霊峰を目指して
第4章です。
4章からリーダーではないサハラはあまり喋らなくなります。会話の主導はリーダーのマルスのほうが多くなります。
狼達に引かれたソリにより俺たちは、休憩をいれながらも森を抜けて人気の無い道なき道を進み、本来なら1ヶ月はかかる距離を10日ほどでたどり着いたある所で狼達が走るのをやめた。
「狼の奴らどうしたんだ?」
「聞いてみる。
狼達よどうしたんだ?」
狼のリーダーが何かを伝えようとしてきている。俺は始原の魔術ではなくドルイドとしての自然動物達との意思疎通の力のおかげで、なんとなく狼のリーダーが伝えようとしている事が分かった。
「これ以上先は行けないみたいだ。
たぶんテリトリー…にしては遠すぎるか。とにかく狼達はここで引き返すみたいだ」
「ん〜、まぁかなり助かったわけだし仕方ないか」
俺が狼達に感謝を伝えると一斉に来た道を走り去って行ってしまう。
セーラムがばいば〜いとにこやかに手を振り、それを眺め狼達の姿が見えなくなるまで休憩を兼ねて待った。
「体痛い。というかなんかむず痒いわ」
「凄いゆれでしたものね」
レイチェルもエラウェラリエルもそれぞれマルスと俺に必死にしがみついてたもんな。
俺は引っ張られるソリの操縦というか、狼達に指示を出していたためかあまり気にならなかったし、マルスも案外平気なようでレイチェルを抱きとめていた。
そしてセーラムは驚異のバランス感覚で倒れたりすることなく立っていて、セッターもそれを見て真似ていた。まぁ何度も転んでいたが…
そしてセレヴェリヴェンもバランス感覚がいいのか片手でソリに捕まって普通に立っていた。
もしかしたらエラウェラリエルはわざとか?まぁいいけどね。
休憩をしている間におおよその場所をセレヴェリヴェンに確認してもらっていると、納得したように頷き地図を開いて見せてくる。
「今この辺りです」
地図を見せてもらったが、なんていうか宝の地図か何かかっていうぐらいラフな地図で何処がどうなのか俺にはわからなかったが、適当に頷いておく。
「この先もう少し行くと丘陵に出るのですが、マンティコアやグリフォンなどの魔物の生息地です。
狼達はそれで進むのをやめたのでしょう」
「そんな所を抜けなきゃならんのか?」
「ここを避けて通るとなると…日数的に倍近くかかります。どちらにするか決めるのはマルスさんです。お好きな方を選んでください」
「そうだなぁ。サハラならどっちを選ぶ?」
「俺なら無駄な戦闘は避けたいから、丘陵は避けるかな」
「遠回りした場合の危険性はあるのか?」
「生息地の側になるわけですから、必然と彼らの狩場の可能性は高いでしょう」
結局3人では決められず、全員で相談することになってしまった。
色々話し合った結果、回り道を選んだのが俺とレイチェルとエラウェラリエル。
丘陵突破を選んだのが、マルスとセッターとセレヴェリヴェン。
どっちでもいいとセーラムが言ったため、見事に分かれてしまった。
「見事に分かれたなぁ。
なぁ、セーラムちゃん、どっちかにしてくれって言ったらどっちを選んでくれる?」
「そうだ、セーラムどっちかに決めてくれ」
「ん〜、もおぉしょぉぉがないなぁぁ、じゃあパパ…サハラと一緒でいいの」
ん、言い直したけどパパ卒業か?
まぁなんにせよこれで決まりだな。
多数決により時間はかかるが回り道をして行くことになったが、これに反対する者も出ることはなく決まった。
セレヴェリヴェンの話では、丘陵を抜けた先にエルフの住む森があるらしい。
ここにきてエラウェラリエルがセレヴェリヴェンにエルフの住む森に寄る理由をそれとなく聞いてくれた為、会議室でも言わなかった理由を知ることとなる。
「そこもガウシアン王国に襲われている可能性があります。生存しているかわかりませんのでぬか喜びになってはまずいと思い言えませんでした」
「そうなんですか。確かそこは…エルフにとって神聖な地、世界樹がある場所でしたね」
おお!世界樹、ユグドラシルか。
一般的に世界を体現する木と言われているが、果たしてこの世界ではどういう意味合いがあるのかな。
とりあえずマルスが気にしていたような事では無さそうで良かった。
「そんじゃあ行きますか?
隊列も組んだほうがいいな。俺とサハラが前衛でセッターとセーラムちゃんが後衛、残りは真ん中を歩いてもらうか」
「ハイエルフであるセーラムさんを危険には晒させられないので私と位置を変えて貰いますよ」
「ん〜まぁいいか。んじゃあセーラムちゃんは真ん中で頼むわ」
「分かったの」
隊列も決まりいざ出発となるが、俺は約束の10日目でもあった為、使い魔のツバメを取り出し報告の為に飛ばしておいた。
数日丘陵を避けて歩いたが、特に何かと出くわす事もなく進んめた俺たちは、今では気が抜けたようにそれぞれ喋りながら歩いている。
夜の見張りの時にマルスと一緒になった時に、セレヴェリヴェンの事で話もしたが、マルスは警戒し続けるそうだ。
下手に勘ぐる者が多いのも困るから、俺だけでも警戒してれば十分だろうとさらっと笑って言う。
そういや、全体的にもレジスタンスにもあまり獣人族って見かけなかったけど希少な種族なのか?
不意にそう思いマルスに尋ねてみると、獣人族は従順で大人しい性格のものが多いため、好んで冒険者になる者は少なく、ほとんどは日々が暮らしていければ満足するそうだ。
例外もいるがね。と付け加えて言っていたが、聞きたい事は聞けたと思うからそれ以上突っ込んで聞くことまではしないでいいだろう。
エンセキやキリシュ達はうまく進んでいるだろうか。
使い魔の連絡によれば、エンセキ達もレジスタンスと合流するために向かっているらしく、ガウシアン王都の状況は商売的には全く問題はないが、住んでいる人達に活気が無いどころか生気が感じられないそうで、薄気味悪くサッサと撤収したそうだ。
そしてキャスの使い魔の方からは問題無し!とキャスらしい連絡だけだった。
丘陵を避けて進んだ9日目には魔物と遭遇する事もなく無事に森の前までたどり着いた。
生い茂った森なのに不思議と美しく、鳥たちのさえずりが聞こえ平和そのもののように見え魔物の気配は感じられない。
「森に一歩でも入ったら気をつけてください」
…なのにこれだ。
大方森からエルフ達が見張っていて、侵入者を許さないといったところだろうが、こっちにだってエルフが3人、しかも1人はハイエルフがいる。
にも関わらず気をつけろとはどういう理由なんだ?
「セレヴェリヴェンさん、こっちにだってエルフいるじゃない。なんで警戒が必要なのかしら?」
「私達は部外者だからです。世界樹を護るエルフは部外者に対して非常に警戒します」
なるほどねぇ。
俺はキャスとの会話以来あまり口を出さないようにしているため、誰かが聞いてくれるまで知りたい情報が得られない。
まどろっこしいがキャスの言う通り、俺やキャスのような代行者が出しゃばるのはやめたほうがいいだろうと思ったからだが…
イライラするわ。
と言うか狼ソリは十分でしゃばったのか?
「じゃあどうすれば良いのかしら?」
レイチェルナイス!それが聞きたかったんだよって、別に話しちゃいけないわけじゃないんだよな。聞きたい事は聞くべきか。
「恐らく威嚇攻撃はしてきます。その際何があっても戦う意思を見せないでください」
「だそうだぞ、セッター」
「そのぐらい分かってます。いつまでも前のままだと思わないでください」
ははっ怒られちまった。だけど、セッターも変わってきたな。7つ星の剣を入手してから凝り固まった騎士道っぽさがなくなった気がする。
そして俺たちは森へ踏み出した。




