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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第1章 旧帝都を目指して
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暗雲

2時間ほど遅れて、キリシュ達がやっと俺たちが待っている場所に到着した。

待っている間に相談して、始原の魔術の事は出来るだけ秘密にした方がいいだろうとなった。

また魔法についても聞かれたが、バルロッサの事を言うわけにいかず、適当にルースミアに教わっていた事にしておいた。



「お待たせしました。ズィーの提案で兵士が交代するまで待ってから出てきたんで遅くなっちゃいました」


うーん…そういう細かいところに気づくズィーみたいな人はウチにいないから羨ましいな。


俺たちとキリシュ達で10人、結構な大人数で街道を歩いて特に何かと遭遇することなく野営地点にたどり着いた。

道中の会話はキリシュ達のヴィロームでの苦労話で大半を占めていた。


翌日には俺の使い魔のツバメが帰ってきて、ヴァリュームは変わりないということだった。




2日経ちヴェニデに今日は到着する予定だったが、ここで思いもよらないことが起こった。


「あれ?雨…」

「雨がどうかしました?」


キリシュ達は知らないが、俺は始原の魔術を使って旅路の際は常に晴天にしていた。俺の仲間レイチェル、セッター、セーラムはそれに気がついた様だが、知らないキリシュは首を傾げていた。



「嫌な予感がしますね、マスター」

「な〜にをたかが雨ごときで気にしとるんじゃ?」

「ヴァリュームを出てから晴天続きだったから嫌な前触れに感じるだけです」


俺ではなくボルゾイから返事があったため、セッターが慌ててごまかす様に答えていた。


確かにこの雨は異常だ。なにせ俺がこっそりと精霊に呼びかけても反応を示してくれない。


他に始原の魔術が仮に使える人物がいたとしても、【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者である俺の方が有利になるはずだし、何よりも精霊が反応を示さないのはありえない。

精霊力がないというのは、つまり不自然な状態という事だ。



とりあえずどうにもならない以上、俺たちはヴェニデに急ぐことにするが、町に近づくにつれ空は暗雲に包まれ、冷たい雨がシトシトと降り続いた。



ヴェニデの町の入り口で冒険者証を提示して町中に入る際に、入口の兵士にお前らは運が良いと言われた。何が運が良いのか聞いてみるとちょうどガウシアン王国国王レフィクルが視察に自ら来ていると言う、至極どうでもいいことだった。


その後ズィーに連れられ足早に宿屋に駆け込んだ。


「ヴィロームほど荒らされなかったのか、街並みが変わってなくて助かったぜ」


ヴィロームは拠点にされたためか、かなり破壊されたりしていたせいで、復興が始まると元あった様にはいかないで町はほとんど作り直しだったらしい。


そうなるとヴォルフと元帝都もあまり変わってないのかもしれない。たった1日だけど帝都は行ったことがあるから少しだけ期待が持てそうだ。



キリシュ達は部屋が決まると早速冒険者ギルドに向かって行った。


俺たちは宿に残り、部屋でこの天候について話し合うことにした。


「この天候、始原の魔術で変えられないんだ。しかも精霊が応じないのが気になる」


始原の魔術には2通りの使い方があり、1つが精霊達に命じて力を行使する方法で、もちろん精霊力が働いていないと使えない。もう1つは5年前にオークの軍団相手に使った、俺の想像による自然現象だ。こちらは強制的に引き起こすため、精霊力を必要とはしないが、想像次第で威力も変わるため扱いが難しい。



「あたしもなんか嫌な感じがするの」


ハイエルフだからなのかセーラムも何かを感じ取っているのかな?後でエラウェラリエルにも聞いてみよう。


「マスターがそう言うのなら何かあるのかもしれませんね」

「レイチェルは【愛と美の神アーティドロファ】の寵愛を受けてるんだから、何か気がついたりって言うのはないのかな?」

「う〜ん、寵愛を受けてるって言っても神さまと交信できたりするわけじゃないのよ?」


そうだった。神殿で信仰心を示したりすることで普通は神に力を借りれるのが、寵愛を受けてる場合そう言うの関係なく神の力を借りれるんだったな。


そうなると当然、俺もスネイヴィルスに交信とかは出来ないから、まだ残っているなら帝都に着いたら創造神の神殿に行ってみるか。




ノックが聞こえ出てみるとキリシュだった。冒険者ギルドから戻ってきたようで、話があると6人全員がゾロゾロと入ってきた。


「ここの冒険者ギルドで依頼を見てきたんだけど、妙な依頼が多いんです」


なんでも討伐する依頼がほとんどなく、調査の依頼ばかりだそうで、ズィーもシーフギルドに行ってみたそうだが冒険者ギルドで見た仕事の依頼に関する情報は入手出来なかったそうだ。

そのため一旦仕事を引き受けることなく戻ってきて、俺らにも話を聞いてもらおうということだった。


「調査の依頼ならこの町の近辺なら調べるだけでいいから、危険も少なくて割がいいんじゃないかな?」

「そう思うだろ?ところがだ、調査しに行った他の冒険者は皆んな違約金支払ってでも辞めてるそうだ。しかも調査の場所がこの街中にも関わらずだ。

辞退しなかった冒険者はみんな死ぬか、気が触れたのか別人みたいになるらしくてな、シーフギルドでも危害がない以上ノータッチらしい」


気が触れるって、SANチェックかよ。何処ぞの神話の神でも出てきたってのか?


「ただの調査で気が触れるとは一体どういうことでしょうねマスター」

「う〜ん、なんか異形の者でもいたとかか?

そうだ1つエラウェラリエルさんに聞きたいことがあるんだけど…」

「今後はウェラって呼んでもらってかまわないですよ」

「あ、うん。でウェラ…はこの町に入ってから何か気になる事あるかな?

セーラムが嫌な感じがするって言うんだ」

「そうねぇ…ハイエルフは(よこしま)な気配に敏感らしいけれど、私たちエルフはそこまでの感覚はないので分からないわ。ごめんなさい」

「いや、別にいいんだ。たださ、神聖魔法でその気が触れた人は治せないの?」


その疑問はボルゾイによって一蹴された。そんな神聖魔法はないとの事だ。



とりあえず、今日は休んで明日個人的に調べてみるのはどうだろうと持ちかけたが、狂王が居るならこの町を一刻も早く出たいとレイチェルが騒ぎ出した。それにセッターも同意していた。


「それなら国王は明日には王都の方に戻るらしいから、むしろここに留まった方がいいな」

「ならサハラ、明日は国王が町を出るまで私は宿から出ないわよ」




ズィーの情報を聞いたレイチェルは引きこもり宣言をした。





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