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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 死と薄まる団結
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ノーマ侯爵とサハラ

侯爵の館に連れて行かれると牢屋に入れられるでもなく、縄を解かれ応接室とでもいうような場所に連れて行かれた。


「間も無く侯爵が来るので誤解されるような事はしないで待っていてほしい」


それだけ言うとギャレットは出て行く。部屋には俺とセッターしか居らず、見張りの兵すら置いて行かなかった。


「逃げようと思えば…逃げれるな」

「逃げたら認めたことになりますよ」

「分かってる。それにこれはこれでこっちにしてみれば好都合かもしれないな」

「しかし賭けになります。可能性があるかの確認も取れてませんから…」


ギャレットのことだろう。確かにノーマ侯爵が寝返ってくれる可能性はあるかどうかも聞けていない。

最悪は逃走する以外なくなるし、その後のレジスタンスの戦略に迷惑をかけかねない。


「言うんですか?」

「迷ってる。確かに絶好の機会だとは思う。けど、それ以上にこのお膳立てされたような状況が怪しくも思ってる」

「シャリーさんですね。本当に何者なんでしょうかね」




そこへドスドスと地響きのような足音が聞こえてくる。そしてドアがドカーンと豪快に開かれると屈まないと入れないぐらいの巨漢のドワーフ、ノーマ侯爵が姿を見せ後にギャレットが続いた。


以前も思ったがドワーフの常識を覆す体格だなぁ。最初ドワーフだと知った時は目を疑ったもんだ。


「儂がノーマ侯爵であーーーーーる!!」


いや分かってるし声がデカイ。

侯爵はフムと俺とセッターを見ながらどかーっとソファに腰を下ろした。


「久しい顔だな。確か此奴の小姓だったな」

「は、はい。覚えていてもらえるとは光栄です」


そして隣にいる俺を見つめ首を傾げている。ギャレットがそこで俺を紹介と言うか、例の侯爵の命を狙っている者だと話す。

ノーマはそれを聞いて、ガハハハハと豪快に一頻り笑うと真面目な顔になり本気かと尋ねてくる。


ここで俺の頭の中ではゲームのように幾つかの選択肢が出て、どれかを選ばないといけない状況になっていた。


「どうしたサハラとやら、是非をすぐに答えられない理由でもあるのか?」



ノーマ侯爵から視線をそらし、過去を思い出すかのように顔を上げその首を晒すようにしながら目を瞑り、思ったこと感じたことを言うだけ言ってみる事にする。


6年前ノーマ侯爵が領主になった時のギャレット達に対する処遇、そしてその後兵達には厳しいが民には優しく催し事などもしてくれて、民より自分の命を優先しようとした前の領主と変わって良かったとすら思ったことを嘘偽りなく正直に話す。


そこでチラッとノーマ侯爵を見たが、真剣に俺の言葉を聞いている。


続けて1年前ヴァリュームの町を出て旅をしヴィロームの町での税率と名前は伏せてキリシュ達冒険者が町を出る時の徴収の額の大きさでの所まで話したところで、


「待てえええええぇぇい!!」


部屋中、いや外にまで漏れるぐらいの大音量の声で話を止めてくる。思わず俺もセッターもギャレットまでもが耳を塞いだほどだ。


「その話嘘は…言ってないな。

確かに一気に領土が広がり税収を上げなければならない状況なのは確かである。だがな、過度なやり方は民の反感を受けるだけになろう。国王陛下は知らないのであろうか…。

話を折った続けよ」


ヴィロームの町を出てヴェニデの町に移動し、そこで国王レフィクルが各地の神殿を破壊して己の神殿を作っていることを話したところでまたノーマ侯爵が口を挟んできた。

さすがに神殿を破壊には驚きを隠せず、国王陛下は一体何を考えておられるのかと呟く。


「噂では王自らの神格化を目論んでいるのではと聞きました」


それを聞くとさすがに驚いたのか、まさか国王陛下は神に挑むおつもりかと、その言葉で少しだけ期待が持てそうだと思ってしまう。

そしてそこで王が姿を見せたことを話し、王が町を去る際の民の異様な光景を話したところで、ノーマ侯爵はムゥウウウと唸り声をあげた。


そのまま黙ったためその後霊峰の町まで行った事までをだいぶ端折りながら話をした。


「フム、お前が儂の命を狙う理由が全くないのは分かった」


俺には意味がわからず不思議そうな顔を向けると、命を狙うなどという事を考える暇があったとは思えないと。むしろそんな事よりも、


「何故国王陛下はヴェニデまで来てヴァリュームまで訪れてはくれなかったのだろうか。

それと平和な世を作ると言ったのは嘘だったのだろうか…」


ブツブツ呟くノーマ侯爵を俺とセッターはただ眺めていた。ギャレットは口こそ挟まないが、眉間に皺を寄せ口からはギリギリと音を立てていた。


「それで?お前は何故ヴァリュームに戻ったのだ。お前の話を聞いている限りでは冒険者を辞めて戻ったとは到底思えぬ。

巷で聞くレジスタンスにでも加わったか?そして儂の命を狙った、それなら辻褄もあう」



そこですぐさまレジスタンス?何それ的な事を言ったが、意外に賢いこのドワーフには通じなかった。


「儂の命を狙ったのでなければ真意を言え」


セッターを見る。覚悟を決めた顔でうなずき返した。

意を決して俺はノーマ侯爵に反旗を翻してほしい。その為にヴァリュームに戻ったとレジスタンスの事は伏せて言った。


だが返事は無情にもNOだったーーー



「お前はまだ全てを話していない。もし儂を動かしたければ全力でぶつかって心を震わせるだけのことを言ってみよ!」


ノーマ侯爵を信用するなら全てを話し味方に引き込めるのかもしれないが、もしこれが嘘なら俺はレジスタンス全員を裏切り、敵に情報を与えて全てを台無しにしたことになる。

セッターをみれば同じように悩んでいるようにみえる。



「サハラ、侯爵を信用出来ないのか?まさか信用出来ない者に反旗を翻してもらい、利用でもするつもりだったとでも言うのかい?」


今までずっと黙っていたギャレットがそっと口を開いた。


「分かりました。それでは俺も覚悟を持って話します」


ノーマ侯爵は敵方の者でしかも侯爵だが、ギャレットは元とはいえレドナクセラの騎士であり、俺を友と言ってくれている。

信じるしかなかった。


全てを話すとまで言わないが、レジスタンスが帝都奪還しレドナクセラを復活させガウシアン王国と決戦を挑む事を話し、その為にも後方の憂いであるヴァリューム、ヴィローム、ヴェニデ、ヴォルフを一気に纏める必要があった事。そして俺の思いつきでノーマ侯爵なら説得できるかもしれないと、俺がレジスタンスとは無関係を装って説得しに今回ヴァリュームに戻ったとそこまで話したところで、ノーマ侯爵が口を挟んできた。


「幾つか聞きたい。レドナクセラの血は滅びたはずではなかったのか。それとなぜ儂を説得出来ると思ったのか。最後に何故そこまでするのか。全て答えよ」

「はい…」


まずはレドナクセラの血筋はレイチェルの名は伏せ、忘形見の皇女がレジスタンスにいる事を話す。驚きながらもギャレットが証明出来る物でもあるのか聞いてきた為、レドナクセラ帝国で重鎮だった人物により、証明できる痣と証となる指輪を持っていた事で間違いないと聞いた事を言うと嬉しそうな顔を一瞬だけ見せた。

次にノーマ侯爵の説得だが、これはギャレットの処遇と5年間見てきて民を思いやる領主だった事と個人的に声はデカいが人情に厚い人物だと思っ他事を言うと、買いかぶりすぎだと気持ち悪い照れ顔をしながらノーマ侯爵が言う。

そして最後、これはレジスタンスにいる神の代行者にレフィクルを倒さなければ大洪水を起こして全てを洗い流すと言われた為だと話した。



全てを話した俺は後は運に任せるだけになった。




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