対策
とりあえずセッターの件が終わると、続いて今後の対策の話になった。
現状レフィクルに目をつけられずに兵力を整えるのは難しいとなったため、セッターの言う通り少数精鋭での戦いになるのを前提に他の手段も相談された。
「今いる主力メンバーの力を伸ばすのが1つ。そして可能ならば兵力を整えられれば整えたいところだが…」
「なら一発勝負でレドナクセラにある赤帝山のドラゴンを倒すっていうのはどうだ?
相当昔から勇者だ英雄と言われた冒険者達が挑んだんだろ?
となれば相当な財力や魔法の物品も持ってるはずだ」
「「それは駄目だ(よ)!」」
俺とレイチェルがハモるように叫ぶとマルスが驚いて俺とレイチェルを見る。
俺はレイチェルを見て頷くのを確認すると、ルースミアのこれまでの一度たりとも人の領域を襲ったりしたことがないことや、住処に勝手に来て攻撃されたから侵入者を殺した話をした。
そして、5年前に俺達が世話になった話もした。
「あながち信じられない話ではありますが、サハラ殿が言うのであれば…信じる他ありませんな」
「それに居ないんじゃ仕方ないか」
俺もレイチェルもホッと胸をなでおろしたが、そうなると他の手段を考えなければならなくなる。
「じゃあ北の蛮族なんかどう?」
キャスが提案してくるとワイプオールが渋い顔を見せた。蛮族っていうぐらいだから、野蛮な連中なんだろうか?
「北の蛮族っていうと、あの遊牧生活しながら暮らす連中だよな?
ウォーレン、お前の一族だろ?」
一斉にウォーレンに視線が注がれるが、ウォーレンは気にすることなく頷いた。
ウォーレンって北の蛮族出身だったのか。
全員がウォーレンみたいであるなら、野蛮とかではないだろうが…ワイプオールはなんで渋い顔をしたんだ?
「じゃあ北の蛮族の方はキリシュ達に任せてみるか。やってくれるか?」
マルスがそう言うとキリシュがウォーレンと話をし、引き受けてくれることになった。
「言い出しっぺだしね〜、僕も一緒に行くよ」
キリシュ達だけでは正直不安だったが、キャスが付いて行ってくれるなら安心だろう。
あ〜ぁ、またしばらくウェラと離れ離れか…
「その間に残った連中は指をくわえて待ってるわけにはいかないだろ。
他に何か当てはないか?」
考え込む一同を目にしながら俺も考える。
可能性があるか分からないが、もしかしたらノーマ侯爵は味方になってくれないだろうか?
もし無理だとしても、ギャレットが味方に着いてくれる可能性はある。
後はそれより難しいが、バルロッサ王が味方になってくれればキャスに匹敵する魔法使いなんじゃないかと思うが…
「ねぇサハラ、カイ姉さまの剣を借りれないかしら?ルー姉さまをあそこまで傷つけられる武器はそうないわよ?」
「だけどアレはカイのお父さんの形見だろう。それに危険すぎるから知られるのは良くないと思う」
「うーん…でもそれは使い手によるんじゃないかしら。マルスならきっと平和の為に使うはずよ?」
「随分マルスを信頼してるんだな」
「う、そ…そんな事ないわよ」
「分かった。ただそれは出来れば最終手段にしておこう?」
「そうね」
しばらくグダグダ話をしていると少しづつ提案も出てきた。
1つはセーラムをハイエルフと敬うエルフが言う、霊峰竜角山に住むと言われるゴールドドラゴンに助力を求めるというもので、2つ目がアンダーダークと言われるとてつもなく深い地下迷宮に存在すると言い伝えのある、【鍛冶の神スミス&トニー】が作り出したと言われる武器の入手。
3つ目がここソトシェア=ペアハの捜索。【鍛冶の神スミス&トニー】が神になる前に作製された武具が残されているかもしれないというもので、4つ目はレフィクルに敵意のある冒険者達を集めるというものだった。
「後は可能性は低いかもしれないけど、ヴァリュームのノーマを味方にできるかもしれないです」
「サハラ殿、ノーマはガウシアンの侯爵ではないですか」
5年間ヴァリュームにいたレイチェル、セッター、セーラムがハッと思い出したように見合わせた後俺を見て頷いている。
「ええ、ですから可能性は低いんですが、5年間ヴァリュームにいた時ノーマ侯爵は民思いの真っ直ぐな人物でした」
「ですが…ギャレットと2人の騎士を公開処刑した男ではなかったですかな?」
ここで俺はワイプオールからセッターに視線を移して真実を教える事にした。
「俺はガウシアン兵に知り合いはいません。にも関わらずヴァリュームを旅立つ時にガウシアン兵に呼び止められ、握手を求められました。
顔は兜で見えませんでしたが、アレはおそらくギャレットだろうと思います」
公開処刑が終わった後にノーマ侯爵がセッターに名を捨てノーマ侯爵に仕える条件に応じれば生かすと言った事も話した。
「ふむ、なら仮にノーマ侯爵がこちらにつかなかったとしても、ギャレットと2人の騎士が来てくれるかもしれないですな」
「ワイプオール様それはおそらくないでしょう。ギャレットの事は私達も知っていますが、忠義に厚いとても優れた騎士です」
「つまり、ノーマが此方につかなければ無理という事か」
やっぱ俺の浅知恵だったか…やべぇ小っ恥ずかしい。
「いや、最後の手段として考慮しておくのもいいんじゃないか?」
マルスがここで助け舟のように口を開いた。
気のせいか口元が微妙に俺を見てにやけてるようにも見える。
「うむ、今は提案出し合っているのだから、可否は関係ないですな。
他に何かないだろうか?」
「はいは〜い!提案じゃないけど良いかな?」
「キャス殿、もちろんです」
「霊峰竜角山と冒険者とノーマは良いんだけどさ、それ以外の武器とかは確証の無さと危険に対して得るものがショボいと思うんだ。
だからこの3つと北の蛮族だけでとりあえず良いんじゃない?」
一同が成る程と頷いた。
一応俺の浅知恵も評価されたのかな?後はバルロッサの事があるんだけど大っぴらに言えないし、後でキャスに相談するのが良いかな?
話をまとめて行った結果、北の蛮族はキャスとキリシュ達が、霊峰竜角山には俺たちレイチェルとセッター、セーラムに加えマルスとセーラムを敬っていたエルフのセレヴェリヴェンが向かう事になり、冒険者に関しては地道に残った連中が調べることになった。
一応ここで俺は忘れていたエンセキ達のことも話しておき、連絡がつき次第合流する方向になった。
ノーマの件はこれらが終わった後の決戦間近に試すのが無難という事で纏まると解散となったのだが…
「サハラ、ちとついてきてくれ。あとレイチェルもだ」
「ええ、もちろんよ」
エラウェラリエルに助けを求めるように見るとキャスとの会話に夢中になっていて俺に気がついていなかった。
いろんな意味で死亡フラグでも立った気がする…




