一騎討ち
時は戻りレドナクセラ帝都の前である。
マルス達の前に姿を見せたライレーブ率いる見事な隊列を見せる5000の兵に対し500程度。
圧倒的に不利に思われる状況にワイプオールは完全に戦意を喪失していた。
だが各パーティ事に纏まっているだけの冒険者達は違い、各々パーティで打ち合わせをしあっている。その顔はこれだけの兵力差を見て怯んでいるように見えるものは誰1人いない。
ライレーブが兵に命令を降し突撃してくると、冒険者達も各々防御魔法や攻撃補助の魔法を掛けて待ち受ける者達や初撃用の範囲攻撃魔法や弓を使い攻撃を開始し始めた。
「雷撃よ!反応を引き起こし駆け抜けろ!連鎖雷撃!」
「突き抜けろ雷!雷撃!」
「我が手より放たれよ!数多の火球よ流れる星のごとく降り注ぎ灰塵と化せ!流星群!」
「雹よ降り注げ!雪よ霙よ嵐となれ!氷嵐!」
様々な範囲攻撃魔法がガウシアン兵に飛んでいく。
旧レドナクセラ帝都のガウシアン兵には魔法を使う者がいないのか、魔法の直撃や矢を受けて次々と消し飛んで行く。少なくとも初撃の攻撃だけで1000ほどは打ち倒したであろう。
そして、範囲攻撃魔法が味方、いや仲間にも及ぼしてしまう範囲に来るとウィザード達は役割を終えたように次の対応に備え戦況を見据えたり、召喚魔法でオーガなどの魔物を呼び出したりして、接近戦に備えて今度は戦士達も身構え始めた。
後方でマルスと眺めるワイプオールは全く隊列も出来ていなければ戦い方もバラバラにも関わらず見事としか言えない戦術に驚いていた。
「なんだこのバラバラなはずなのに、マルス様が命令を出さなくても統制が取れている攻撃は!」
「ワイプオール、あれが冒険者だ。俺もそうだったからわかる。彼奴らはどんな相手であろうと狭い空間のダンジョンなんかで他の冒険者がいる中で戦ってきていて、邪魔や迷惑を掛けないように心がけながら戦ってきた。だから、命令なんかしなくたって阿吽の呼吸でお互いに邪魔にならないように戦える。
そして必要であれば強大で巨大な魔物相手にその日急に集まった冒険者達で挑むなんてのもザラだ。だから、慣れてんだよ」
「つ、つまりガウシアン兵は彼らから見れば大群の魔物としか見ていないと…」
「まぁ、そういうこった。さて俺もそろそろ…」
「マルス様は今や皇帝なんです。後ろに控えていてください」
「おいおい、ここで負けちまったらなんの意味もないんだ。それに…」
遠く控えるライレーブを見やる、
「あいつは俺がやる」
「ワイプオールさん、マルスがこう言ったら絶対に引かないわよ」
マルスだけではなく、レイチェルまで怯えるどころか負けると微塵も思っていない姿にワイプオールは驚きの連続だった。
白兵戦になると今度は前衛職である戦士達がその冴え渡る戦いぶりを見せる。押されることなくその場で戦い、後衛の神官が回復を掛け、召喚魔法を使ったウィザードは魔物をけしかけ、そうでないウィザードは身動きを封じたり対個人用の攻撃魔法を駆使している。そして姿を突然現したかと思えば手にしたダガーで容易く急所を攻撃するシーフもいる。
その戦いは4000の敵を相手に全く引けを取っていなかった。いや、既に500近くが更に倒れているだろう。
これにはワイプオールだけでなくライレーブもまた驚いていた。彼もまた軍人であり冒険者経験はない為、このような少数で烏合の衆にしか見えなかった連中相手にここまで圧倒的なまでに兵が減るとは微塵にも思っていなかった。
「撤退だ、兵を下げろ。これ以上の損失は出せん」
撤退の合図が出されると兵士達は一斉に引き返していく。
もちろんそのまま返すわけはなく追撃しようと数パーティが駈け出すが、ライレーブが戦車で向かってきた。
「冒険者風情が図にのるな!」
戦車の車輪に取り付けられている突き出した刃によって次々と足を切断される冒険者やライレーブ自身が振るう剣に斬られていく。その強さの前に冒険者達も強敵と判断するや、阿吽の呼吸でお互いのパーティに声をかけ始めた。
「怪我人が多いところは下がって回復に専念してくれ!」
「あの戦車の刃が邪魔だ。優先するぞ」
「戦車の上の奴、剣の腕前がマスター級以上あるから、マスター級に満たない者は近づくな!」
ライレーブはその光景を見て恐らく初めて戦場で恐怖した。たかが烏合の衆と思っていた冒険者達は颯爽自分を分析し、倒す算段の檄を飛ばし合っている。兵士であれば上からの命令があるまでその戦術に従うのが普通だ。
チッと舌打ちをすると戦車を翻し帝都に向かって撤退を始める。ライレーブにとって屈辱的な出来事となった。
だがーーー
「逃すな!」
「魔法で叩き落としてやれ!」
「魔法の矢よ敵を打て!魔法矢!」
「我が眼前の敵を爆せよ!火球!」
「突き抜けろ雷!雷撃!」
冒険者達も、冒険者達で言うところのボス魔物を逃すのは得策ではないと判断するや弓や魔法でライレーブを攻撃しだした。
ライレーブは慌ててマジックアイテムで魔法封鎖のコマンドワードを唱えようとしたが一歩遅かった。
冒険者達から離れた事が仇となり、戦車と軍馬ごと魔法で破壊されみっともなく地面に落ちてしまう。
すぐに立ち上がり、帝都の入り口と解放軍の距離を見比べ自分の撤退が間に合わないことを悟る。
魔法封鎖は発動させたのなら武であれば勝てる、そう考えたライレーブはユックリと解放軍に向かって歩き出した。
冒険者達は身構えライレーブを討つべく体制を整えた時だ。
「悪りぃみんな、コイツと一騎打ちをさせてくれないか?」
マルスが馬から降りて前線まで来ていた。
霊峰からきた冒険者達はマルスを皇帝などとは見ていないが、霊峰を攻略した凄腕冒険者と見ている。
「金竜に最も近いパーティのマルスの戦いが見れるなんてついてるぜ!」
そうだそうだと声が上がり、道を開けてくれる。マルスとその横をレイチェルが歩いて先頭に立つ。
「マルス、みんなが見てるんだから頑張ってよね?」
「わーかってるよ、おやじたちのかたきだし手加減無しでやってやる」
「じゃあ支援も無しで良いわね、ん?」
「任せておけ!こんなとこでおっ死んでたらサハラに謝れねぇしな」
レイチェルが頷くのを見てマルスは1人ライレーブの元に歩いていく。
「なぁ、あんた。俺の家族皆殺しにした落とし前、しっかりと取らしてもらうからな!」
「ふん、愚かだ。全員で掛かってくれば倒せたものをわざわざ大将自ら一騎討ちに来るとはな」
マルスがアルダを引き抜き、ライレーブが斬りかかってくる。とても早く重い一撃がマルスを襲ったが、マルスはその攻撃を予測していたかのように受け止めた。
「へぇ、俺ら全員で当たれば負けるって認めるのかよ」
返事はなく無言で更にライレーブが攻撃をしてくる。
マルスは自分の持つ剣、アルダの能力を実は感じ取っていた。この剣は城、世界という意味で名づけられており、敵の攻撃を剣で受けた時に衝撃を全て吸収してくれる。恐らくドラゴンの一撃であっても、剣で防いだ限り衝撃で吹っ飛ぶことは無いだろう。
「死ね」
ライレーブが一言そう言った瞬間、ライレーブの持つ剣が燃え上がり出し、更にありえないしなりを見せながら、さながら鞭のように振るってきた。
その刹那マルスは悟る。親父はこの一撃に負けたのかと。だがーーー
「親父と俺は違うぜ!」
もう一本の剣を引き抜きマルスは防御用にアルダで、そしてもう片方の手に握られた剣で鞭を振るうように大きく胸を広げているライレーブの胸をーーー
「うぅおおおぉらあぁぁぁ!」
ーーー刺し貫いた。
「な、何だと! 貴様、二刀流か!」
「奥の手ってのはそう簡単に見せないもんなんだぜ?
死の神の元に行って泣いて詫びてこい!」
ライレーブがその場に崩れ落ちていく。それをマルスは眺める。
静寂の後にマルスがアルダを高く掲げ、勝利宣言するように、
「敵将!ライレーブ討ち取ったぞ!」
ウオーーーーーー!!と解放軍から声が上がる。レイチェルがマルスの元に行き喜ぶ姿を見せ、また外壁の兵士達もライレーブが倒れた事で攻撃の手を止めていた。
「今こそ帝都を奪還する時だ!みんな…俺に…つ づ け ーーーー!」
声を上げ一斉に帝都の入り口を目指し、マルスを先頭に冒険者達と世界樹のエルフ達が走り出した。
この時誰も気がつかなかった。
ライレーブは虫の息ではあったが生きていて、マジックアイテムを使いその場から消え去っている事にーーー
コッソリ更新です。
「ライレーブって本っ当にしぶといわよね」
「きっと作者が好きなキャラなんじゃないか?」
そんなことはないです。
「厄介な相手だったぜ。またいずれあいつと戦うってのか」
わかりませんよ?
「むぅ」
ついでに今日は後ほどさらに更新します。
お楽しみに




