31.直接対決
魔王が両手を広げ、黒いフィールドを作り出す。魔王は国王を刺して、地面に捨てた。セイヴァンが剣を持ち、魔王を攻撃する。私も使い魔を出して魔王を狙うと、アミューゼが炎で狐を焼き尽くす。
「姫奈先生、やっぱりやめましょうこんなこと。魔王と手を組んだら処刑されちゃいます!」
「うるさい!この世界は壊れるのよ。意味ないわ!」
アミューゼが槍を私に飛ばす。私は土魔法で防いだ。セイヴァンの方も気になるけど、まずは姫奈先生をなんとかしないと。私は闇魔法を出して攻撃する。姫奈先生を倒したくはない。和解したい。でも闇は光に飲まれてしまう。ドンッとぶつかる音がして、セイヴァンの方を見るとセイヴァンが床に倒れていた。
「セイヴァン!」
駆け寄ろうとした私の体に木の枝が絡みつく。手足や首を強く締め付けられ、私は歯を食いしばる。ここで本当に死んじゃうのかな……。
「姫、奈……先生、助けて……」
「助けるわけないじゃない。あんたのそういうとこ、嫌いなのよ」
苦しくて辛くて、気を抜けば意識が途切れてしまいそう。セイヴァンを見るとお腹を抑え、血を流している。助けなきゃ、なのに動けない。愛の力さえ発動しなくて、私とセイヴァンじゃダメなのかな……。
「違う」
もしダメだとしても、それは”私”だからだ。魔法を使いこなせないし、戦うのも怖い。この世界の人間じゃない。そんな私だからダメなんだ。
「あなた……」
お腹から声を絞り出す。
「あなた、この私に何をしてると言うの?今すぐ解放しなさい。この私を誰だと思ってるの?」
「何よ、ただの泥棒猫じゃない」
姫奈先生が、ううん。アミューゼがフンッと笑う。私は生きるために、アミューゼが望む私を演じる。
「泥棒猫はどっちよ。セイヴァン様は私の婚約者なのよ。渡さないわ」
「は?でも結ばれるのは私のはずだった!」
手に力が入る。私はアミューゼに向かって魔法を出した。アミューゼが体制を崩し、木の枝が消える。私は使い魔を出した。
「いい?最後に笑うのはこの、レイン様なのよ」
「お前はただの脇役だろうが!!」
アミューぜが表情を変え、魔法を繰り出す。私の体は自然に動き、防御する。すごい。さっきより魔法が手に馴染んでる気がする。これが、レインの力?
「何よ何よ何よ!何で邪魔するのよ!」
アミューゼの力が暴走する。肌にガラスの破片が当たり、血が流れる。だけど私は真っ直ぐにアミューゼを見た。
「何で私のことが嫌いなの?あなたが生み出したんじゃない」
「それは!愛のために悪役が必要だったからで、私は最初からレインのことが嫌いなのよ!」
やっぱり、初めから和解なんて無理だった……。アミューゼはただセイヴァンが好きで、他のキャラのことは愛していない。それでも私はこの世界が、【氷の公爵のお姫様】が、レイン・アルバドールが好きだ。
「私は好きよ、私のことが」
「は?」
アミューゼの攻撃が止まる。
「一途で一生懸命で、好きな人のためならどんなことでも出来る。レインの愛は歪んでるけど、本物だもの」
「そんなわけ……。レインにとってセイヴァンはただの飾りで、自分のプライドが許さないだけ……。それに、レインは自分のことが嫌いなはずよ!」
わかってる。レインを見てきたから、レインが自分のことどう思ってるか。だからこそ不器用にもがくレインが魅力的に思ったの。
「それでも好きなんだもの、仕方ないでしょ?」
ねぇレイン、聞こえてる?あなたの体を奪ってしまってごめんなさい。でも私はレインのことも愛してるの。ちゃんと、愛を持って演じてたの。
「レインは悪役令嬢なの!」
「でも、もう1人のヒロインよ」
主役はアミューゼだけど、レインだって幸せになるべきだわ。その言葉に応えるかのように魔法が強くなる。アミューゼが壁に打ち付けられ、倒れた。そのまま意識を失う。
「セイヴァン!」
私はセイヴァンに駆け寄った。触手が伸びてきて、私は魔法でぶった斬る。
「ほぉ?どこにそんな力が」
「転生チートはアミューゼだけじゃないのよ」
セイヴァンに触れると、セイヴァンが力なく私の手を握る。嫌だ、ダメ。死ななないで。
「逃げろ」
「嫌。絶対に逃げない」
きっと愛の力はあるはず。私はセイヴァンにキスをした。何度も口付けるけど反応はない。どうしたら使える?どうしたら応えてくれる?魔王の攻撃を闇魔法で防ぎながら考える。アミューゼには勝てたけど、同じように魔王を倒せるのだろうか。
「終わりだ」
魔王が空に手を翳す。無数の槍が降ってきて、私はセイヴァンに覆い被さった。
「逃げろ!マイ!」
「嫌だ!死ぬ時は一緒よ!」
セイヴァンの腕を掴んで逃げようとすると、魔王に攻撃され吹っ飛ぶ。今度はセイヴァンが私を庇うように覆い被さった。ああ、このまま死ぬんだ。
ーピカッ
その瞬間だった。辺り一面が真っ白になる。そこで安堵して、私は意識を手放した。




