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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第1章 旧帝都を目指して
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条件

「マスターの知り合いですよね?何故手助けしないのですか?」


宿に戻るなりセッターはキリシュ達の事を訪ねてきた。


「お金なら問題はないんだけどね。ただあそこで簡単に応えて、もし他の誰かが聞いていたらどうする?」

「あ…なるほど、しかしさすがマスター」


仮に俺らだけで金貨4枚。キリシュ達は6人パーティだから金貨6枚必要になる。全部で100万円だ!

俺の財源はルースミアに貰ったもので、恐らく普通の人間であれば一生遊んで暮らしても余るほどあるから困る事はないが…


まぁキリシュ達とは仲良くしていきたいからな。



「明日、朝一で酒場のキリシュさん達に会いに行こう」

「お金出すの?」

「レイチェルは反対だった?」

「うううん。ただサハラはお金もっと大事にした方がいいって思っただけよ」


ギャフン。




翌朝、酒場に行きキリシュ達を呼ぶと、不安そうな顔で早速聞いてきた。


「サハラさん、どうでしょうか?」

「ええとですね。あれから考えたんですが、やはりお貸しする事は出来ません」


キリシュ達が残念そうな顔をした。セッターとレイチェルは顔を見合わせてアレ?と言った表情をしている。


「そうですよね。金額が大きすぎますよね」

「勘違いしないで下さい。俺は貸しはしませんと言っただけです」

「対価を求める。ですか?」


エラウェラリエルが即座に答えた。

俺はそれに頷いた。


「うちらに今差し出せる対価って言ったら、セレンとウェラの身体ぐらいだけだぜ?」


ズィーがヘラヘラっと言うと、セレンと言われた長槍(ロングスピア)を持った、クールなイメージを持つ女戦士がズィーを見た後俺を見て顔を強張らせた。


「貴方がズィーの言うような人ではないのは分かっています」


にこやかにエラウェラリエルが答えた後ズィーを睨んでいた。

美人の睨みって怖いってよく聞くけど、あれは確かに怖いな。


「あはは、もちろんそう言うのではないですよ。

対価というか、お願いですね。

この町を出て、別れた後も仲間として困った事があったら助けあいたいと思っています。

もちろん対価とかそう言うのは関係なく、一緒に普段行動しないけど同じ仲間と言った感じで、何かの時には駆けつけて助け合うような関係をお願いしたいと思ってます。

了承して貰えるのなら、お金を出しましょう」


キリシュが自分の仲間達全員の顔を見合わせた後、キリシュ達が大きく頷いていた。


「それはこちらとしても願ってもないお願いですよ、サハラさん」

「儂ゃ感動したわい。【鍛冶の神スミス&トニー】様、サハラとの巡り合わせに感謝じゃー」


キリシュは喜び、ドワーフの神官戦士である、でっぷりとした髭もじゃのボルゾイが神に感謝していた。


「だが、どうやって、連絡、取る」


戦斧(バトルアクス)を持つ、2メートルはありそうな蛮族の様な巨漢の戦士、ウォーレンが片言のような口調で訪ねてきた。



確かに携帯電話のようなものがないこの世界で、連絡を取り合うのは難しい。そこで俺が昨夜考えた方法は、カイとフェガスの料理屋を拠点とした連絡のやり取りだった。


元々はヴァリュームに何かがあった時の為の連絡手段として、10日に1度ぐらいの割合で俺の使い魔であるツバメを送る事にしていたが、こんな形で役立つとは思いもしなかったな。



俺は鞄から20㎝ほどの鳥、ツバメを出した。

鞄から出されたツバメは体を震わせると俺の肩に飛び移った。


「なるほど、使い(ファミリア)ですね。

サハラさん、貴方魔法を使えるようになったんですか?」

「えぇ、少し教わったんです」

「マスターいつの間に魔法を?」

「うん、ちょっとね。でも本当に入門程度だよ」

「そう、なんですか…

ですが、お互いの位置を探させるとなると時間がかかってしまいますよ?」

「そこは安心してください」


セッターはなんとなく察してくれたみたいだが、なんかマズいこと言ったのかな?とりあえず俺はヴァリュームのカイとフェガスの料理屋の事を話して話題をそらしておいた。



「確かにそれなら場所も情報も取り合えますね」


早速俺は使い魔のツバメにカイに伝えたい言葉を言い、ヴァリュームのカイの元へ飛ばさせた。ツバメは俺の頭上で1度旋回すると、物凄い速度でヴァリュームに向かって飛んでいった。




「町を出たらキリシュさん達はどうするんですか?」

「サハラ、仲間っていうか手を組んだんだから堅っ苦しいのは今後抜きにしようぜ」


ズィーって思った以上によく喋るんだな。

案外キリシュ達の交渉役なのかもな。


「そうですね。っと」

「言ったそばからこれだ」


暗い雰囲気の町に似合わない笑い声が上がった。



行き先は元帝都までに後2つ、ヴェニデとヴォルフという町があり、その先が元帝都でそこまで行くとガウシアン王都に向かう方角と、俺の知らない別の国があった都市部に向かう方角に別れる。


確かオークの侵略があった時に帝都住民が逃げたと言われる国だったけか?



「じゃあ元帝都までは一緒かな?それともヴァリュームに寄るのかな?」


キリシュ達はこの町で散財してしまったため、次の町以降のヴェニデかヴォルフで稼げそうなら稼ぐ事にするそうだ。



次の町ヴェニデまでは3日ほどかかる距離らしく、ここに5年間ずっとヴィロームにいたキリシュ達はヴェニデなどの情報はないそうだ。

ただ以前であればヴェニデはかなりこじんまりとした、ヴィロームからヴォルフまでの中継の町だったらしい。ヴェニデからヴォルフまでは5日ほどの距離があって、ヴェニデが無かったら長距離のため、場合によっては10日もかかってしまうんだそうだ。




「じゃあこれ。一応旅の準備もあるだろうから、多めに入れておいたよ」


俺はキリシュに小袋を渡すと、それを感謝しながら大事そうに受け取っていた。

そして準備が出来次第町を出る事にしたのだが、ズィーの提案で俺たちとキリシュ達は時間を少しずらして、町から離れたところで落ち合う事にしてその場を離れた。




こんな町さっさと出ようというレイチェルの意見に皆んなも賛成で、町に来たばかりで準備も必要ない俺たちはさっさと町を出る事にした。



門番の兵士に止められ1人につき金貨1枚、合計4枚を俺たちはワザと疲れきった表情で渋々ながら支払うと、兵士がニヤけながら受け取り無事に町を出れた。


これはズィーがあらかじめそうした方がいいと教えてくれたからだった。



「ねぇ、なんでズィーは演技なんかしろって言ったのかしら?」


町を出てちょっとするとレイチェルが聞いてきた。


「たぶん簡単に出すと何らかの理由をつけて上乗せとかされるからじゃないかな?」

「せこい」




ヴィロームを出て1時間ほど進んだところで俺たちはキリシュ達が来るのを待つ事にした。




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