騎士だけの道
あれからデプス8まで到達した。
奥地に向かうにつれ、魔物も巨大な昆虫達も種類様々に変わるが、デプスが10ある割にそこまで危険には感じない。
時折戦闘技術を磨く為にキリシュ達を前衛を任せると、思った以上に強くなっていて接近戦をウォーレンとキリシュが行い、時折ボルゾイも殴りに出ることもあるが、前衛の隙を縫うようにセレンの槍が生き物のように後方から刺し貫いて攻撃を加える。
必要に応じてエラウェラリエルの魔法が炸裂し、長年一緒に戦ってきた連携がうまく取れているのが伺えた。
そうこうしながら進んでいたが、デプス8のかなりの広さの大広間に出ると行き止まりになった。
「おかしいですね。デプス10なのにここから先に進む道が見当たらないですよ」
「この辺りは魔物の気配も無いし、手分けをして探してみるか?」
そんなわけで、俺とセッター、セーラムとレイチェルとウォーレン、キリシュとセレンとボルゾイに別れて大広間を捜索することになった。
「基本的にこういう所は真正面奥地に何かあるもんだよな」
「そうなんですか?」
俺の勘なんだけどね。
ただゲームマスターをやってるとマップ作る時は行き止まりは大抵が真正面に作るはずで、そうで無い場合はダミーの通路を用意して、隠し通路を見落とさせたりするってのはよくやる手法だ。
それに、ここまでの道のりが迷わせるような作りにはなっていない所から、騎士の為の試練か何かなんだろうと思う。
「あれ?マスター、ここ扉ですよね?」
「あぁ扉だね…
って、あるじゃん!」
俺の声を聞いて他のメンバーも駆けつけるのだが様子がおかしい。
「どうしたんですか?何か見つかりました?」
「え?そこに扉あるでしょ?」
「何言っとるんじゃサハラは?」
「ただの石壁よ?サハラ大丈夫?」
どうやら俺とセッター以外には見えてないらしいようだ。
これは騎士魔法が使えるものしか見えないというやつか?そもそも騎士魔法って言うのは一体何なんだ?今まで気にしなかったが、魔法は詠唱と記憶が必要で神聖魔法は信仰心による神の助力だ。だけど、この騎士魔法には詠唱も信仰心も関係無い…俺の中に思い当たる知識が無い?………そう言うことももちろんあるか。
「いや、俺とセッターには見えてる。他に見える人はいないのか?」
誰も返事はなかった。
ここから先俺とセッターだけで進むか、それとも諦めるかといったところか。デプス10の所を8という事から、ここから後2日はかかる予定になる。
「4日、ここで待って貰えるか?」
「まさか2人で行く気?怪我したら私いないから治せないのよ?
それにこの先行っても何かあるわけじゃ無いでしょう?」
「そうかもしれない。けどここは騎士魔法発祥の地だ。そして騎士魔法が使える者しか進めないという事は、俺は兎も角、セッターには何かあるのかもしれない。
ここはセッターに決めさせたいと思う」
俺はセッターを見る。セッターは俺とレイチェルを見た後に迷うことなくハッキリと言った。
「私は行きたいです。何故ここが騎士魔法発祥の地と言われているのかを知りたいです」
「決まりじゃな。
そもそもここを選んだのもセッターじゃったしな」」
しばしの沈黙の後ボルゾイがみんなの代弁をするとレイチェルは諦めの表情を見せた。
「じゃあ、4日頼む。もし5日経っても戻らなかったら一旦旧帝都まで戻ってくれ」
「絶対に戻るって約束をしないなら行かせないわよ」
「分かった…」
食料などの荷物を分け終え、俺とセッターが進もうとした時、エラウェラリエルが俺にしがみついてくる。
「信じてます」
「当たり前だろ。俺もセッターも無事に帰るさ」
そう言うと安心したのか離れた。
「サハラ、それってフラグって言うんじゃなかったの?」
「あぁ、そうだったな。でもね、こんな腕試しで来たような場所で死んでるようなら、これから相手にする奴に勝てないさ」
笑顔で俺は返してやる。
実際にここでおっ死ぬようなら、レフィクルなんか相手にもならないさ。
俺が扉に手を触れようとすると、音もなくスッと招き入れるように開いた。
「行ってくる!」
「行ってきます」
扉を抜けると今までの遺跡とは違い、まるで巨大な神殿のような作りに変わった。
扉を見てみると普通に皆んなの心配そうな顔が見えたため、手を振ってみたが誰1人反応を示さないところを見ると、向こうからは扉の中は見えないのだろう。
「マスター、なんか空気が変わりましたね」
「あぁ、来なきゃ良かったと少し後悔してる」
「マスターってあれだけ強いのに、時折平然と弱気を吐きますよね」
「ん〜セッター、強さと危険感知は別だよ。嫌な気がするって事は、そう言う可能性があると本能が警戒のベルを鳴らして教えてくれているって思った方がいい」
「本能が警戒のベル…ですか…
感知とは違うんですか?」
「つまり、逃げる逃げないは別として、自分の直感を信じろってことさ
感知は騎士魔法で視覚に頼らずに周囲を把握するものだから、直感とはまた違うだろ」
「直感ですか…
そう言えば騎士団では直感に頼るのは心が臆しただけと言われてましたが…なるほど」
何がなるほどか分からないが、今の俺の答えに何か気がついたことでもあるのんだろうか。
と言うか、自分の直感を信じないで何を信じるって言うんだ?
広い石畳の空間は横道などは見られず、奥へ奥へとひたすら続いている。
このまま真っ直ぐ進んでお終いだったりしたら、この後2日もかからないよな?
もしこれが試練だとかだったら、まず罠みたいなものはたぶん無いだろう。あるとすれば、やっぱ普通は番兵だよな。あるいわ一番俺にとって厄介なのは騎士らしく対応が出来るかのテストみたいな奴だな。
「マスター、マスター!」
「あ、ごめん考え事してた。どうした?」
「油断しすぎですよ。それよりあそこ見てください」
セッターに指差された方を見ると遠くに人型の生物がうろついている姿が見える。
巨大な斧を持ち、明らかに人よりも大きくおそらくオーガかそれ以上あるだろう。そして頭部は雄牛…ミノタウルスだな。
「あれを倒せって事か?」
「そのようですね」
俺とセッターは慎重にミノタウルスの方へと近づいていった。
何とか体調が良くなってきました。
週一更新の為進行が遅くなり申し訳ありません。
今週はここまでで次回更新は来週です。
誤字脱字などありましたら指摘の方お願いします。
また感想など頂けたら嬉しいです。




