表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

訪問


   訪問


 その人――彼のマンションを訪問したのは少し唐突だったかもしれない。鵜川禎子は彼のマンションの玄関で少し躊躇していた。アポは取ってはいたが踏み込んでいくには勇気が必要だった。


「一度会っていただけませんか?」

「会う? 何のために」


 ――何のために

 その問いに禎子は明確に答えられなかった。

 少なくとも彼の方は禎子に積極的には会いたくはないのかもしれない。


 呼び鈴を押してドアが開かれたとき、彼はどんな顔で禎子を迎えるのだろう?

 ――歓迎?

 ――いや、やはり困惑なんだろうな……

 それでも禎子は彼に会いたいと強く思っていた。もう時間がなかった。


 果たして呼び鈴に応じて開かれたドアの向こうにいたのは、若い女性だった。

「あ、あの」

「だあれ?」

 どちらさま? でも、どなたでしょうか? でもなく、そういう言葉だった。

「だあれ? おねえちゃん、だあれ?」

 少なくとも禎子と左程年齢は違わないと思われるその女性は不思議そうに禎子を見つめている。

「あ、パパに? パパに御用?」

「あ、はい、鵜川禎子と申します。――さんに……。アポは取っています」

 禎子は自分の名前を告げ、彼の名前も告げた。

「――さん? あ、パパ? アポってなあに?」

「一応、今日お会いする約束は――」

 と、背後に人の気配を感じた。

「好美、自分のお部屋で待っていなさい」

 振り返ると彼が玄関の外に立っていた。

「おかえり、パパ」好美と呼ばれその娘は笑って奥へ消えていった。「おねえちゃん、またねぇ」


 彼に応接のソファに案内され、禎子はそこに座った。

「あの、先日連絡した鵜川禎子です」

 彼は無表情のまま禎子をしばらく眺めていた。

「あの、私、鵜川――の娘の……」禎子は母の名前を出した。

 それでも、彼は相変わらず無表情だった。

「好美を見てくるので、しばらく、ここで――」彼は禎子を一人にしてそのまま奥に消えた。


 ――奥……

 

 禎子はそこには踏み込めない。

 そのまま禎子はソファにただ座っていた。数分だったのだろうが、禎子にはトテツモナク長い時間に感じられた。

 ――髪の毛?

 ふと、ソファに落ちている髪の毛らしきものに気づいて、それをつまんだ。

 ――彼のだろうか?

「それで何か調べるのかね?」

 振り返ると彼が相変わらず無表情で立っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ