降伏と嘘
早速帝都奪還に向けて作戦が話し合われる。だが、レドナクセラ1世がバルロッサ魔道王を考慮して作られたこの要塞のような都市を落とす作戦は出てこなかった。
帝都奪還後にガウシアンが攻めてきてもいいように門の破壊は避けたい、もちろん外壁も同様だ。
「ならば開けさせればいいのでは無いかサハラ様?」
「どうやって?」
「弓兵に制約を掛ければ簡単な事」
「そうか! なるほど、これだけのウィザードがいれば外壁の全員に使えるのか!」
「ああ、そうだマルス様」
こいつは敬語を使ってるつもりなのかなんだかわからない奴だな。
早速キャビン魔道王国のウィザード達が準備に取り掛かりに入る。カフィンの指示で一斉に魔法の詠唱が開始されると外壁にいた弓兵達が姿を消したかと思えば争う声が聞こえてきた。
そして暫くすると堅く閉ざされていた門がユックリと降りてきた。
「やったぞ! 成功だ。全員適当でいい、隊列っぽいのを組んで中に入るぞ!」
マルスの奴、適当かよ。
マルス、レイチェルを先頭に帝都についに俺たちは入る事に成功する。
先頭を行くマルスとレイチェル、その後にヴァリュームから来たノーマ軍が続き、世界樹のエルフ達に霊峰の冒険者と元からいた解放軍のメンバー、そして最後にキャビン魔道王国のウィザード達1万が続く。
時折視線を感じ、そちらを見るとレイチェルと視線が合い慌てて逸らされ、セーラムは子供帰りしたかのように俺の腕に絡みつくようにへばり付き正直歩き難かったが、離してもくっついてくる為諦めて歩を進めた。
帝都に住む一般人達は恐怖に怯えながら俺たちを見ていたが、
「こちらにおわすは亡きレドナクセラ皇帝の御息女レイチェル=エル=レドナクセラ様であられる!今日よりレドナクセラは解放される!」
カインとアベルが声を上げると、市民達の不安そうな顔から一変し、一斉にレイチェルを讃える声に変わる。
レドナクセラバンザーイ!
プリンセスレイチェルバンザーイ!
「なんだか照れるわね」
笑顔で手を振りながらレイチェルはそっと呟いた。
「よかったな、皆んな受け入れてくれて」
「うん、ありがとうマルス、皆んな」
だがまだ敵は城に残っている。
門が開かれると同時に生き延びた兵士達はこぞって城に逃げ込んだようだった。
「残すはレドナクセラ城ですな、マルス様」
「ああ、あまり時間をかけてはいられない。ガウシアン王国だってのんびり待っててはくれないだろうからな」
城の前まで行くとおそらくレドナクセラ帝都の領主と思われる人物が高見より声を張り上げてきた。
「し、城は明け渡す! だから、だから命だけは助けてくれ!」
今まで苦戦を強いられてきたマルス達から見るとあまりにあっけない結末となり、その判断を煽る様にワイプオールはマルスではなく、レイチェルの方に顔を向ける。レイチェルは頷くと顔をキッと引き締め答えた。
「ならば今すぐ投降してください。命の保証は私、レイチェル=エル=レドナクセラが保証します」
レイチェルがいつもと違って見える。やはり皇帝の血を引いているからなのだろうか、その声には威厳も感じられた気がする。
「私達はガウシアンとは違うの、命乞いをして来た者の命まで奪ったら彼らと一緒だから」
レイチェルは小さく呟いた。
城の門は直ぐに開かれ中に入れる様になると中に入ろうと進もうとすると、女将さんが不意に声を上げてくる。
「こいつは罠さね」
「え?だって今領主が城を明け渡すって言ったじゃない」
「そうだ、女将さん何をそんなに疑ってるんだ?」
「マルスもレイチェルもよく聞くさね。ここ帝都の領主を任された奴の名前はナーサイヴェルと言って、呼吸をする様に嘘を吐く最低の奴さね」
「なーさいゔぇええるぅうう!ブゥチィ殺すぅ」
過去に何かあったんだろうか?2人が怒りを露わにしていた。
と言うか旦那さん大丈夫か?
「なら…どうすればいいんだ?」
「油断しない様にするしかないさね。奴を絶対信じたらダメだよ!」
「明け渡すと言ったのだから、出てこさせればいいんじゃないのかしら?」
「いろいろ理由をつけてくるさね」
「女将さん、何だってそんなに詳しいんだ?」
そこでハァっとため息をつくと諦めた様に話しだす。
女将さん達がまだ冒険者現役の頃、仲間が大勢いて冒険者パーティと言うよりはむしろ組織に近かったそうだ。
霊峰攻略はもちろんの事、冒険者として各地で活動していたそうだ。それがナーサイヴェルが加わってから暫くして仲間が1人無残な殺され方をされて発見されたそうだ。所謂レイプされて殺されていたそうだ。それからしばらくするとまた同様の事件が起こり、組織に所属する女性達は怯え始め1人身の女性達は離れていくか、恋人を作り守ってもらう様になっていったらしい。だが、そうなると今度は同様の事件に加え恋人まで死んで発見される様になった。あれだけいた組織はみるみるうちに減って行き、女将さんの身に危険が迫った時初めて犯人がナーサイヴェルだったと分かった。
もちろん女将さんの反撃に遭いナーサイヴェルはそれ以来消息を絶ったそうだ。
そしてこれが原因で女将さん達が冒険者を引退した理由だった。
「彼奴は呼吸をするように嘘をつき、狂ったほどの好色家さね」
レイチェルがゾッとした顔をマルスに向ける。
「大丈夫だ、レイチェルは俺が守る。そう約束したんだ」
ハァっとため息をつくと女将さんはチラッと俺の方を見る。何故だろう…凄く嫌な予感がする。
そしてその予感は的中することになる。
本日3話目の更新です。
「わぁなーんか今までで1番ある意味危険そうな奴出てきたわね」
「そうなの?」
「セーラム、ああいう男は危険なの!絶対の絶対に注意しなくちゃダメなのよ」
「危険って何が?」
「だからぁ……」
「うひっ?」
「セーラム知ってて聞いてるわねぇぇ!」
「あはは、あたしの好きな人はサハラだも〜ん」
「さらっと何言ってるのよ!」
「レイチェルにはマルスいるからいいじゃん」
「そうだけど、なんかムカつく」
今晩もう1話更新できたらします。




