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前世が人気声優だった私は、完璧に悪女を演じてみせますわ!  作者: 桜咲ちはる


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33.レインとマイ


 私の足音に気づいて一斉に振り返る。セイヴァンだ!と感動するよりも前に私は剣を向けられた。


「え」


 何で……とセイヴァンを見ると、セイヴァンに庇われるようにしてベッドに腰をかけてる少女の姿があって。その顔を見た瞬間、固まった。


「レイン……」


 私はハッと鏡を探す。ううん、鏡なんて見なくてもわかった。オフィスカジュアルな仕事着にシンプルなネイル、転落したというのに手にはスマホを持っていて……私は現代の世界からそのままの姿で異世界に来たんだと気づいた。私は両腕を掴まれる。


「待って、セイヴァン!私、マイよ!」

「何を言っているんだ」


 怪訝な顔で私とレインを見るセイヴァン。レインは助けてくれないの?レインなら何でここにいるか疑問を抱いてるはずなのに。レインを見るとくすりと笑った。アニメでよく見ていた意地悪な笑顔で。


「レイン……」


 レインはやっぱり悪女なのだろうか。どうやって証明しよう……。あ、そうだ。


「セイヴァン!【氷の公爵のお姫様】のお話覚えてるでしょ?私なら今まで、セイヴァンとどうやって過ごしたか言えるわ!」

「その小説とやらで見た転生者だろう。2人の思い出は俺とレインだけが覚えていれば十分だ」


 連れてけ、と冷たくセイヴァンが言う。姿・形が変わっても、運命の人なら出会った瞬間にわかるなんてフィクションだったんだね……。


「あーはっはっはっは」


 諦めて従者に連れられ、部屋を出ようとしたらレインが笑った。


「あなた、私のことが好きならセイヴァン様を譲りなさいよ。私の体を使ってたんだから、それくらいしてくれてもいいでしょ?それにしても簡単だったわぁ。元に戻ってもあなたの記憶が共有されてるから、セイヴァン様から疑われることはないし」

「マイ……?」


 レイン……。当然の仕打ちだ。私はレインを好きと言っていながら、レインの体を利用した。


「なんて、冗談よ」


 ふふっと、レインが笑ってベッドから降りる。近づくレインを従者が止めるが、レインはまっすぐ私に近づく。


「会いたかったわ、マイ」


 今度はふんわりと優しく笑うレイン。初めて見る優しい表情にぽろぽろと涙が溢れてくる。そんな顔も出来たんだ……。


「わたっ私はね、レインのことが大好きで……幸せになってほしいって思ってて。それは本当なのっ。私が一番、レインのこと……見てきたから……」


 泣きじゃくる私の頬に手を伸ばし、レインは私の涙を拭う。


「知ってるわ。見てきたもの。あなたの今までの人生の記憶も、共有されていたわ」

「レイン……」


 私は従者を降りきって、レインに抱きつく。


「本当に、マイ……なのか?」


 セイヴァンがここでようやく理解したのか口をひらく。


「でもマイはレイン嬢で、えっと……」

「でも声は一緒でしょ」


 レインの言葉にハッとする。そうだ、私が色々探さなくてもレインの声優って証拠はここにある。


「本当に……」


 セイヴァンは呟いて、私たち2人を抱きしめた。そのぬくもりに、帰ってきたんだとやっと実感する。セイヴァンの元に帰ってきたのだと。


「みんなは無事?魔王はどうなったの?」

「マイの魔法で退治できたんだ。ありがとう」


 セイヴァンの言葉にホッとする。それともうひとつ、気になってたこと。


「姫奈先生……、アミューゼは?」

「牢の中だ。反逆者だからな、罪は重いぞ」


 ……そう、だよね。私はセイヴァンの手を掴む。


「アミューゼに会わせてほしい」

「それは……、いやわかった」


 一瞬迷って、セイヴァンは頷いてくれる。


「ねぇ、2人の世界に入らないでよ。私、このままじゃ婚約破棄される傷物令嬢よ」

「あ……。だ、大丈夫。セイヴァンが良い人紹介してくれるよ。ね?」


 なんて言いながらレインを2度見する。レインはセイヴァンのことを諦めてくれるだろうか。


「ああ」

「いやね、冗談よ。ここで一生遊んで暮らすわ。面倒見てくれるわよね?マイ」


 いたずらっ子に笑うレインが可愛くて、セイヴァンの服を引っ張る。


「いい?セイヴァン」

「わかった。特別だ」


 セイヴァンの言葉にレインが手のひらを向けるから、ハイタッチする。レインのことも無事解決して、あとは姫奈先生のこと。提案飲んでくれるといいんだけど……。セイヴァンはレインの部屋も用意してくれて、3人で今後生活するようになった。レインに聞いたら、レインは今は結婚する気がないようで自由に暮らしたいんだと笑っていた。


「マイ、マイは何で私のこと好きでいてくれたの?」


 レインの部屋に行くとレインに呼び止められて、話をする。不思議そうに純粋な表情を向けるレインにキュンとした。


「レインの声優になったってことが一番だけど。レインはまっすぐでいつも一生懸命だからだよ」

「マイが私の声でよかったわ」


 レインにそう言ってもらえてよかった。元に戻った時のことを考えなかったわけじゃない。きっとレインは怒り狂ってセイヴァンに迫ると思ってたから、こんなふうに笑えるのは夢みたいだ。明日、姫奈先生との面会だからレインをベッドに寝かせて私は囁いた。


「おやすみ、レイン」


 レインがこの先も幸せに暮らせますように。

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