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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 死と薄まる団結
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セッターvsギャレット

試合当日明朝、俺は使い魔を飛ばして酒豪を求めてレジスタンスに助けを求める事にした。相手はドワーフ、しかも普通じゃない体格の持ち主である。並の酒豪では歯が立たないだろうと思っている。


そして昨晩は一悶着はあったが、すでに受けてしまったものは仕方がないで押し切ると、レイチェル達も立ち会うのを条件に許可がおりた。うーん…




何故かレイチェルの両親やシャリー達が余所余所しかったのは気になったが、朝食が済み次第ノーマ侯爵の館に向かう。


「ねぇ、なんか町中静かね」

「うんと、兵士も冒険者も町の人も少ない感じするの」

「なんかさ、俺、今凄く嫌な予感しかしないんだが…」



頭を押さえながら進んでいくと、人集りが徐々に出来始めお祭り騒ぎになっている。

広場まで来ると嫌な予感が的中することになる。


「なぁ、これって公開処刑の時を思い出すんだけど…」

「確かに…」

「誰か処刑されるの?」


そこへ兜をかぶったギャレットが俺たちを見つけ声をかけてきた。


「ギャ…っと、これは一体どういう事ですか?」

「昨日話した通り、公式に試合を行う為だよ。さぁこっちへ来たまえ」


エエエェェェェ!


そしてわけがわからないうちに試合会場とでも言うのか、引っ張りあげられる俺とセッター。レイチェル達も立ち会う為に舞台に上がり、控室のような場所へ連れて行かれた。

と言っても少し影になって見えにくくなっているだけだが…



「儂がノーマ侯爵であーーーーる!!

ヴァリュームの諸君今日はよく集まってくれた!

重大な話とは、今日これより儂に挑戦してきた者と闘い、もしも儂が負けたらヴァリュームはその者のものになるのである!」


ここで盛大にざわつく。中にはふざけるなとかそいつをとっちめろなどの罵声まで飛んでいる。


「静まれーーーーーーい!!

これは公式に引き受けた試合である!だが安心せい!儂が負ける事は万に一つとしてありえはせぬ!!」


そこで広場に集まっていた者達も一旦落ち着いたのか静かになった。


「まずは前哨戦として儂の近衛とその者の仲間が試合を行うのである!」




そこで初めて恐ろしいルールが説明される。

1つ、殺しは禁止

2つ、武器防具は使い慣れた物を許可する

3つ、3本勝負で1撃与えた方の勝ち


3本勝負は1本ごとに治療を行い、常に全力でやりあうと言う。


そんなの昨日全く聞いてないし!


「マスター、7つ星の剣を使うのはマズイですよね?」

「そうだなぁ。3本勝負だから1本目は使わないでやってみたらどうだ?」

「なるほど!分かりました」


ドラが鳴りだし反対の控えからギャレットが出てくる。兜は被ったままで腰から下げた剣は騎士時代に愛用していた剣のようだ。

観客から応援の声が一世に上がった。


ギャレットが出た後にセッターも立ち上がり向かおうとする。


「セッター。手加減はいらない。思いっきりお前の成長を見せてやれ」

「セッター頑張ってね!」

「がんばれ〜」

「セッターさんなら大丈夫です」


頷いてセッターは舞台に出た。




「お前の成長を見せて貰うぞ」

「ギャレット様、手加減はしません」


開始の合図のドラが鳴らされた。

最初に仕掛けたのはセッターで、ドラが鳴り次第抜刀すると斬りかかりにいく。見合う事なく攻撃してきたセッターにギャレットはすぐさま躱しこそしたが、1テンポ遅れたようだ。

おそらく見合う事なく攻撃して来ると思わなかったのだろう。

通常騎士であれば見合い、隙を窺って仕掛けに入るのだろうが、冒険者としても育ったセッターは魔物相手に躊躇は遅れにつながる為の攻撃だったが、騎士として育ったギャレットには驚かされる攻撃となったようだった。

守りから相手の動きを予測(プレディクション)で見切った上で戦う、防から攻が騎士としての戦い方らしいが、今のセッターは攻から防と攻を同時に行っている。


その隙をセッターも見逃すはずもなく、一気に攻め、足を払って相手の行動の選択が少なくなり読みやすくなる様に攻めているようだ。


騎士魔法の予測(プレディクション)というのはお互いに使っている場合は相殺に近い状態となる。その為騎士魔法を使う者同士が戦う場合は力量に左右される事になる。


そしてその最初の遅れの所為か1本目は呆気なくセッターが胴に攻撃を命中させ取ってしまった。

観客もその速さに声をあげる事も出来ず見入っていた様で、1本決まった時も何が起こったのかわからない者が多かった様に見える。


お互い控えに戻り、ギャレットは念のため傷の手当を受けている。


「やったね!セッター」

「おめでとうございます」


ギャレットに1本取れた事が嬉しかったのか、セッターの顔にも笑みが見える。


「セッター、次は7つ星の剣で勝ってこい」


一瞬セッターはえ?といった顔をしたが、すぐに分かりましたと言って、7つ星の剣を腰に吊るし直す。


「サハラなんで?」

「魔物を相手にしている俺たちに負けは死だって、旦那さんが言ってたろ?」

「ウンウン!パパ…サハラがいつもそれで死にかけてるもんね!」

「そう言えば……そうね」


あ、墓穴掘ったよーーー



2回戦目のドラの合図が鳴り舞台にセッターが向かう。



彼は後に【7つ星の騎士団】を結成し、7つ星騎士団評議会の最高議長となり、剣術、騎士魔法、そして強力な7つ星の剣を持って史上最強と讃えられ、名を世に知らしめることになる。



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