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13話 第二ヒロインは……魔法屋!?

 風呂トイレ完備。

 広々とした個室が備え付けられた5LDK店舗付き。

 ババアの魔法屋は、どこかで空間がねじ曲がっちまってるんじゃないかと思うような、外観からはかけ離れた豪華さだった。

 ……まぁ、内装は年季の入った古臭いものだったが。広さは申し分ない。


 おかげでぐっすりと眠れてしまった。

 異世界二日目の朝は、最高に清々しい気分で迎えることが出来た。


 ババアの作ってくれた温かいスープは、マジで「HPとMPがもりもり回復してるっ!」と、実感出来るくらいに力がみなぎる逸品だった。


「なんか、俺までゲームの中のキャラクターになった気分だな」


 朝食の席でそんなことを、なんとはなしに呟くと、向かいの席で食器をカンカン鳴らしていた行儀の悪いエルセがこんなことを教えてくれた。


「コーシさんの肉体、日本にいた頃とはだいぶ変わってるんですよ」


 …………パードゥン?


「ほら、異世界なのに言葉とか通じるじゃないですか。あと、レベルアップとともに体力回復したり」


 確かに、言われてみれば思い当たる節がある。ありまくる。


「こっちの世界に転移する時に、こっそり、詳しく話すとドン引きするような改変をコーシさんの脳みそに施しまして……あ、わたしがじゃなくて、天界が、ですけどね」

「うん、ごめん。詳しく聞かせてくれるかな?」

「え…………自らドン引きしに来るとか……ドMですか?」

「ん~ん、違う違う。お前をどの強さでぶっ飛ばすか決定する裁判みたいなもんだから」


 何を勝手に人の脳みそ弄くり倒してくれてんだ!?

 改造人間になった気分だわ!


「カッコいいじゃないですか、改造人間っ」

「改造人間って言うな!」

「わたしとお揃いですよ?」

「うわぁ……たった今、急に気分が沈んだわ……」


 エルセレベルに堕とされたのか、俺……


「いーっひっひっ。朝から賑やかじゃのう、おぬしらは」


 鼻をくすぐるような高く甘い声がして、跳ねるような歩調で一人の少女がお盆に載ったスープを運んでくる。

 年の頃は十二歳……か、十一歳?

 身長がやけに低く、その反動か…………胸がすんごいことになっている。ただただデカい。


「エルセ。誰だ、この…………女の子は?」

「今必死に『ロリ巨乳』って言葉をのみ込んだことは評価しますが、失礼ですよコーシさん」


 くっ! なぜのみ込んだ言葉が筒抜けになってしまったのか!?

 しかし、……『失礼』?


「昨日から散々お世話になった方を、もう忘れたんですか?」

「散々世話になった方って…………そういやあのババアは?」

「ワシじゃっ」


 ぴょん!

 ――と、目の前のロリ巨乳がジャンプして、俺の目の前に両足を揃えて着地する。

 バウンド……したな。それも盛大に。ぽぃ~んって。


「こ、これっ! そんなに胸ばかり見るでない……っ。まったく、これじゃから男というのは…………ぽっ」


 ……ん?

 この反応。この感じ……え、まさか?


「ワシが魔法屋の店主にして、大魔法使いのニコラコプールールーじゃっ」


 大きな胸を惜しみなく「ババンッ!」と張って、目の前のロリ巨乳は言い切った。

 ニコラコプールールー? なんだその『すいかの名産地』のメロディに載せて口ずさみたくなるような名前は?

 いや、そんなことよりも…………


「エルセ……このロリっ娘が……」

「はい。昨日のシワっ娘です」

「誰がシワっ娘じゃっ!?」


 少々舌ったらずなしゃべり方でエルセに抗議をするニコラコプールールー。つか名前が長い。


「おい、ニコ」

「ふぁっ!? …………初めて、あだ名を付けられたのじゃ…………親愛の証、なのじゃ…………ぽっ」

「コーシさん……上にも下にも、本当に節操がないですね。ストライクゾーンガバガバじゃないですか」

「待って待って待って!? 俺、今、そんな酷いことしたかな!?」


 お前はなんでそんなに落ち着いてるんだ?

 昨日の枯れ木みたいなババアが、一晩経ったら一人で新幹線にも乗れないような幼い少女になってたんだぞ? 驚けよ!


「コーシさんがなかなか起きてこないから、その間に色々お話聞いたんですよ」

「あぁ、そうなのか」


 確かに、今日は寝過ごしてしまったな。


「ニコさん、燃費悪いそうですよ」

「燃費?」


 早速エルセに愛称呼びされたニコへと視線を向ける。


「ワシはこの魔法屋にある魔法をすべて覚えておるのじゃ」

「え……すべて?」


 確か、ざっと見ただけでも数百冊はあったと思うんだが……


「そのせいで、常時魔力が減り続け……夕方には昨日のような姿になってしまうんじゃ」


 なんだその、アプリをインストールし過ぎて待機電力食い過ぎなスマホみたいな体は?

 つか、魔力を使い過ぎると、あんなことになるのか?


「魔法使いに年寄りが多いというのは世間の勝手な思い込みでの。本当は、魔力の枯渇によって、ちょっとばかりシワシワのカピカピになっておるだけなんじゃよ。んじゃから、こうやって美味いご飯を食べて、一晩ぐっすり寝て、す……好きな男のことでも考えておれば…………すぐに元通りぴちぴちでぷりてぃ~な女の子に戻れるのじゃっ! ……きゃっ☆」


 いや……「きゃっ☆」じゃねぇよ。

 なんだよ、そのでたらめな体質…………つか、ってことは。


 俺も、魔力が枯渇したらしわしわのジジイになるのか?


 怖い……怖過ぎる。

 俺が「もにゅもにゅ~」って言うのか!?


「コーシさん……」


 エルセがグッと体を乗り出し、俺に耳打ちしてくる。


「わたし、下の世話はまだ自信ないです……」

「勝手にそんな心配しないでくれるかな!?」


 こっちだって、お前には頼みたくねぇよ!


「でも、それも今日でおしまいじゃっ☆」


 弾むような声で言って、ニコが俺の胸へと飛び込んできた。


「おぉいっ!?」


 思わず受け止める。と、ニコは俺の背中に腕を回して「ぎゅぅう!」としがみついてきた。

 おぉうっ! 

 む、胸に柔らかいものが!? 柔らかいのに弾力のあるものが!?


「今日からワシは、ずっとコーしゃまのそばにいて魔力を分けてもらうのじゃっ☆」

「「……は?」」


 俺の胸にしがみついてにっこりと笑うロリ巨乳。

 大魔法使いニコラコプールールーが、俺たちのパーティに加わった…………って、ことか?



 つか、あまりのことにツッコミ忘れてたけど…………『コーしゃま』ってなんだよ。






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