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114話 ランクアップ

「お疲れさまです。セオ・コーシ様」


 冒険者ギルドへ着くと、入り口で褐色美人のアイザさんが出迎えてくれた。待っていてくれたようだ。

 一行を代表して、俺へと挨拶してくれる。


「グレイス様がギルド長室でお待ちです」

「わざわざ出迎えてくれてありがとうな」

「いえ。この任には、私しか就けませんので」


 俺らの出迎えが、そんな大層なことなのだろうか?

 そんなことを思っていると、アイザさんが似せる気の一切ないモノマネでグレイスの言葉を語る。


「『面識のないヤツが担当して、ワタシのコーシに惚れてしまっては困るのでな』……だ、そうです」

「うん……発言がイタイこともさることながら、アイザさんのモノマネにこれでもかと含まれていた悪意にもドン引きだよ」


 確実にグレイスをディスっているモノマネだった。

『鼻水を垂れたアホの子のマネをしてください』と言われた時、八割くらいの人が「そういう風にやる」であろう感じのモノマネだった。


「私は安全な女だと思われたようです」

「まぁ、アイザさんは俺に惚れるなんてことはあり得ませんからね」

「おや。分からないじゃないですか、そのようなことは」


 え……と、一瞬ドキリとさせられる。

 表情に乏しいが、アイザさんは妖艶さを湛えた美人なのだ。

 そんな人が、俺に惚れる可能性があるなんて言われると……


「私がゲテモノ好きでない確証もないでしょうに」

「今の一言で確証を得ました。ないッス。あり得ないッスわ、絶対」


 誰がゲテモノだ。

 レベルがもっと上がったら、いつか決闘を申し込んでやる。

 ……たぶん、まだ勝てないだろうから、今はやらないけれど。


「セオ・コーシ様に、グレイ…………冒険者ギルドより贈与品がございます」

「グレイスからなんだな」

「はて、なんのことでしょうか?」


 誤魔化すの下手だな、この人。

 そもそも誤魔化すつもりがないのだろうけれど。


「魔法の指輪です。お受け取りください」

「指輪? なら、俺じゃなくてエルセとかニコに……」

「いいえ。これはセオ・コーシ様に受け取ってもらうようにとのことですので」

「なんか、嫌な予感しかしないんですけど?」


 トレイに載せられた指輪を無言で差し出してくるアイザさんが、なんか怖い。


「この指輪は、装備するとすべてのパラメーターが三倍になるスペシャルレアアイテムなのですよ」

「ほゎあ、それは凄いですね、コーシさん」

「もらっておけばいいんじゃないかのぅ。レアアイテムなら稀少じゃしの」

「デザインは割とシンプルだし、コーシでも身に着けられるんじゃないかしら」


 ふむ。

 それもそうか。


 けれど、ゲームの場合、こういういかにも凄いパワーアップアイテムには呪いがかかっていたりするんだよな。

 ……って。ははっ、さすがに考え過ぎか。


「グレイスがくれる物に呪いなんかかかってるわけないよな」

「かかっておりますが?」

「詳細プリーズ!」


 呪いかかってんのかよ!?


「一度装備すれば、二度と外せなくなります」

「ま、まぁ、それくらいなら、大丈夫なんじゃないですかね?」

「そうじゃのぅ、ステータスすべて三倍は大きいからのぅ」

「汚れが溜まって臭くなりそうだけれど、コーシなら問題ないでしょう」

「こら、スティナ」


 さらりと毒を吐くな。


「けどまぁ、外れないだけなら……」

「外れない『だけ』ではございませんが?」

「詳細プリーズ!」

「この指輪は、左手の薬指専用装備で、装備した途端、セオ・コーシ様に配偶者が誕生し、死が二人を分かつまで添い遂げていただくことに……」

「尽き返しましょう、コーシさん!」

「捨ててやればいいのじゃ」

「どうせなら売りましょう。嫁がもらえずに悩んでいるオッサン辺りに」

「おぉい、ダメだぞ、貴様ら!」


 どこかから俺たちの動向を見ていたのであろう。グレイスが大慌てで飛び出してきた。


「も~ぅ、コーシ。照れずに受け取ればいいものを……シャイ、なんだな」

「うん、俺、心のセコムに入ってるから」


 危機を感知したら速攻で回避するんだ。


「まぁいい。挙式は二人っきりで話し合った後で決めるとして……」

「みんな。これからも俺と一緒にいてくれな。特に冒険者ギルドに来る時は絶対に!」


 決して一人で来てはいけない場所になってしまった。

 仲間がいるって、ありがたいな。


「では、アホのギルド長様は放っておいて、中で報奨金等の手続きをさせていただきます」

「おい、コラ、アイザ! 口を慎むのだ! 無礼ではないか!」


 さすがのグレイスも、部下の失言には厳しく指導を入れるようだ。


「…………真実を言ったまでですが?」

「真実だから無礼だと言っているのだ!」


 あぁ、自分で認めちゃったよ。


「言い直せ!」

「では……天然でちょーかわいいーグレイス様は放っておいて、中で報奨金等の手続きをさせていただきます」

「よしっ!」

「よくないぞ、グレイス」


 確実に小バカにされてたぞ、今。

 まぁ、本人がいいならいいけどもさ。





 受付に向かい、俺たちは揃って冒険者カードを差し出す。

 クエスト完了の報奨金を受け取るのだ。


「それから、今回は巨大な組織を壊滅させた功績を認め、そなたらのランクを上げておいた。更新してもらうといい」

「ランク?」


 そういえば、こういう冒険者ギルドに登録している冒険者には、ランクがあるってのはセオリーだったな。

 最初は『F』辺りから始まって、『E』、『D』、『C』、『B』、『A』とランクアップしていき、やがてはSランクに。さらにその上には『SS』や『SSS』なんてランクまで存在する。

 そういうのがお約束だ。


 そうか。この街の冒険者にもランクがあったのか。

 今まで気にもしていなかったけど。

 まぁ、登録したてだから一番下の低いランクだったんだろうけどな。


「セオ・コーシ様。報奨金の振り込みと、冒険者ランクの更新が完了いたしました。ご確認をお願いします」

「ありがとう」


 アイザさんから冒険者カードを受け取り、自分のステータスを確認する。

 よく見ると画面の端に『資格』というアイコンがあった。


「ここにはの、魔導船を運転するための資格や、薬剤師の高等資格などが表示されるのじゃ」

「魔導船なんかあるのか。乗ってみたいな」

「なら、いつかみんなで乗りに行くのじゃ。空のデートなのじゃ……きゃっ☆」


 あ、やっぱ空飛ぶ方なんだ、魔導船って。海じゃなくて。


「ここに冒険者ランクも乗っているのか」

「そうなのじゃ。コーしゃまは古代魔法も復活させたから、きっとかなりランクが上がっているのじゃ」


 にこにこと、自分のことのように喜んでくれるニコ。

 ニコも俺のランクに興味があるようなので、早速自分のランクを確認してみる。

『資格』のアイコンをクリックして画面を切り替えると、画面上部に冒険者ランクが表示された。



『 冒険者ランク : 乙 』



「『乙』っ!?」

「凄いのじゃ! 上から二番目なのじゃ!」

「ってことは、『甲』『乙』!?」


 なんで『A』『B』じゃないんだよ!?

 数字じゃないのはうっすらと諦めかけてきたけども、アルファベットは使えるだろう!?


「あぅぅ……コーシさん。わたしは『丙』でした」

「『甲』『乙』『丙』『丁』なのっ!?」


 またしても、俺の知ってるのとちょっと違う!


「ちなみにだな、コーシよ。ワタシのランクは、『甲甲甲』なんだぞ」

「『SSS』みたいなことはあるんだ!? 面倒くさいとこだけは共通なんだな!?」


 グレイスは個人としてはずば抜けて戦闘能力が高いために『甲』の範疇を超えてしまったのだろう。

 なんだかんだ、『サンクチュアリ・ベール』なしでからくり武者との戦いを乗り切ってたしなぁ。


「ねぇ、コーシ。私のランクが『眠』なのだけれど?」

「どういうこと!?」

「おぉ、レアじゃのぅ」

「レアとかおかしくない!? 『眠』って、強さで言うとどの辺なの? 『丙』辺りか?」

「いや。それらとは別の括りのレアクラスだ」

「別の括り作っちゃダメだよね!? ランク付けって、誰が見ても分かるように付けるもんなんじゃないの!? 結局、どのくらいの強さなのか分かんなくなってんじゃん!」


 アルファベットじゃないのは百歩譲って目をつむるけど、例外は生み出すなよ!



 そして、更新された俺たちの冒険者ランクはこのようになった。



コーシ : 甲

エルセ : 丙

ニコ  : 甲甲甲

スティナ: 眠




 ……なんだこれ。







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