創造神
広いこの旧帝都を足で回るのは大変だ。人も多く移動しにくいため更に時間がかかる。
その為街中をタクシーのように馬車が走っている。
場所が分からない俺たちは、馬車を利用して創造神の神殿に向かうことにした。
「残っててくれたか」
「懐かしいわね」
そこには以前と変わりなく、なんの飾り気もない創造神の神殿があった。
神殿に近寄ると神官が気がつき話しかけてくる。
「創造神の神殿にご用でしょうか?」
ご用が無けりゃ、神になんか関わりたくもないんだけどな。
とりあえず無難な返事だけしておいて中に入り込もう。
中は以前来た時と変わりはないな。
一番奥まで行くと例によって更に下に降りる階段がある。神官が行かれる方はお一人ずつどうぞというわけだから、早速俺が前に出た。
「行ってくる」
聞きたい事だけ聞いたら帰れればラッキーだよな。ありえないだろうけどさ。そう思いながら階段を降りていった。
「待っていたぞ。自然均衡の代行者サハラよ」
そこには以前同様、靄に包まれてハッキリしない人物のような姿があった。
「待っていた?」
「うむ、由々しき事態が起こっている」
早速ですかい。嫌な予感がするなぁ。
聞きたかった事あってきたのに。
「レフィクル…ですか?」
「如何にも。あの者は人でありながら、神殿を構え、讃えさせ、ついには神の域に到達した」
は?神になっちゃったの?
「それで、由々しき事態とは何でしょうか?」
「【闘争の神エナブ】が倒された」
うは、神ぶっ殺したって凄いな。
あー、なんかこれってよくある展開じゃね?
まさか俺に倒せとか言わないよな。相手は神殺した神だろ、無理だぞそんなの。
「えっと、【創造神】なら何とかできるのでは?」
「私は創造する神、創造し見守るのみ」
まぁそうだろうな。なら逆に倒せる神を創造すれば良いんじゃないかな?
「今、【自然均衡の神スネイヴィルス】が【魔法の神アルトシーム】【守護の神ディア】【勝利の神アロンミット】と共に力を抑えている」
「なら問題ないのでは?」
「本来であれば問題はない。レフィクルはそれを知ってか、【魔法の神アルトシーム】【守護の神ディア】【勝利の神アロンミット】の神殿を破壊している為、3神は力の大部分を失いつつある」
あー、そう言えばこの世界の神様って、信仰の強さとかで強さが変わるんだったっけ。
そうなるといきなり創造したって、力も持たない神になっちゃうのか。
「もし【魔法の神アルトシーム】が死んだりしたら、魔法は使えなくなるんですか?」
「魔法と信仰は別だから問題はない。それに【魔法の神アルトシーム】は既に代行者を用意してある。其方同様、神が死した場合は代行者が神となる」
「それって、【自然均衡の神スネイヴィルス】が死んだら俺、神になるんですか⁉︎」
「如何にも。それが代行者だ」
なんかそれって俺上手い事嵌められた感じなんですが…
それよりも、抑えきれなくなったらどうするんだ?と言うよりもだ、倒すではなく何で抑えるなんだ?
「レフィクルを倒すという考えは無いんですか?」
「今の3神にレフィクルを制するほどの力はない」
「それじゃあ抑えていてもいずれは…」
「その為に【自然均衡の神スネイヴィルス】がいる。【自然均衡の神スネイヴィルス】は最強の神だ。信仰ではなく、均衡が崩れれば崩れるほどその力は増す」
「なら!「ただし、あまりに崩れすぎた場合、大洪水により全てを洗い流すことになる」
…………。
おい、それじゃあまるでノアの箱舟じゃないか。
神殿と信仰が無くなりさえすれば、レフィクルを無力に出来るという事か?その為ならその他大勢の命はどうでも良いって、勝手すぎるだろ。
「自然均衡の代行者サハラよ、【自然均衡の神スネイヴィルス】は其方に託すそうだ」
「託すと言われても…俺にレフィクルを殺せとでも言うんですか?」
「レフィクルは私が創造していない、無名の神。出来れば封印し2度と現れる事のないようにしたい」
つまりあれか?殺した場合、俺のような代行者を作っておけば、すぐにでも復活しちゃうから、地獄にでも閉じ込めるみたいなもんか?
「なんだか、悪魔みたいですね」
「悪魔とは私は知らない。悪魔とはなんだ?」
「悪魔とは、簡単に言えば悪を象徴する超越的存在をあらわす言葉ですね。今のレフィクルにはちょうど合ってるのでは?」
「なるほど。ではレフィクルを【悪魔レフィクル】と呼ぶ事にしよう」
やべぇなんか乗ってきた。
堕天使だと天使はなんだとか言われるだろうし、魔王だと魔導王みたいだからな。
やっぱりここは悪魔王とかのほうが良さそうだと思うぞ。
「そこは!【悪魔王レフィクル】はどうですか?」
「ふむ…
では【悪魔王レフィクル】と呼ぶ事にしよう」
「それで封印と言うのは一体どうするんですか?」
「【死の神ルクリム】が管理している〈死獄〉に閉じ込めるのだ」
死獄って地獄とは違うのか?それと【死の神ルクリム】って確か、バルロッサから土地奪った…じゃなくて、譲ってもらったとかの時に出てきたよな。
「死獄と言うのは一体何ですか?」
「死の監獄と言って、罪深い行為を行った者などを閉じ込める、決して抜け出す事のできない、永劫苦しみ続ける監獄のことだ」
ほぼ地獄のことじゃん。って事は創造神に悪魔王に認定されたんだし、レフィクルにはちょうどいい場所だな。
「それで、どうやって閉じ込めるんですか?」
「【悪魔王レフィクル】はまだ魂の保管をしていない。魂を抜き取り死獄へ運び、そして肉体を葬る」
結局戦うんじゃん。それと魂を抜き取るってどうやるんだ?
まぁ俺には関係ないか。って事はどうせならないんだろ?
「それで、俺はどうすればいいんですか?」
「理解が早くて助かる。
其方には3神が【悪魔王レフィクル】の魂を抜き取った後、肉体を倒す為の対抗勢力を作ってもらえばいい」
「つまり、魂は神が、肉体のほうは人がやれということですか」
「理解が早くて助かる。その通りだ」
まぁ全てよろしくって訳にはいかないもんか。
てっきり何処か行って、なんかとって来い!とか言われるもんだと思ってたよ。
「【悪魔王レフィクル】の魂を抜き取ると言うのはいつ頃何ですか?」
「《魂抜きの籠手》を【鍛冶の神スミス&トニー】達が作っている。完成までに2〜3年はかかるだろう」
2〜3年で対抗勢力を集めるの間に合うか?間に合わせろってことだろうな。
その後俺は聞きたかった、始原の魔術のことと襲ってきた者の事を教えてもらった。
始原の魔術は俺の思った通り、【悪魔王レフィクル】の力で領域を作り出しているという事だった。そして襲ってきた者の方は創造神も分からないという事だった。
一通り話を終え、俺は皆んなの所へと戻っていった。
読んでくれてありがとうございます。
今週はここまでです。
人物が異常に増えています。覚えにくいと思いますので、重要視すれば良いと思う人物だけあげておきます。
サハラ→主人公
レイチェル→後々重要な人
セッター→後々重要な人
セーラム→後々超重要なエルフ
今のところはこの4人だけです。
誤字脱字などありましたら、お知らせいただけると助かります。また、感想などもお待ちしてます。
次回更新は来週です。どれだけ溜め込めるか分かりませんが、頑張ります。




