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異世界喫茶『カフェ de ローズマリー』  作者: 杉崎 朱


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2/30

第2話 23:17*ハーブポークソテー


 時間は昨日とは打って変わって14:45分。はいそうです、お昼休み直前になんか変な仕事を押し付けられました。

こんな時間だが俺は今日も今日とてカフェ de ローズマリーへと赴く。だって、安くて美味しくて癒されるんだから毎日行かない理由がないでしょうよ。シェフのご飯はめちゃくちゃ美味しい。毎日通っても太らないようなメニューになってる。昨日のフォーとか最高だったもんなぁ・・!!!




 ーーカラン





「まぁ、あれだ・・・。うちはランチは一種類しかねぇけど、焼き菓子とかなら何種類かあるけど・・・。どうする?」


 入るとちょっと雰囲気がいつもと違う。あのマスターがなんか気を使ったような喋り方をしている。あれ?暗い話はNGな店だし、いつも癒しな空間だったのにちょっとだけ違う。なんとなく、お客さんの目線が一点に集中している感じがした。その視線の先を辿った。



 お客様の中に、”ブタ”さんがいらっしゃった。



 そうだ、マスターは昨日言った。

【どうだろうな・・・それにしてもローズマリーだいぶ育ったな・・・よし、明日はシェフに頼んでハーブポークにしてもらうか】


 ・・・ブタだっ!!!

 ランチを食べにきたとしたら!!ランチはハーブポークソテー!つまりブタだ!ポークだ!ピッグだ!っちょ?!マスターどうすんの?!あ!だから焼き菓子の提案を・・!えっ!!ちょっと空気!!やばっ!他のお客さんもちょっと気まずそうだよ!!



「あ。僕の世界の豚さんじゃないから気にしない。ハーブポークソテーくだしゃい!!ぷひゃっ!」

「・・・お、おう・・・。シェフ!ランチ一人前よろしく・・・おっ、兄ちゃん今日も来たな・・・!シェフ!ランチ二人前だ!!」

 マスターが俺が店に来た事に気づいて、俺の分も一緒にオーダーをしてくれた。


 ーカンカンッ!!

 調理器具を叩いてシェフが返事をした。


「すごい光景だよね」

「グワァー・・・」

 昨日はすれ違った美男子とアヒル副隊長だ。美しい所作でポークソテーを食べる美男子と、その隣で予めシェフがカットしてくれたポークソテーを嘴で食らうアヒル副隊長。この二人・・・一人と一羽は同じ世界からやってきている。ちなみに副隊長というのは武闘派の軍隊の副隊長らしい。



・・・ーーー



「美味しいでしゅっ!」

「お・・・おう、そうか、良かったぜ・・・シェフ、美味いってよ・・・」

 ーーカン・・・

 マスターの返事もシェフの返事もイマイチシャキッとしてない。そりゃそうだろう!!良いのか?!

「なるほどねぇ・・・?世界が違えば同じ”ブタ”と呼ばれる生き物でも遺伝子が違う可能性もあるから食べても問題ないかもって事かな?」

「グワッ!!グワワワワ!!」

「おっと美男子、詮索はその辺にな!まぁ良いじゃねぇか。本人が食っても良いって言ってたし、美味いっつってんだ?」

 確かに!と思う。

「そっか!昨日のフォーにも鶏肉入ってたよね。アヒル副隊長も鳥は鳥だもんね。食べてたし」

「・・・グワッ!!グワグワグワワワッワ!」

 何を言っているかはわからないが、見ていると『・・・ッハ!確かに俺も気にしない!』と言っている気がする。そこで俺は一つ疑問が生まれた。


「・・・マスター・・・もしかしていつかのランチに人間の」

 俺がここまでいうとマスターが言葉を被せてきた。

「それはないっ!!大丈夫だ!お前は何も考えず癒されていれば良いんだ!!うさ吉行けっ!!」

 マスターのその言葉にうさぴょんが俺の所に跳んで来た。

「うさぴょんだよー!もふもふしていいよー!!」

「うぐぅっ・・・!!!今日のこの後の倉庫整理頑張れる・・・!!むしろ3時間予定が1時間で片付けられそうっ!!!」

 存分にもふもふした。

「おい、兄ちゃん!もふもふしながらで良いから兄ちゃんも冷めないうちに食べなっ!!」

「はっ!そうだ!!頂きますっ!!」



 贅沢なほどに分厚いポークソテーだ。力入れても切れないんじゃないか?と思ってたのにナイフがすんなり入ったよ!そして脂も美味い!!豚肉ってたまに臭みが気になるけど、このお肉はそもそも臭みもなさそうだし、それにローズマリーの香りで凄く爽やか・・・っ!!しかも分厚いのにめっちゃ柔らかい〜〜〜!!


「美味いーーー!!!」

「そりゃ良かったわ。ライスとパンは今日はおかわり自由だってよ。どっちが良い?」

「助かりますっ!!!この味ならライスでも合います!ライス下さい!!」

 今お米高いから嬉しい!!シェフ本当にありがとうございます!!


「これだけ美味しいと、毎日次のメニューが気になっちゃうよね」

「グワーワッ!」

「でも、『今日のランチ!』って頼んで、何も知らないで出てきた時のインパクトとか嬉しさも凄く楽しいんだよねー」

「グワッ!グワッ!」

 わかる、わかるわかるわかる!!楽しみを先に知りたい気もするけど、でも出されて初めてその時に知る気持ち!!あれだよ、クリスマスプレゼントで包み紙を剥がす前に中身を聞くか、開けて初めて中身を知って嬉しくなるかの違いだ。結局どっちも嬉しいんだけど、あー!これは難しい!!喫茶店の次のランチのメニューだけでこんだけ楽しめるんだ!最高に美味いランチのおかげだ!!

 そう思いながら俺はバクバクとポークソテーとライスを口に運ぶ。

「マスター!!ライスお替わり!!」

「あいよっ!!」




・・・ーーー




「おい、食後のコーヒーは今日は何にする?」

「今日はコーヒー牛乳で飲みたいんで、それが一番美味しくなるやつを・・・!」

「コーヒー牛乳か、俺の好みで行くぜ・・・深煎りで行くか!」

 マスターのコーヒーのセンスはピカイチだ。その人のその日の好みにドンピシャなコーヒーを淹れてくれる。もうやばい、俺出来ればここに住みたい。





「ぷぅ〜初めてきたお店でドキドキしましたが良かったでしゅ!また来るでしゅ!!ぷぎゅっ!」

「おう!気に入ったんだったらまた来いな!」

「ブタさんまたねー!そうだ!ブータンって呼んじゃおうー!僕はうさぴょんって呼んで!」

「ブータン可愛いでしゅっ!!ぷひゃっ!」

 お会計を終えたブタさんが扉に向かう。二つの時計が回って止まった。


「またでしゅーっ!!」

 そう言って扉を出ていった。そういえば、俺は自分でドアノブを開けるけど、ブタさんは扉を開けられない。でも今自動で扉が開いた・・・なんてメルヘンっ!!ん?これってメルヘンなのか?


「ブータンは23:17分か・・・」

 そう言ってマスターは手元にメモでもあるのか書いている様子だった。

「全部メモしてるんですか?」

「一応な。今の所、168の時間っつーか世界からお客さんは来てんだよ。一回しか着てねぇお客さんももちろんいるけどな。60分かける24時間で本当に1,440の世界からお客さん来るんかね?友達100人出来るかなどころじゃねぇぞ?」

「・・・1,440ですか・・・なんか夢がありますね・・・!!」

「俺、そんなに覚えらんねぇよ」



「さて、私たちはこの後大事な会議があるからそろそろ失礼するよ」

「グワック!」

 美男子とアヒル副隊長が席を立つ。


「”カイギ”って眠くなるやつだって前に聞いたことあるー!」

 うさぴょん、それ正解。

「そうなのかい?私の所の会議でもし寝てしまったら、アヒル副隊長の豪脚が跳んでくるよ?」

「そうなのー?!あ!そうだねぇねぇ!明日は土日でお店おやすみでしょ?!来週の月曜のランチは決まってるのー?!」

「あ、聞きたい様な・・・聞きたくないような・・・!!

「・・・グググゥウワワワー・・・」

 美男子とアヒル副隊長が聞こうか迷っている。

「おう、来週月曜日は『魚の西京焼き』だ!」


 ・・・西京焼きだとっ?!

「いよっしゃぁあああーーー!!」

「よくわからないけど楽しみなのー!すっごい強そー!!」

「・・・私たちもわからないけど・・・お兄さんの喜び方見ると楽しみだね、副隊長!」

「グワワワワッ!グワーー!!!」




 倉庫整理は異例の45分で終わった。TOP RECである。


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