京都時代
「京都に行きたいなぁ...」
「え?行ったことないの?」
「えぇ、名前くらいは知ってたんですけどね、その前に死んでしまったので...」
「伊達政宗に滅ぼされた殿さまの側室?」
「はいそうです。あの時は助けて頂きありがとうございました」
「いやいや、たまたま通りすがっただけだよ。ところでさぁお殿様他にも女居たって事だよね」
「家系が途絶えないようにするためです」
彼女は浅霧睡蓮、庭師と家政婦をしている女だ。世界中から犯罪者、元軍人(自衛隊も含む)などの戦闘狂をかき集めた『民間軍事企業ファフニール』による核攻撃後の地球で空腹で地面倒れていたところを私が救出した。幸い熱中症も感染症も無かった。冬なのに気温が四〇℃を超えていた記憶があって、調査に行くときおかるお雑誌『アー』の関係者に危険だから止めてくれみたいな事を何度も言われた。心配するほど自分は弱くないのにね。
「馴れ初めは?」
「お城の庭で作業してたら殿さまに声を掛けられましたそれだけ?後から聞いた話なんですけど私に一目惚れだったらしいんですよ」
「お殿様狼だなぁ...」
すると、突然聞き覚えのある人物に声を掛けられた。後ろを振り返ると自分の血と親がそこに立っていた。普段は龍の形態だけど。人間の公家の姿をしていた。あれは仮の姿だ。人間から見ればそれこそ圧倒的な『神』の扱いだけど。実際は恐竜よりも遥かに強い爬虫類なんだよね。
「やぁ茜、元気にしてたか?」
「お父さん!」
「隣に居るのはお友達かな?」
「知り合い、浅霧睡蓮!」
「私は川崎龍神之猛だ、よろしく」
浅霧さんはお父さんに「こんにちは」と言った後改めて自己紹介をした。こうしてまた会ったのは平安京以来だった。今までどこをふらついていたのかとう、事は一旦置いといて再会した。別に寂しかったわけではないけど嬉しかった。
「ところで何の話をしていたのだ?」
「京都についてです」
「京か...懐かしいな」
「え?行ったことあるんですか?」
「うむ、いかにも。あの時は酷かったぞ」
「どういう事ですか?」
「病人とも死体かも分からぬ手松世界そのものであった。今は違うがな」
「そうだったんですか...」
「疫病に戦、おまけに不作続き、羅生門に『鬼』(酒吞童子)の家臣団が居ったわ」
「鬼?本当にいたんですね」
「私と茜は龍神ゆえ臭いはかなり強烈であったぞ」
嗅覚は熊や狼よりも敏感だったゆえの弊害だった。だから今も煙草や生ごみの臭いは慣れない。『酒吞童子』(しゅてんどうじ)鬼の総大将的存在で夜が明けるまで双六などをして共に遊んだ。ただし私達が見た存在はいわゆる頭に角を生やした存在ではなく一国の豪傑な武人の棟梁で、朝廷と戦うために間者(かんじゃ/現代で言うところのスパイ)が臭かったのは自分達の匂いを誤魔化すするためのなにかだろう。後にこれが『桃太郎』の元になったのではないかと言われている。
「ただあれは今思えば公家からみればただの『鬼』かもしれんがあ奴らは立派な国人ぞ」
「その公家にお父さんは頭下げて仕えてたんだけどね...」
「いやいや出世もしたぞ!川崎神社の神主もやりながら公家の童(子供/わらべ)の教育係も元寇(モンゴル帝国襲来)の時の神頼みもたくさんやったぞ」
「そういう事があったんだ、知らなかった。ところで御爺様や叔父様元気?」
「うん、元気にしておる、だが父上の容体があまり宜しくない」
「見まいに行かないと」
「是非、そうしてやってくれ、薬局は大丈夫か?」
「店、しばらくお休みにしないと...」
御爺様、北欧神話の『ファフニール」でユーラシア、オーストリア、アフリカ、アメリカの四つの大陸を彼の息子が統治している私の叔父様達である。バジリスク、リヴァイアサン、そしてヨルムンガンド。末弟として自分の兄達を立てる必要があった。そして、御爺様からユーラシア大陸の一部、日の出る列島を貰った。一人の叔父様は龍神之猛と同じ大陸を治めるのが不服で海水で隔ててもらったらしい。それはお父さんも同様だった。けど、例え望んだ環境でなくても一生懸命頑張る事を教えてくれたことは感謝している。




