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前世が人気声優だった私は、完璧に悪女を演じてみせますわ!  作者: 桜咲ちはる


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17.約束された未来


「セイヴァン様、私が」

「婚約者なんだ、これくらい出させてほしい」


 支払いをしようとするとセイヴァンに止められる。お礼を言うと、セイヴァンは私の頭を撫でた。最近、触れられるのが多くなった気がする。まるで愛されてるようで、気恥ずかしい。私は先に椅子に座って、手紙を書き始めた。


「そんなに面白いのか、その本は?」


 運ばれてきたコーヒーを飲みながら、セイヴァンが私に聞く。何をするわけでもなく、ただ前に居てくれてるだけだから退屈だろうな。私はチーズケーキまで頼んでしまったが、セイヴァンはコーヒーだけだし。


「ええ。仲良くなれたら嬉しいと思ってます」

「羨ましいな、君に夢中になってもらえて」


 フッと笑い、私に言うセイヴァンに息が詰まる。文字を書いてる途中だったら間違いなく失敗してただろう。私はペンを握ってセイヴァンを睨む。


「思ってもないくせに」


 ヒロイン以外に甘い言葉を言うセイヴァンは解釈違いだ。とはいえ、リップサービスをするタイプでもない。私はペンを置いてセイヴァンに向き直った。


「セイヴァン様、あなたにはいつか大切な人が出来るわ。優しくするのは園子にとっておいて」


 セイヴァンは首を傾げる。今言われてもわかんないよね。でもアミューゼは登場してるんだし、きっとすぐにわかるはず。


「それが君だとは考えないのか?」

「だって私は悪女よ。知ってるでしょう?」


 私が転生する前から、わがままで贅沢三昧で婚約者のセイヴァンにも冷たかったはず。中身が私になってもやることは変わってない。のに、セイヴァンは立ち上がり私を抱きしめた。


「誤解されてるだけだ。そうじゃないことは、俺がよく知っている」


 ああ、悪女ムーブが効かないなんて。さすがヒーロー。手強い……。私はセイヴァンの胸を押した。


「離してくださる?私は手紙を書かなきゃいけないの」

「ははっ、わかった。終わったらデートしよう」


 さらっと言われた言葉を、私は聞こえないフリをした。だけど実際は頭から離れなくて、何度も手紙を書き直してはぐしゃぐしゃにする。こんなにも早く、セイヴァンがストレートに言うなんて聞いてない。現実の世界で、恋愛経験はあまり多くなかったから一言一言が心臓に悪い。


「どうした?レイン嬢」


 テーブルに突っ伏した私の頭を、セイヴァンが撫でる。


「優しくしないでください」

「無理だな」


 即答って……。うぅ、と私はテーブルに額をくっつける。またアミューゼに怒られる。ヒロインだって大好きなのに、怖いと思いたくはない。けど、アミューゼの転生者はきっと怖い。


 どうせなら知ってる人が転生してくれればと思ったが、こんな思いするのは大変だと思い返す。今頃みんな何してんのかな……。時間は進んでるのかな……。次の仕事、私がいなくて迷惑かけちゃってるんだろうな。違約金すごそうだな……。セイヴァンの手が気持ち良くて、そのまま寝てしまいそう。


「セイヴァン様……」

「ん?」


 考えれば考えるだけ落ち込んで、私は深くため息を吐いた。がばっと起きて頬を叩く。セイヴァンが驚いた顔が見えたが、気にせず私は手紙を書き進めた。


 私が転生者なこと、元の世界に戻る方法がないか。出来れば仲良くしたいことを書いた手紙をシンザーさんに渡した。挨拶を済ませると、セイヴァンは私の手を掴む。


「ちょ、ちょっと」

「街で会ったのも何かの縁だ。婚約者ならデートするものだろう?」


 当たり前のように言われて口籠る。これから朗読会でもしようと思ったのに、しっかり手を掴まれて逃げ出せそうにもない。どこ行きたい?とセイヴァンに言われ、私は悩む。小説の定番だと劇場やショッピングとかだけど、今はそんな気分でもない。あ。


「魔法!魔法教えて」

「それはデートなのか?」


 だって魔法の授業、全然わからないんだもん。私はセイヴァンの手を引っ張る。


「いいじゃない、細かいことは」

「わかった」


 セイヴァンは私と手を繋ぎ、学園に戻る。高等部の校舎に入り、事務員に話しかける。それからセイヴァンはグラウンドに向かった。


「レイン嬢、どこがわからないんだ?」

「何もかもよ。セイヴァン様に教わった魔法くらいしか出せないわ」


 セイヴァンは驚くけど、レインは元々魔法の授業は見学して聞いてなかっただろうし変じゃないよね?


「授業で習ってるだろう?」

「授業がわかんないもの。あ、使い魔は出せるわ」


 ほら、と黒いきつねを出して見せる。セイヴァンは苦笑した。


「闇魔法は五大魔法の派生形だ。人は皆、火・水・風・木・土の五大魔法の中で自分に合うものを探す。俺は水だった。レイン嬢はどれになる?」


 アミューゼは確か全部使えたはず。レインは……、アミューゼをいじめる時くらいしか魔法は使わなかったしそれだって闇魔法だけだった。私は首を横に振る。セイヴァンは私の手首を掴んで、私の手のひらを上に向けた。


「手のひらの上で球を回すようなイメージをするんだ。五大魔法を順番に思い浮かべていくと、自分に合うものが魔法になって現れる」


 セイヴァンは人差し指を私の手のひらに向け、くるくると回して手を離す。ゴォォと音がして風が吹き、水飛沫が跳ねる。木の葉が風に乗って回り、火の玉が円形に浮かぶ。そして、手のひらから砂が溢れ落ちた。


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