前編
この作品は「success!」のスピンオフです。気が向いたら本編もよろしくお願いします。
「ただいま~」
「おかえり若菜、今日こんなものが届きまシタ」
10月のある日、帰宅した若菜に、達也は1つの段ボールを指差す。
「え、誰から?」
「差出人ノところ、文字が消えててわかりまセン」
達也の返答を訝しむ若菜は、腑に落ちない表情で差出人不明の段ボールを見やる。
拝啓 氷室 若菜様
秋期大会での目覚ましい活躍お見事でした。センバツ甲子園大会への出場もほぼ当確のようで、こちらも嬉しく思います。ささやかながらお祝いの品と「一夜限りの仮装祭」への招待状をお贈りいたします。是非ともいらしてください。
敬具
「仮装祭、ハロウィンのことかな?」
段ボールの中に入っていたを封筒を開けた若菜は招待状らしきものを読み終えると、そう呟く。
「でも、着ていく衣装とかないし、そういう趣味もないからなぁ」
そう言って段ボールの方を見ると奥の方にテーラーバッグが入っている。まさか、と思いながら若菜はそれを開く。
「これって……。」
中に入っていたのは水色のドレス、ヘアバンドやチョーカー等の小道具も揃っており、限りなく透明に近いブルーのハイヒールまで完備されていた。
「これは、シンデレラ……でいいのかな?」
若菜は戸惑いながらそう呟くのだった。
「え、若菜にも届いたの?」
翌日の昼休み、真弓は驚きの声をあげる。若菜が昨日の配達物について話すと、真弓もそういう類いのもの届いたと打ち明ける。
「うちのところには、黄色のドレスとパンプス、赤いリボンが届いてたよ」
真弓が内訳を話す。若菜がシンデレラで真弓が白雪姫、どこかで聞いたことがあるような組み合わせである。
席を離れていた人魚姫
まい
も二人から話を聞くと安心したようにカミングアウトした。舞の元には人魚姫の一式が届いており、若菜と真弓はお互いの顔を見合うと納得といわんばかりに頷いた。
「うぅ……早く来ないかな」
そして、きたるべき10月31日の夕方、駅前にいるドレス姿の若菜は、周囲からの視線が気になり、恥じらうように腕を組む。センバツへの出場が有力視されていることもあり、地元での知名度がかなりのものになっていたことをこの時、彼女は改めて知ることになった。
「あれ、若菜じゃんどうしたの?」
ピンクのドレスを着ている一人の女性に声をかけられる。3年生が引退した秋になってから、あまり顔を見なくなったが、その女性の顔には覚えがある。
「先輩、どうしたんですか?」
先輩と呼んだ女性、敬子を若菜は不思議な目で見る。敬子は眠り姫のような衣装を着ており、若菜にはその理由がわからなかった。
「「一夜限りの仮装祭」に招待されててね、もしかして若菜たちもかい?」
その言葉に若菜は声が出そうになる。真弓たちだけでなく、先輩まで招待されていたとは、若菜は敬子の質問に肯定するのみだった。
「若菜、お待たせ」
「おや、島谷先輩もご一緒なんですか?」
真弓たちが到着すると、敬子がいることを不思議がる。同じ目的地だということがわかると4人はそのまま電車に乗り、目的地のホテルが直結している駅を目指した……。




