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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 死と薄まる団結
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ノーマ侯爵と条件

「まだ名前などは隠しているようだが、十分儂が納得できる答えは貰えたと思っておる」

「それでは!」


ノーマ侯爵は待てと言わんばかりに手を前に出し、目を瞑り考え込み出した。


時間にして5分ぐらいだろうか?とても長く感じたがやっとノーマ侯爵が目を開けると静かに口を開く。


「ギャレットよ、裏切らず儂に従う兵はどれぐらいいそうか?」

「はっ、侯爵は兵に厳しくはありますが、兵の心はつかんでいると思われます。恐らくヴァリュームの兵全員…大丈夫です」


そうかと頷く。

恐らく侯爵という立場にあるノーマがレフィクルに反旗をひるがえすのはやはり不安などがあるのだろうか。

確認は取ったがまだ返答を返して来ない。

だがーーー


「条件を提示させてもらう」


ノーマ侯爵は寝返る条件を3つ言ってきた。

1つはやはりくるだろうと予測してはいたが、俺と試合をし勝ち負けではなく本気の度合いを見させろと言ってきた。

そして2つ目はセッターとギャレットを試合をさせる事。これはギャレットが前々からノーマ侯爵にいつかサハラに育てられたセッターと勝負をしてみたいと話していた事らしい。この条件を言われた時セッターがハッとギャレットの顔を見た。

最後の3つ目、これは驚かせられる条件で侯爵との飲み比べで勝つ事と……


最後のが正直1番キツイな。というかドワーフ相手に飲み比べは無理ゲー過ぎる。しかも意味がわからない。


「あの最後の飲み比べは一体どういう理由でしょう?」

「意味はない!」


好んで酒を飲まない俺には無理ゲーな為、代理を立てても良いか聞くほかなかない。

すると意外な事にアッサリと許可が下りた。


「それでは儂とサハラ、ギャレットとその小姓の勝負は明日公式に行う」


それだけ言うと立ち上がり部屋を出ようとした為、俺は慌ててノーマに俺たちが負けた場合を聞いたが、ノーマはニヤリとさせただけでそのまま出て行ってしまった。


そして残された俺とセッター、それとギャレットだけになる。


「済まなかった。サハラが侯爵の命を狙っているなどという情報は最初から信じてはいなかったが、侯爵も最初は出所不明の噂など信じるに値しないと言っていたのだが、私の元従者のセッターが一緒だと分かると真意を確かめたいから引っ捕えてこいとね」

「きっと気を使ってくれたんですね。それにしても久しぶりです。それと、もっと肩身がせまい扱いを受けていると思ってましたよ」


6年前の公開処刑の後3人のレドナクセラの騎士は名誉を守ると死を選ぼうとしたそうだが、ノーマ侯爵の命を粗末にするな、名誉を守り死んだ事にして儂に仕えろと説得されたそうだ。3人はほぼ同じ任務を与えられ一緒に行動出来るように手配される事になり、最初こそ機会を伺って反逆をと思っていたそうだが、次第にノーマ侯爵の人柄、人望に打たれ名を捨て忠誠を誓う事を決めたそうだ。

騎士魔法も使え、実力もあった3人はすぐさまノーマ侯爵の側近となっていったのだそうだ。


そして話はセッターへと変わり、ギャレットがまるで自分の息子を相手するようにどうしてたとか強くなったかといろいろ尋ねているのを俺は黙って聞いていた。

セッターも懐かしむように話していて、俺といる時とはやはり違う雰囲気だ。



「ところで、明日は大丈夫かな?」

「試合ですか?まぁなんとかなるでしょう」

「これはまた随分自信のある言葉だ。だが気をつけたまえよ。ノーマ侯爵は強い。私もそれなりに自信はあったのだが…」

「やれるだけやりだけですよ」


そこでギャレットが良いかなと尋ねる。やはり気になっていたのだろうレドナクセラの重鎮が誰かを聞いてきた。ワイプオールだと言うとそれだけで納得した。


「ワイプオール様だったのか。それなら皇帝の忘形見も間違いないだろうね。

もしよかったら姫の名前を聞いても?」


さすがにまだこちらに着くか確定したわけじゃない。そこは断りを入れておく。

何しろその姫様は今このヴァリュームという敵の領地に来ているのだからーーー


ここで一旦話が途切れるとギャレットが立ち上がり、


「細かい事は明日次第という感じか。

セッター、明日は全力で来い!」

「はい」





ノーマ侯爵の館を出た俺たちは、条件のこともあり宿屋へ戻る事にした。



ーーーナンダコレハ

宿屋に入るとレイチェルは勿論の事、セーラムとオルまでもがせっせと働いていた。


「いらっしゃいませ〜ってサハラとセッターじゃない。あ、ちょうどよかったわ。ハイこれ付けてね」


そう言ってレイチェルが手渡してきたのはエプロンだ。


「エプロン?」

「早くつけて食堂の方手伝ってよね。凄い賑わいなのよ!」


わけがわからないまま俺とセッターはエプロンを付けると食堂へ向かうと、そこには満席客待ちの戦場と化していた。


「援軍到来2名様よ」

「少し楽になるよぉ〜」

「僕楽しいです」


えーと?偉い賑わいだけど一体これはどういう事だ?

奥から姿を見せたカイが俺を見つけると説明してくれる。どうやら料理のレシピを適当にこんな感じの料理はどうかなと使い魔を送っていたついでで偶に送っていたのだが、それが大当たりをしてしまい、客が夕飯時になると詰め寄せてくるのだそうだ。秘伝のレシピとして他所には教えない為なおここでしか食べられないと、並んでまで来るため夕方から日が変わるまでほぼ毎日この有様なのだそうだ。ちなみに神々からは特にお咎めは無かった…というよりも名を伏せ食いに来た神もいたそうだ。


それでレイチェルの父親があんなに応対になるわけか。


慣れない俺たちと違い毎日をレイチェルの母親とカイとシャリーでさばき切るのだそうだが、これでは寿命も縮みかねない。

そんな訳で居ても立っても居られなかったレイチェルが手伝いを申し出たのだが、これが更に火をつけてしまうことになる。

何しろ伝説的看板娘のレイチェルがいるのだ。下手すればヴァリュームの冒険者全員がこの店にきてるのではないだろうか。




「お…終わった…」


用意した具材が底を付き料理が全て終了したのは、いつもよりかなり早かった。

後は大丈夫との事でやっと解放された俺たちはヘトヘトになりながら個室すら未だに満席状態のため、宿の部屋に戻る事にしてやっと今日の事を伝えられた。そして第一声が…



「ちょっと!なんでそんな大切な事早く言わないのよ!」


やれやれだぜーーー




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