表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世が人気声優だった私は、完璧に悪女を演じてみせますわ!  作者: 桜咲ちはる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/36

4.魔物の棲む山


「お嬢様!待ってください!飛ばしすぎです」


 後ろから小さく声が聞こえる。全力で狐を走らせてるから、体から力がごっそり抜けてくのを感じる。まだ学園に行けてなくて、魔法の授業を受けてないから不安だけどやるしかない。


 山を駆け上がるとすぐに物音がして、魔物が飛びかかってきた。手を前に出し、攻撃してみる。黒い礫が魔物たちに当たる。魔物が唸り声を上げ、もがき苦しむ。その隙にポーマが剣で魔物を斬った。


 最初はそれだけでも大丈夫だったけど、進んでいくと魔物が強くなってくる。魔物が火を吹くと使い魔が私を放り投げ、炎に飲み込まれた。私はアニメの見様見真似で手を動かす。間違ってるのか、それとも光魔法じゃないからか魔法は出ない。


「ポーマ!剣貸して!」


 私は魔物と戦うポーマに命令する。ポーマが戸惑ってる隙に剣を奪い、魔物と対峙する。


「お嬢様、危険ですから下がって」

「大丈夫。これは夢なのよ」


 何度考えたっておかしいもの。痛い思いしたからって現実だとは限らない。魔法とか魔物とか、きっとレインを愛してる私の夢なんだよ。私の夢なら私はヒロインで、この魔物だって倒せる。がくがく震える手足で、リアルみたいに重たい剣を横に振る。魔物に当たって、魔物は姿を変えた。


 一瞬喜んでしまった。まだ終わってないのに。魔物がこっちに向かってきて、右腕に噛み付いた。どくどくと血が流れる。痛い……。


「お嬢様!」


 これは間違いなく現実だった……。怖い、死にたくない……。痛む手を押さえ、後退りをすると噛み付いてた魔物が斬られ背中に何かが当たった。


「さっきまでの威勢はどうした」


 今村くん?と思って振り向いたけど違う。今村くんが声を演じるセイヴァンがそこにいた。安心してその場に座り込む。


「レビウス、レイン嬢たちを連れて山を下りろ」

「でもそしたらセイヴァン様1人に……」


 その言葉に周りを見渡す。アミューゼの時は学園の仲間も一緒にいたのに、今はセイヴァンと多分従者の2人しかいない。いくらセイヴァンが強くても4人ですら苦戦していたのに、1人じゃ無理だ。


「放っておいたらレイン嬢の腕は壊死してしまう」

「ひっ」


 そんなの嫌だ。でも、でも……。


「この私が借りを作ったまま帰れるわけないでしょう?」


 セイヴァンがいないと元の世界に帰れない。私は立ち上がって、セイヴァンをじっと見つめる。セイヴァンは目を逸らした。


「来ても足手纏いになるだけだ」

「そんな風に言われたら、意地でも帰りませんわ」


 勝手にしろ、とセイヴァンは先に進む。ポーマに止血してもらって、私たちも後を追いかけた。


「それにしても信じてくれたんですね。幻の花のこと」

「リリーのためだ」


 わかってる。だけど悪女からの伝言なんて、罠の可能性だって考えたはずだ。妹想いの姿にさすがヒーローだなと思った。


「レイン嬢こそ、俺に教えたら自らラプァールド山に入らなくてもよかったんじゃないか?危険に飛び込むなんて君らしくない」


 ”君らしくない”とはっきり言われて、息を呑む。レインじゃないとバレちゃダメだ。


「私はセイヴァン様に恩を売りたかっただけですわ」


 本当は知らせず1人で乗り込むつもりだった。けど誰にも知らせず、万が一私が死んでしまったら妹さんは助からなくなってしまう。それだけは避けたかった。


「お、お嬢様……手……」

「やだ、見ないようにしてたのに言わない……で?」


 ポーマの言葉に文句を言いながら、悪化してるだろう手を恐る恐る見る。抉られた傷も流れていた赤黒い血も消え、すらりと伸びた白いレインの腕が見える。


「治ってる……。闇魔法ってすごい……」

「いや、闇魔法にそんな効果はなかったはずだが」


 じゃあ転生チート?す、すごすぎる……。手を握ったり、腕を曲げても痛みはない。


「これで私の実力を証明できますわね」


 胸に手を当てて言うと、セイヴァンは興味なさそうに視線を前に戻す。セイヴァンと友達になるにはどうしたら良いだろうか。


 女好きで冷静なミンハルと、熱血で硬派なサムス。それとお調子者のベンが、セイヴァンが高校で得た数少ない友達だ。


 けど誰も真似できそうにない。考えていたらセイヴァンの足が止まり、私も気を引き締める。頂上に着いた?いや、小説に描写されてた頂上とは違う。


 魔物が現れ襲いかかってくる。セイヴァンとレビウスとポーマが剣を振る。私も闇魔法で応戦するが歯が立たない。私は下がって使い魔を出す。直接攻撃するよりはマシだろう。


「行って、狐さん」


 手を魔物に向け指示を出す。狐は飛びかかり、しっぽで叩き噛み付いて頑張ってはくれてるが魔物に飲み込まれてしまう。


 この世界で魔法を使えるのはごく僅かの人たちで、私以外で今使えるのはセイヴァンだけみたいだ。氷柱が降り、魔物を攻撃する。だけど魔物の量は多く、みんな疲弊していってる。


 形振り構ってられない。私は息を大きく吸った。


「ハーリー・ドリー」


 私は手を前に出した。これは私が他の作品で演じたキャラの呪文だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ