リリス
今回の更新で第5章終わりまで持っていく予定です。
前を歩く男は無視してるが、キャスの行く先も全く同じ方向だった。途中キャスが魔力感知を使っていたのは気がついた。そしてその後突然誤ったかと思えば面倒なことになりそうと。
「サハラ!空が!」
「ん、奴じゃないよ」
太陽が雲で覆われ辺りは暗くなって、さらにしばらく進むと霧が出てきた。
精霊力は感じる為レフィクルではない。変えようと思えば天候を変えられるが、キャスに止められてしまった。
「着きましたぞ!」
俺たちの目の前に霧に包まれた古びた洋館がーー
「よし!帰るぞ!」
あれはダメだ。絶対に出る。霧がまた良い演出してやがる。
「サハラってもしかしてこの手の苦手なんだ?」
クククッと笑いながらキャスが言う。
そんなの関係ねー!どうとでも思いやがれ!
「どうされましたかな?早く入ってくだされ。御主人様がお待ちですぞ」
くそっ、知るかよ!
「ーーなぁ、ここ。俺のーーいや、ボーロ家の別荘だわ」
はい?
マルス曰く、あまり使われないがボーロ家所有の別荘で、数年に一度程度利用していたんだそうだ。なんであまり利用しないのか疑問に思いマルスが父親に聞いたことがあったそうだが、なんでもマルスの祖父の頃ぐらいより奇妙な音や光を見ただ聞いただと使用人達が怖がる事からだそうだ。そこまで話すとキャスがバツが悪そうな顔をした。
「ごめん、それたぶん僕だ」
「キャスが原因だったかーー」
「いや〜、町からもそんなに離れてなくて滅多に住人も来ないからちょうどいいかなぁなんてね〜あはははは………ごめん」
さすがにキャスも申し訳なさそうに言い訳を始める。
当のマルスは別に気にしているそぶりもなく、ここ来んの久しぶりだなぁとか言うと、ボーロ家所有の別荘に無断で住んでいる奴は追っ払わないといけないなとマルスは洋館に向かい、俺たちもそれに続いた。
なんだかこんがらがってきたなーーー
洋館の中に入ると中は真っ暗…ではなく、ろうそくの明かりで煌々と明るかった。大きなホールになっていて男は右隣にある扉を開けて頭を下げた。
通れということだろう。
扉をくぐるとこれまた明るく、大きな広いダイニングルームがあり、そして1番奥に1人の女性が座ってーー
いや俺たちが入るなり、立ち上がり人間離れした速度で走ってくる。とっさに身構えるが間に合わず俺の横にいたマルスがその突進を受けた。いや、抱きついていた。そしてーー
「お兄様!」
お、おにぃさま〜⁉︎マルス以外の仲間が声を上げて見つめる。マルスよりだいぶ年が離れていそうな20歳行くかどうか、マルス同様整った顔立ちだがちょっと気が強そうな雰囲気がある。
「誰が勝手に住み着いてるかと思ったら、お前だったのか。
あぁ悪りぃ、コイツ俺の妹のリリスだ」
「初めましてリリス=ボーロと申しますーーってカインとアベル随分雰囲気が変わりましたわね?お兄様も苦労なされたのか、すっかり禿げ散らかされて…それよりそこのロリ、キュート、ビューティはまさか…」
「違う違ういろいろ違う!まずは落ち着け。それに俺は禿げてない。禿げ散らかすとか言うな」
違うと言われたリリスはブツブツとレイチェル、セーラム、エラウェラリエルをじっと見つめーーー
「お兄様の女性の守備範囲、広すぎますわ!」
「だから違うって言ってるだろうが!お互い順を追って説明からだ。まずはそっちの事を話してくれ」
「仕方ありませんわねーー」
なんとか落ち着き、テーブルの席に着くとお兄様だけを見つめてリリスが説明し始める。俺らは全く眼中にない。
ガウシアン王国がレドナクセラを奪った後トラキアル王国にも攻め入ってきた。
あまりに強大な力で話にもならず国王はアッサリと降伏。ところがすぐに伝達が通らなかったボーロ家などの貴族達は戦いを止めることなく抵抗し続けていた。
その頃マルスはと言えば、側近だったカインとアベルを引き連れボーロ領を離れて、オーク進軍でレドナクセラから逃げてきた少数の騎士と民を誘導していて全く気がつかなかったそうだ。
結果、その間にトラキアル王国は亡くなり、マルスの家族は生存不明。ただ家族を連れて撤退する姿を見たと聞いていたことと、武で成り上がりトラキアルにボーロありとまで言われていたボーロ家だけに死んでることはないだろうなと思っていたそうだ。
だが実際には圧倒的な戦力差から大敗をし、仕方なく生き残った僅かな手勢と家族を連れて隠し通路から脱出を図ったそうだがーーー
「その時にあいつが待ち伏せしていたんですの!」
そこでドン!とテーブルを叩きつけ怒りをあらわにする。
うん、物や人に当たっちゃダメだよね。
隠し通路を抜けたところにたった1人待ち伏せをしていたという。その者はライレーブと最初に名乗ったそうだ。容姿は美しくそして動作は優雅で権威に満ちていたそうだ。ライレーブはたった一言『降伏か自害せよ』と。もちろんどちらも受けいられるはずもなく、またたった1人と油断もあったのだろう。「断る!」と一言、たった一言言った直後に「なら死ね」と…あっという間に兵士は焼き殺された。さすがに相手を見誤ったとボーロ男爵は妻と娘を逃がす為、囮となって立ち向かうのだが、逃げる猶予もなくたった一刀で斬り殺されたのだそうだ。次いで母親が斬り殺され、そしてリリスに向かって剣を突き立てた………それがその時にリリスが見た最後の光景だったそうだ。
「そうか…親父もお袋も殺られたのか…
なぁ、ならなんでお前生きてんだ?」
「続きがありますの…」
次に意識が戻った時は見知らぬ男に抱きかかえられていたそうだ。はっきりしない今にも意識を失いそうな状態のなか、その男はリリスにこう言った。「お前はもうじき死ぬ。救うことはできない。だが、望むのであれば助けてやろう」と。
自分でも驚くほどか細い声で意味がわからないと伝えると、「死の神の元に行けばお前の意識はそこで終わる、魂を捨て永遠の闇の住人となればこの世にとどまれる。考える時間は少ないぞ」とーー
「私はお兄様にこの事をお伝えしなくてはと…」
リリスはその男にお願いをしてしまったそうだ。「分かった」と男はリリスの首筋に歯を突き立てて血を吸われたところでまた意識を失った。
次に目が覚めたのは闇夜で、今まで夜は暗く怖かったはずが、今は心地よく辺りは見渡せ神秘に満ちた風景に変わっていた。男の姿は既になくリリスは1人この別荘である洋館まで文字通り飛んできたそうだ。
「つまり、お前はヴァンパイアになっちまったってのか」
「ゴメンなさいお兄様。間違いだと分かっています。でも伝えたい一心でしたの!」
マルスは顔を歪めたがーー
「まぁなっちまったもんはしょうがないな」
マジかよ。妹がヴァンパイアになったっていうのにしょうがないで済ませんのか?
マルスは、アンデッドになったがこうやって会って家族がどうなったかの話が聞けた。リリスのお陰だと、そのリリスの決断は買ってやらなきゃダメだろうと…
で、気になる執事の男だが、別荘に勝手に住み着いていた奴らしい。日中外に出られない為、魅了で下僕にして下働きをさせているそうだが、口の利き方がムカつく為、爪で切り刻むんだそうだーー
その気持ちよく分かるわ…
「なぁ、なんで霊峰の町で強い冒険者を連れてこようとしたんだ?」
「そんなの決まっていますわ。強い冒険者といえばお兄様しかいないですもの!」
おいおい…




