西を目指して
第3章最後です。次話から第4章に入ります。
翌朝、隠れ家の出口で沢山の人に見送られ俺たちはソトシェア=ペアハを出た。
北の蛮族に協力を求めに向かうキリシュ達。
キリシュ、セレン、ボルゾイ、ウォーレン、ズィー、エラウェラリエル、キャス
霊峰竜角山に住むゴールドドラゴンに向かう俺たち。
俺、レイチェル、セッター、セーラム、マルス、セレヴェリヴェン
ワイプオールやマルスの部下、カインとアベル、クリティカルとファンブルなどは隠れ家の防衛などの為残る事となる。
冒険者達に声をかけるのは、裏切りなども考えられた為、俺たちが戻った後となった。
またヴァリュームのノーマ侯爵を勧誘するのはさらにその後、決戦直前に決まり、仮に失敗したとしてもそこで即座に作戦決行に移る事にすると決めた。
「成否に関わらず、1年後までに必ず戻ってください」
これを条件とし旅立つ事になる。
既に半年近く経っていて、1年はギリギリに近い日数ではないが、失敗したときに別の手段を考えなければならなくなる為、1年を区切りとした。
最も神々の方が準備が整ったらになるのだが、創造神は2〜3年と言ったから猶予はまだまだある。
ただ、できるだけ急ぐべきだろう。
「ウェラはサハラと行きな」
えっとズィーに押し出され、トトトと俺の方へくると振り返って見るとキリシュ達がうんうん頷いている。
「良いのか?」
「サハラ達ほどこっちは困難じゃないし、キャスさんもいるからな」
そうだけど、キャスがいるとは言えキリシュ達の戦闘力が不安だ。と思ったが、キャスがニコニコしながら手をヒラヒラさせている。
「分かった。ありがとう」
「ありがとう、ズィー、皆さん」
キリシュ達が6人パーティ、俺たちが7人に変わることになる。
北の蛮族の所までは遊牧民族の為、1ヶ月探し回るとなると3ヶ月ほどは掛かるらしい。
とは言え俺たちに比べればかなり楽だそうで、セレヴェリヴェンの話では霊峰竜角山までの道程は麓までで3ヶ月、そこから山を登っていくのだがデプス30以上(30日以上)とされている。
ここで本来なら移動魔法を使う所だが、町や霊峰竜角山のような所は転移妨害の魔法が貼られて使えなくされているらしい。
それと転移先に岩などあると即死する為、安全が確認されていない場所に移動魔法を使うのは危険だ。
なんだかウィザードリィみたいだな。
つまり…歩けって事か。
いつまでもここにいるわけにもいかない。
じゃあとキリシュ達がまず進みだした。
姿が見えなくなるまで見送った。
「それじゃあ俺たちも行きますかね?」
マルスがリーダーとして声をかける。
これは今朝決めた事で、当初は俺をリーダーにと言われたが俺の渋い顔を見て、なら俺がやろうとマルスが買って出てくれた。
「それで…まさか本気で全行程歩けとは言わんよな?セレヴェリヴェン」
「なんの事でしょうかね?」
「しらばっくれんなよ?俺が知らないとでも思ってるのか?」
はぁ、とため息をセレヴェリヴェンがつき、やれやれといったポーズを取った。
「あなたが言っているのは魔法の絨毯の事でしょうか?
あれはサイズが1メートル四方しかないので2人までが限界ですよ。
しかも日に一度だけ、しかも1時間しか飛べません。なのでこの人数は無理ですね」
「…という事だ。
サハラ、始原の魔術にはなんか無いのか?」
おいおい、俺に降るなよ。
とは言えまともに歩いてなんて距離がありすぎるよな。
7人か…
「少し時間がかかるが無い事は無いかな」
「お?さすがは自然均衡の代行者。頼むぜ」
俺は鞄からツバメを取り出し、ある命令をするとツバメは空をものすごい速さで飛んでいった。
さてと次は…
“俺は自然均衡の代行者”
“あるゆる自然現象を想像し”
“具現化する”
“想像するはソリ”
“木よ我らを運ぶソリとなれ”
「木材形成!」
俺がそう言うと近くにあった木が7人載せるのに十分なソリに形を変えていく。
まるでシンデレラの馬車だな。
「サハラ、凄いけどさ、これどうやって動かすの?」
「乗り心地悪そうだな」
「馬車には出来なかったんですか?マスター」
「うるさいわ!嫌なら乗らないで走れ!」
嬉しそうに飛び乗ったのはセーラムだけだ。うん、可愛い良い子だ。
エラウェラリエルはと見れば…うん、尊敬の眼差しだと思う。
馬車にしなかったのは、車輪などの複雑な形状だと時間が更にかかるみたいだったからだが、こいつを引いてくれる連中が連中だから、ソリの方が良いと思ったわけだ。
「マスター!あっちからかなりの数の何かが向かってきてます!」
「いや、いいんだ。俺が呼んだんだからね」
ツバメがちょうど戻り、鞄に戻すとちょうど此方に向かってくる狼の群れが姿を現した。
ざっと見て30匹ってところかな?
「お、狼!それもこんなに」
「来てくれたか。済まないがこのソリを引いてほしい。
対価として食料を提供するよ」
アオオとリーダーらしい狼が鳴くとソリに結び付けられている紐を咥える。
「皆んな、ソリに乗ってくれ。セレヴェリヴェンさん、方角を教えてください」
「あ、あぁ、いや、はい。
まずは西に向かってください」
全員がソリに乗り込み手すりにシッカリとつかませる。
「それじゃあ行くぞー!狼達よ西に頼む」
先頭に立つリーダーの狼が遠吠えをする。そして勢いよく走り始めた。
30匹ほどの狼に引かれるソリは酷い揺れを感じさせながらものすごい速さで森を走り始める。まさに爆走だ。
「早い早い!早いなのー!」
「うわわー、揺れる揺れるー」
その他色々な悲鳴があがりながらソリは猛スピードで西に向かって走る。
セレヴェリヴェンが言うには、西に向かっていくとマルスの故郷になる土地に入るらしいが、町へは寄らずそのままエルフの住む森に向かうそうだ。
マルスがそっと近づき俺に耳打ちする。
「エルフの住む森なんて聞いてない。用心したほうが良さそうだぜ」
確かに会議の時にセレヴェリヴェンは言わなかったな。
頷いて答え、俺は狼達に檄を飛ばす。
霊峰竜角山に着く前に一波乱あるかもしれないな。西を見つめると暗い影が見えるような気がする。
大丈夫だ。俺には心強い仲間がいるさ。




