力になったりするんじゃないか?


「それで、何か装備品は買ったのかしら?」

「それがのぅ、なかなかいいのがなくての」


 えへへと、照れ笑いを浮かべるニコ。

 欲しい物がなくて、食材へとシフトチェンジしたようだ。


「コーしゃまくらい熱心に商品を見られれば、何か見つけられたかもしれんのじゃけど……買い物が苦手なのじゃ」

「まったく。なんのために買い物に出たのか分からないわね」


 と、生ホタテをパクついていた女が言う。

 おい、そこの自分のことは棚上げウーマン。お前も装備品は何ひとつ買ってないだろうが。


「スティナさんは何か買ったんですか?」

「当然よ」


 お?

 何か買ってたのか?


「コーシに頼らなくても魔法が使えるように、エッカルト様のイラストカードをゲットしてきたわっ!」

「グッズだ!? イスメーネ学院の修行用教材、グッズ展開してんの!?」

「元イスメーネ学院のシスターだった、私の先輩たち有志が作製した非公式アイテムよ」

「同人だぁー!?」


 異世界でも変わらないんだな、ファンの取る行動って!?


「ただ……かなり癖のある絵柄だから、イマイチきゅんとしないのよね」

「ダメじゃん!? 本末転倒じゃん!?」


 いや、いるけどな。

 自分の絵柄最優先で、言われなきゃなんのキャラか分からない感じの人!


「エルセは何を買ってきたのじゃ?」

「ふっふっふっ。よくぞ聞いてくれました!」


 エルセが自信に満ち満ちた表情を浮かべて胸を張る。


「わたしは、自分の職業の特性を生かせるアイテムを買ってきました!」

「ってことは、コスプレグッズか?」

「はい! まずは身近な人のコスプレから始めてみようと思って、ニコさんっぽいものを買ってきたんです」

「ワシのコスプレをするのじゃ? な、なんか照れるのじゃ……」


 もじもじとしながらも嬉しそうに、ニコがエルセに詰め寄っていく。


「それで、どんなものなのじゃ? 何を買ったのじゃ?」

「では、ご覧に入れましょう! ニコさんになりきるコスプレアイテム! 豊胸パッドですっ!」


 それは、「詰め過ぎだろ!?」と言わざるを得ないほど分厚いパッドの入った、偽乳付きブラジャーだった。


「これで、もしかしたらわたしも魔法が使えるように……って!? ニコさん、どうして泣いてるんですか!?」

「…………ワシ、悲しいのじゃ」


 力説するエルセをよそに、ニコが膝を抱えて泣いていた。

 ……そりゃ、そうなるわなぁ。


 まぁ、とりあえず。

 俺を含めて……


 誰一人まともな物を買ってないってことだけは、はっきり分かった。

 買い物、下手過ぎるだろ、このパーティ。






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