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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 霊峰竜角山への道程
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コックリさん

お待たせしました。

と言っても今週は3話更新です。

パシッ!パシッ!


数度ラップ現象の音が聞こえる。おれに憑依しているのだからイヤでも話は聞いていたはずだ。


「どうするのよマルス、あなたの責任よ」

「こうなったらその娘さんを成仏させるしかないな」

「どうやってよ」


結局古いお伽のような話のため情報も少なく、成仏させる方法まで至ることはなかった。


「ゴーストだって会話ぐらいできるだろ。直接聞いてみるってのはどうだ?」

「それが可能なら苦労しないだろ」

「…。

おい、娘さんよ。あんたはどうして欲しいんだ?」

「そんなので答えるか!どアホ!」

『…を…すく…』

「「こ、答えたー!!」」


だが残念な事に非常に聞き取りにくく、何を言っているのか分からない。何度も尋ねそれに答えているようだが、どうしても聞き取れないままだ。


「聞き取れませんね。なんとかをすくなんたらですか…」

「こりゃあお手上げだなぁ」


これでゴーストとペラペラ会話出来たりでもしたら、それはそれで漫画かアニメだよな。

何か他に手は無いか……そうか、この手があったか。

俺は羊皮紙を一枚取り出すと、中央にYesとNo。周りに男、女、0〜9までの数字、五十音表をこの世界に当る言葉で書き、そして金貨を一枚用意する。

そう、コックリさんだ。


「これで聞こう。都合のいい事に俺に憑依しているんだから、俺がコインを指で押さえておけば自由に動かせるだろ」

「そんな方法に気がつくとは、さすがはマスター!」

「成る程!初めて見ましたが上手い方法ですね」


う…知られてない方法だったのか。創造神に怒られなきゃいいが…


「と、取り敢えず名前だ。名前を聞こう。

えーと、娘さん名前を教えてください」


俺はコインに指を当てて返事を待つが動かされることはなく、何事も起こらずに時間だけが過ぎていった。


「なぁ、まさかと思うけどさ」

「私もなんとなく気がつきました」

「???」


そうか!このゴーストは町娘だった。

平民だから会話は出来ても、読み書きまで出来なかったのか。

それならと質問を変え、YesとNoだけで答えてもらえるものに変えて聞いて行く事になった。

YesかNoだけだと聞き方も此方が推測しながら聞くしかないためとにかく時間がかかり、気がつけば日が落ち始める時間になってきた。



ここまでかかってわかった事といえば、まずどうやら俺を王子と勘違いしているわけではなく、此方が勘違いしていた事にちょっと怒ったそうだ。

また町の呪い…惨劇は町娘がやったのではなく、町長とその息子だった。王子は最初の町長の息子と町長を殺したまでらしい。

つまり町を死の町に変えたのは町長とその息子で、今も王子を探して彷徨いているそうだが、肝心の王子が見つからないようだ。



「そりゃそうだろ。王子の遺体は王国に戻して手厚く葬られたんだろうからな」

「でも、そうすると王子様が町長とその息子をゴーストになって殺すのは難しいんじゃないのかしら?」

「ハハハハハ…そんな事決まってますよ…生前に大切にしていたアイテムを残してあったから場所がわかったのでしょう」

「あぁ、マスターの指にある指輪ですね」


ガーン…。


「そして、王子は目的を果たし成仏してしまっているといったところでしょうね」


おお?指が勝手に動き出してNoで止まった。


「セレヴェリヴェンさん、どうやら違うみたいですよ」

「となると王子はまだ成仏していない。そんで町長とその息子も成仏していないでゴーストになったという事か?」


Yesに動きNoに移った。どういう事だ?

もう一度確認してみると、王子の時はYesで町長とその息子が成仏していないまでYesでゴーストの時にNoに変わった。


「つまり町長と息子はゴーストじゃないって事か」

「ゴースト程ではないとなると、恨みはあるという事はスペクター辺りでしょうか?」


Yesに動いた。

スペクターか…ゴーストとは違って…



スペクターは太陽光と生者を憎む邪悪なアンデッドで、ゴーストのようにスペクターは自分の死んだ場所に出没し、他者を寂しい不死の奈落に引きずり込もうとする。

 スペクターは生前と全く同じような外見をしていて、その人物を知っていた者やその人物が書かれた絵などを見たことがある者なら、簡単に見分けることができる。スペクターは生前の人格を強く保持している。

そうか、スペクターの存在は異様なオーラのため動物は近寄ろうとはしない。故にダイアウルフは死の町まで追跡する事はなく、結果ヒルジャイアント達は追跡を諦めたという事だな。



その後も質問をしたりすると、この町娘は王子に指輪を返したい。ただその強い思いだけでゴーストになってしまったようだ。

つまり指輪を墓まで持って行けという事だな。

それでこの町から出るには町長と息子を倒す必要があるのかと思えばそれもないらしい。


「えーっと、憑依したりしたのは、もしかしたら指輪を返したかった為の必死な想いからで、それを伝えたかったからデートみたいな事をしたといったところなのかしら?」


Yesにコインが移った。


「ん〜、憑依されたままってのもあれだけど、このまま放っておくのも可哀想だな。

セレヴェリヴェンさん、元トラキアルの王都は…」

「ここから3日程でたどり着きますが、霊峰から離れる事になるので少し遅れますが…」

「仕方がないだろ。俺は顔を隠せば良いだけだ」


そうか、マルスはトラキアルの男爵子息だったっけか?知っている人がいたらマズイよな。


「どっちにせよ、霊峰に着く前に変わろうと思ってたんだしちょっと早くなっただけだな。

って事で誰かリーダーやってくれ」


ここで皆んな一斉に目を逸らし出す。

なんか学生時代を思い出すな。


「マルスが指名しろよ」

「そうか?じゃあ…」




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