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異世界喫茶『カフェ de ローズマリー』  作者: 杉崎 朱


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7/30

第7話 12:00*山菜定食


「えー?だっていつもそれ有真さんがやってくれてたじゃないですかぁ〜?いきなり私たちにやれってぇ〜?それ酷くないですかぁ〜?」

 目の前で会社イチ可愛いと言われている女性社員が文句を言っている。何を言っているんだ。そもそも君たちの部署の仕事だろう。全く仕事が進まない君たちに代わって何故か俺が半年間やっていたがいい加減にその仕事を返してやろうと話し合いにきて今この状態なのだ。


「あ〜可愛いっ!あんなこと言われたら俺なら引き続き自分の仕事そっちのけでやっちゃう!!感謝されたい!」

 男性社員の声が聞こえた。

「じゃぁ、そちらの部署でどうぞ。ちなみに俺は文句を言われど感謝をされた事は一度もありません」

「・・・マジか・・」

「なんでそんな酷いこと言うんですかぁ〜?!だって、仕事って、その時できる人がやればいいじゃないですか!ねっ?」

「あなたの”その時”はいつ訪れるんですか?」

「っ・・・!!なんでそんな意地悪言うんですかっ?!」




 その後何故か上に呼び出されてお説教を食らったのは俺だった。



・・・ーーー



 理不尽極まりない!!だから他の女性社員に嫌われるんだ!!俺が同じ女性社員だったら徹底的に潰してやる!!そう思いながらカフェまでの道をズカズカと歩く。よし、もう少しで美味しいご飯にありつける!昨日のフカヒレ効果はあの女性社員の対応で効力が切れてしまった。さて、”美味い”と”ほのぼの”な幸せを吸収するぞ!!

 俺は扉を開けた。


「「こんにちは!!」」

「おう!!いらっしゃい!!シェフ!ランチ二つな!!」

 ーーカンッカンッ!!


 あれ?今こんにちはが二重に聞こえた?あと、ランチ二つ?先に誰かきたばっかりか?


「おうおう!ちょっとばかし見なかったな。『コーヨー!!』」

 コーヨー?

「ちょっと全国回ってたもんでね!いやぁー!お腹減った!!」

 俺の後ろだ。え?俺の後ろ?俺以外がこの店に入ってるの見たことないけど・・・俺以外にも俺の世界から来てる人がいたって事で。それは別におかしい事じゃないけど、何がおかしいかって言うとこの人、だから俺と同じ世界の人であって・・・



 超人気バンドの・・・momijiさんなんだけど?



「あー!コーヨーなのー!お兄さんと一緒にきたんだねー!」

「お兄さん?あぁ!この人も常連さんなの」

「グワッグワ!」

「おや、コーヨーくんだね。久しぶり!」

「アヒル副隊長に美男子久しぶりだね!美男子は全然変わらないで美男子のままだね!!」

「コーヨーくんこそ”イケメン”だね」


 コーヨー・・・・?momiji・・・紅葉さんじゃなくて?・・・?ん?紅葉(もみじ)またの読み方を紅葉(コウヨウ)・・・コーヨー?!?!?!あ!ここは本名が禁止だからか?!そういえば俺も何故かずっとお兄さんとか兄ちゃんで本名は名乗ってないし・・・そうか・・・だからコーヨー・・・じゃぁやっぱり本物?!?!??!



「おい、兄ちゃんどうしたんだよ?座んねぇのか?ハーブティーテイクアウトだけか?」

「・・・!!いやいやいや!ランチ食べます!!食べるんですけど・・!!」

 俺がコーヨーさんをチラッと見た。

「・・・なるほど、コーヨーは著名人ってわけか・・・」

 マスターのその言葉に俺は首をブンブンと縦に振りまくった。



・・・ーーー


「いつも髪の毛赤なのー!素敵ー!」

「うさうさもいつも真っ白ふわふわだよなぁ〜!」

「きゃー!くすぐったいのー!」


 結局、俺はmomijiさんもといコーヨーさんの隣に座った。他に席が空いてないのである。どうした、いきなり超人気バンドのヴォーカルの隣でランチとか・・・あれだ、他の人の嫌がる仕事をやりまくってきたご褒美だこれ!!じゃあ、さっきの他の部署のあの腹たつ女性社員の仕事もあとちょっとだけ!!ちょっとだけなら延長してやってもいいかなっ?!


 俺は今日みんなの会話に加わらない。いや、加われない。だって俺、隣に座ってる人の超ファンだもん。今何が起こってるのかわかってるけどわかんないからっ?!俺は隣のmomijiさんとみんなの会話を聞ければそれだけで幸せなんだ・・・!だってライブのチケット三年連続落選してるんだ!!それが今隣に?!確かに唄を聞けるわけじゃないけど!!


「ね!ランチが来るまでコーヨー歌って欲しいの!!」

「いいぜー!」

「ブフォアッッ!!」

 勢いよく水を吹いてしまった!!うさぴょん!!その人の唄を聴きたいならランチよりも高いお金を払わなくちゃいけないんだよ?!

「あっ!そっか。お兄さん・・・俺と同じ世界だったっけ?」

「ふぁい!!!」

「・・・俺のこと知ってそうだね?」

 知ってますともっ!!!!!でも、ここでは知らない振りをした方がいいのか?!詮索禁止だもんな?!あれ?!詮索されてるのってこの場合は俺の方じゃ?!

「コーヨー、()()()()()()だぜ?」

 マスターが助け舟を出してくれた!!!


「お待たせ致しました〜!今日のランチは”山菜定食”です!!」

 和服メイドさんからも助け舟!!あれ?この場合はシェフからか?


「「うはーーー!!美味そうーーー!!」」

 俺とコーヨーさんが声を揃えた。いやだって美味しそう・・・!!ここ数日はこってりとしたメニューが続いたからこういう和食が出て本当に嬉しい!!寿司は和食だけど、あれはあれで結構な胃にくるからね!


「ゼンマイご飯、山菜の天ぷらそば、伽羅蕗(キャラブキ)、こごみのお浸し、わらびのすまし汁だ!」

「「頂きます!!!」」


 あぁ・・・山の味って感じだ!!山菜って、処理が大変だって聞いたな・・・スーパーで下処理されてるの売ってるけど、味付けされてるわけじゃないし。自分で料理する時間も気力もないし、自分の世界で山菜を食べようものなら高級店に行かなくちゃ食べられなし、高いし・・・つまり、とほほなわけである。


「うまーい!マスター!シェフに聞いて?ゼンマイご飯をおにぎりでテイクアウトOK?」

「シェフー!ゼンマイご飯をおにぎりテイクアウト希望だってよー!」

 ーーカンッ!!

「OKだとよ」

「やったー!」

「マスター!!俺もお願いします今日の残業のお供に!!!」

「まずは残業しないようにしろっての!!」


・・・


「コーヒーにすっか?茶もあるぞ?」

 コテコテの和食の後だ・・・お茶がいいかもしれない!あっ!でもこの和食の後にお茶が選べるのにあえてコーヒーを選んだら、マスターはどんなコーヒーを淹れてくれるのかも気になるなぁ?!

「・・・茶は、煎茶、発酵茶、中間茶があるぞ。あと昆布茶、梅昆布茶に」

「「梅昆布茶?!?!懐かしい!!」」

「お前ら同じ反応ばっかりだな・・・じゃあ梅昆布茶二つな!!」




「「はぁ〜〜〜沁みる〜〜〜」」

「コーヨーとお兄さん同じなのー!面白いのー!」

「まぁ、俺たちの国では古くからあるからね。馴染みがあるんだ」

「そうなのー?!マスター!ボクも同じのが良いー!」

 くっ・・・!可愛い!!

「あっ!そうだ!お唄聴きたいの!」

「ブフォアッ!!!」

「じゃ、ちょっとだけだぞ?」

「きゃー!ありがとうなのー!!」



 まさかのランチの金額だけでコーヨーさん・・・いや、今はあえてmomijiさんと呼ぼう!!momijiさんの歌が聞けるなんて!!伴奏も何もない状態で歌い始めたmomijiさん。これは、日本の童謡だ・・・。でも、コーヨーさんが歌うと、懐かしい中にも新しさが!!俺っ!!俺っ!!真隣で・・・!!特等席で聞いてる!!アリーナ席よりアリーナだよ!!!



・・・ーーー


 お昼休みというのは本当に短い時間で、俺はもう会社に戻る時間になった。でも、この昼休みめちゃくちゃ濃い時間だった・・・!!めちゃくちゃ幸せだ!!料理が美味くてメイドが可愛くて、幸運まで引き寄せる喫茶店・・・!!絶対人に教えないからなっ?!!

 俺に続いてコーヨーさんもお会計をした。そして、コーヨーさんが先にテイクアウトを受け取って扉に向かった。

その後に続く。みんなに挨拶して二人で一瞬だけ扉の前で時計の時間が変わるのを待った。やはりそうだ。12:00だった。扉を開けて外へ踏み出そうとしている彼に続いた。


 コーヨーさんに続きながらも気になったテイクアウトの袋の中を見た。おにぎりが縦に入る三角の容器だった。コンビニや露店で見かけるそれだった。おにぎりが縦に二つ。そしてシェフの粋な計らいで厚焼き卵とソーセージが一緒に入ってる!!シェフ!!わかってるよ!!あんた本当にわかってるよ!!俺は嬉しくてコーヨーさんに話しかけた!

「コーヨーさん!おにぎりだけじゃないですよ!!卵焼きとソーセージも入ってます!!めっちゃテンション上がるやつですね!!」


 そう喋りかけたが返事はなかった。もうコーヨーさんは居なかったのだ。

「夢・・・じゃ。ないよな?」


 もしかして、同じ世界から来たとしても、この世界、いや日本にある扉は一つでは無いのかも・・・?

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