表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/120

10話 魔法習得!

 で、結局。

 お楽しみBOXから二冊、魔導書を買うことにした。


 まずは魔法を覚えて、魔法使いって職業に慣れようと思う。


「んじゃ、レバーを引くぞ!」


 無駄に禍々しい作りのレバーを握り押し下げる。

 ガシャコンッ! ――と、音がして、取り出し口から一冊の魔導書が出てくる。


 北欧の古書みたいな、しっかりとした装丁の本だ。


「ほぅ。珍しい物を引き当てたのぅ」


 ババアの声が半音高くなる。

 なんだ? レアものか?


「こいつは『魔力あげるんです』じゃ」

「おい、名称!? 魔法ってそんなんばっかりか!?」

「そんなことないのじゃ。『ジャスティス・ダークソウル』とかもあるのじゃ」

「ダッサッ!? こじらせた中学生が真っ先に思い浮かべそうな名前だな!?」


 正義なのか悪なのか分かんねぇよ、もう。


「それで、この魔法はどんな効果があるんだ?」

「自分の魔力を、他の魔法使いや魔力を帯びた道具へ分け与えるのじゃ」

「まぁ、そのまんまだな」


 使えなくも、……ない、か?


「ぷふぅーっ! ただでさえMPが『論外』なのに、他人に分け与えるって……もらった方も『しょぼっ!?』ってなりますってっ! くすくすくすっ!」

「よぉし、よく見てみろエルセ。この魔導書、鈍器として使用出来そうじゃないか? 角のとことか?」

「あ、危ないですっ! 魔導書は振りかざす物ではないですよっ!?」


 ……ったく。

 人が前向きに頑張ろうとしてるってのに……


「それで、どうやれば使えるようになるんだ?」

「魔導書を開いてみるのじゃ」


 ババアに言われた通り、魔導書を開いてみる。


 と――


「うぉっ!?」


 眩い光が溢れ出し、俺の全身を包み込んだ。

 頭の中に言葉が浮かぶ……全身に文字が刻みつけられていくような感覚に陥る。


 数秒で光は収まり、魔導書は灰のように朽ち果ててしまった。


 ………………ファンタジー。

 ここまで散々ふざけといて、いきなり真面目にファンタジーすんなよ。ちょっと驚くだろうが。


「これで、使えるようになったはずじゃ」


 ババアの言う通り。俺の脳にはこの魔法の使い方がはっきりと刻み込まれていた。

 確信出来る。俺はこの魔法を使える。

 ……が、現状、魔力を分け与えるべき相手がいないので試すことは出来ない。


 なんかモヤモヤすんな。


 やっぱRPGとか、よく出来てるわ。

 試し打ちとかしたいもんよ、普通。……それが出来ないこのフラストレーションよ。


「もう一回引かせてもらおうかな」


 なんとしても試し打ちがしたい。敵ならここに二人いる。

 俺は「攻撃魔法来い!」と願いながらレバーを押し下げた。


 ガシャコンッ! ――と、音がして、取り出し口から一冊の魔導書が出てくる。


「ほぉ! 今度は攻撃魔法じゃな」

「マジでか!?」


 願いが通じたか! 神様っているのかな!? 

 ……あぁ、いるんだっけね、確か。ヴァルハバラにオーデン様。


「これは『イビル・クレバス』じゃ」

「なんか、凄く強そうな名前ですね、コーシさん!」

「おぉ! ちょっと暗黒魔法っぽいけど、しかしまぁ、良さげだな!」


 有り金をはたいて手に入れた魔法だ。大切に使おう!


「こいつは、魔犬をも黙らせたと言われる魔法じゃ」

「これはアタリですよ、コーシさん!」

「おぉ! で、どんな魔法なんだ!?」

「敵の口の中に、エッグイ口内炎を生み出す魔法じゃ」


 ………………は?


「……口、内炎?」

「想像しただけでも痛いのぅ……こ~んな大きな口内炎じゃぞ? 二週間くらいずっとこ~んな感じになるぞぃ」


「こ~んな」と言いながらどんよりと落ち込んだような仕草を見せるババア。

 ……お前に使ってやろうか?


「3万Mb払って、敵に口内炎作る魔法って、そりゃねぇだろ!?」


 戦闘に使えねぇじゃねぇかよ!

 魔犬を黙らせた?

 痛かったんだろうな!? で、黙っただけでたぶん倒せてはないよな!?

 都合いいとこだけ切り取って大袈裟に広報してんじゃねぇよ!


「コーシさんって……なんか、人生が全体的に残念ですよね」

「お前に言われたくねぇわ、出禁天使!?」

「天使じゃないです、営業です! 一緒にしないでください!」

「一緒にされたくねぇのは天使の方だろうよ!」


 お前の口に口内炎を作ってやろうかぁ!?


「しょうがないですねぇ…………」


 言いながら、エルセが冒険者カードを「すちゃっ!」と構える。


「わたしが一回だけ引いてあげます」


 自信満々に言う。

 ……が。


「えぇ……いいわぁ。お前、絶対運悪いし……金だけ貸して」

「何言ってるんですか!? 営業ですよ、わたし!?」


 いや、営業に幸運なイメージねぇし。


「それにわたし、こういうの得意なんですよ」


 こんなガチャみたいなヤツに得意も不得意もないと思うんだが?


「どっから出てくる自信だよ、それ」

「ふっふっふっ……こう見えてわたしは…………」


 不敵な笑みを漏らし、エルセは腕を高々と掲げてはっきりと言い放った。


「かつて、課金ゲーム廃人だったんですっ!」

「自慢して言うことかっ!?」



 もう、マジでなんなの、お前…………パーティ再編成したいなぁ…………マジで。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ