仇
死の町を町娘に憑依されたまま出た俺たちは今、旧トラキアル王国の王都を目指して歩いている。
日が落ちて辺りは暗く月明かりのみの暗い道なき道を進んでいく。
「何も真夜中に出なくても良かったんじゃないかね?リーダー」
「長居は町長と息子に見つかる危険もあると判断しました」
そう、マルスが指名した新しいリーダーはセッター。この戦いが終わった時にセッターは7つ星の騎士団を築き、そして導く1人になると言っていた。
マルスはそれを覚えていたようで、指名した時もセッターが断れないように騎士団の事を口にして指名した。
さすがにそれで断るわけにもいかず、セッターも大人しく従い、このパーティのリーダーをする事になる。
セッターは戦う必要もない町長と息子は放っておく事にし、目的を優先した。
先頭をセッターが1人で歩き、次いで俺が歩き、その横に町娘が浮遊しながら憑いてくる。
その光景を面白そうにレイチェルとセーラムが後から見るように歩き、珍しくセレヴェリヴェンとエラウェラリエルが並んで歩いていて、殿にマルスとなっている。
ゴーストである町娘は夜中ごろから姿を見せ、浮遊しないで半透明でなければ笑顔を浮かべた普通の美女にしか見えないのだが、浮遊して半透明な時点で十分異常だ。
「これで喋れたら色々聞けたし、サハラもお友達が増えたのにね」
「やめてくれ!幽霊と友達になんかなりたくな…あ…」
真横にいるのを思い出し、町娘の方を見ると良いんですと言わんばかりに首を振りながら俺たちの会話を聞いているようだ。
「でも同じ女性から見ても美人よねぇ。王子様が一目惚れするのもわかるわ」
「そうだな、すごく美人だと思う…」
後方より殺気のようなものを感じた気がする。俺は慌てて言い訳の言葉を考えるが、とっさに出てくるものじゃない。
「仕方がないですよ。ゴーストになると生前にも増して魅力的に見えるそうですからね」
「なぁ、それって生前は今より劣るって言ってるようなもんじゃないか?」
ハッとなってセレヴェリヴェンも黙り込んだ。
口を開けば開くほどドツボにはまりそうだと思った男性陣はこれ以降余計な口を開くのを止めて大人しくなった。
ただ1人セッターを除いては。
「マスター、魔物です。数からして恐らくあのヒルジャイアントでしょう」
「なんだよあいつら、ずっと待ってたっていうのか?」
「ウェラ、魔法は?」
「一応戦う事を想定した魔法は用意しています」
セッターは迷う事なく戦う事を選び、このまま追跡され続ける危険性を避ける事にしたようだ。
しかも、マルス同様始原の魔術は頼らないで倒すという。どんだけチート扱いされるんだ。
作戦はこうだ。
俺たちは何が何でも接近戦に持ち込むしかないため、その方法はエラウェラリエルの不可視球体の魔法が頼みとなる。
接近戦に持ち込み次第後は戦うのみだが、お姉ちゃんは私が守るよと言うセーラムを信じて、レイチェルとエラウェラリエルは防御に徹してもらい、距離をとろうとした相手をセレヴェリヴェンの弓とエラウェラリエルの魔法で対処してもらうというものだ。
「不可視球体ではダイアウルフに匂いで見つかりますよ」
「大丈夫です。そちらの娘さんのおかげで、先程から気づいていておかしくないのに近寄ろうとしません」
「なるほどね、野生ではなくともやはりゴーストと言う非生命体を恐れる…か」
「はい。ですが別に娘さんが居なくても問題はありません。私が引きつければ良いだけなので」
「それじゃあセッターが集中砲火を受ける事になるじゃない!」
「今は私がリーダーなのですから従ってください」
「ハハ…俺、人選間違ったかな…」
「者、物を視界より消し去る球体よ、我が中心に現れよ!不可視球体」
セッターを除く仲間全員の姿が不可視の状態になり移動を開始する。セッターは俺たちの姿は見えないが感知で位置を把握しているようで、俺たちが投石の的にならない程度に距離を保って移動している。
ヒルジャイアント達がセッターに気がつくと前回同様岩を拾い投げつけ始め、10個ほどの岩が飛んでくるとセッターは防壁、予測、念動力を駆使して岩を破壊、回避しつつ徐々に近寄っていく。
凄いな。というかかっこいいな。っとそんな事言ってる場合じゃない。早く接敵して攻撃しないとセッターがいつまでも回避し続けられるとは限らない。
肝心のヒルジャイアントが連れるダイアウルフはゴーストの町娘のおかげで逃げ出してくれた。
「っらぁぁ!」
間合いに入るとマルスが飛び出し、目の前のヒルジャイアントに斬りかかりに行った。
俺も予測を使ってから側にいたヒルジャイアントに攻撃をする。
「我幻影の複製、幻像よ敵の目をあざむけ!鏡像!」
なるほどエラウェラリエルは鏡像を用意していたのか。
エラウェラリエルの姿が5人に見え、どれも同じ動きをする為本物との見分けがつかない。所謂分身の術だな。
「【愛と美の神アーティドロファ】様、皆んなを祝福して」
ぐ…これか…強制的にやる気出てきちゃうんだよな!やってやるあぁぁ!
「マナよ、あたしを守る鎧となり、打ち破る鉾を紡ぎ出すの!」
おおお!セーラムが鎧と槍を紡いだ!いつの間にか2種類いけるようになったのか。
しかし…キンキラってどうかと思うぞ…
マルスの腕とその持つ剣の力はすさましく、ヒルジャイアントを初撃の一撃で袈裟斬りで斬り伏せ、既に2匹目を攻撃し始めていた。
そして気がつくといつの間にか7つ星の剣を白く輝かせたセッターも来ていて、マルス同様1匹を既に倒し2匹目を相手している。
そして俺はと言うと、杖術が通用しないヒルジャイアントに大した打撃も与えられず、未だ1匹目のヒルジャイアントを回避しながらポカポカ殴っている情けない状態だった。
「パパ交代なの!」
セーラムが槍で突きを入れながら割って入ってきた。
…。
「レイチェル、ウェラ、守るよ…」
「う、うん」
「た、助かります」
マルスとセッター、そしてセーラムとセレヴェリヴェンによって数がどんどん減っていくと、生き残ったヒルジャイアント達が一斉に逃げ出し始めるがセレヴェリヴェンの弓から放たれる矢が容赦なく打ち込まれ、エラウェラリエルの範囲魔法の火球がヒルジャイアントを焼き尽くす。
そして…
「パパの仇!連鎖雷撃!」
バラバラに逃げ出そうとしたヒルジャイアント達を電撃が折れ曲りながら突き抜けていくとパタパタとヒルジャイアント達は倒れていった。
セーラム、俺、死んでないから…
セーラムはあまり話に出てきませんが、確実に強くなっている様です。
ステータス的には
セーラム
種族 ハイエルフ
年齢 15
信仰神 無し
ストレングス 10
インテリジェンス 18
ウィズダム 11
コンスティテューション 10
デクスタリティ 15
カリスマ 17
スキル(1〜120)
槍術 54
盾術 62
ソーサラー 120伝説級
所持品
リングオブマナ(アーティファクト)
こんなところでしょうか?
ついでにレイチェルさん
レイチェル
種族 人間
年齢23歳 だったかな?
信仰神 愛と美の神
ストレングス 7
インテリジェンス 12
ウィズダム 17
コンスティテューション 11
デクスタリティ 8
カリスマ 18
スキル(1〜120)
盾術 37
神聖魔法 120伝説級
所持品
守りのローブ(斬り裂きと炎と冷気に対して超防御力だが、それ以外はマイナス効果)
こんな感じとなっています。




