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前世が人気声優だった私は、完璧に悪女を演じてみせますわ!  作者: 桜咲ちはる


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小休憩 アミューゼの転生者


 何で何で何で何で!?私はうさぎのぬいぐるみをベッドに叩きつける。全部、全部がおかしいのだ。セイヴァンが中等部に来たことも、人前で……いやそうでなくともセイヴァンがレインにキスすることも。


「あんなのセイヴァンじゃない!」


 机の上の原稿用紙を破り捨てる。私が”書いた”セイヴァンはアミューゼだけを愛していた。そもそもセイヴァンの妹が死んでないことから小説は、ずれていたんだ。本当は小説通りに動こうとしていたのに、セイヴァンの妹の病が完治したと聞いて驚きセイヴァンに会いに行った。


 小説だと何度か出会ってから好きになるとはいえ、初対面でお互いかなり惹かれていたはずだった。のに、セイヴァンはアミューゼの目の前でレインにキスをした。


 ありえないことが起きているというのは、セイヴァンかレインも転生者だと考えるのは自然なことだった。私の作品を汚すなんて信じられない。でもレインには魔力がなさそうだし、セイヴァンかもと思いながらも私は色々試してみた。そして、【運命の人】の話題にレインが引っかかった。


「絶対許さない」


 転生者はレインだった。【運命の人】のストーリーを説明した時にだいぶ動揺していた。私の言葉に乗っかる気はあるみたいだけど、どう見ても悪女ではない。小説の読者、つまり私のファンだっていうのに小説通りにはやらないし。セイヴァンと出会う時期を早めて正解だった。


 私は【運命の人】の続きを書き直す。必要悪とはいえ、転生できる枠を増やしたのが間違いだった。すぐに悪役令嬢は殺さなければ。セイヴァンもレインも小説の通りに動いてもらわなきゃいけない。【氷の公爵のお姫様】や【運命の人】と同じように、悪役令嬢は断罪されるべきなのよ。


「セイヴァン様」


 高等部に行ってセイヴァンを見つける。駆け寄るとセイヴァンが振り向いた。透き通るような銀色の髪に、深い青い瞳。鼻は高く色白で、整った顔をしている。まさに私の理想の王子様。


「アミューゼ嬢、どうしてここに?」


 アニメの声優と同じかっこいい声。アニメ化した時も感動したけど、私の王子様が動いている。ひとつひとつの声も仕草もかっこよくて、今すぐに抱きしめたかった。


「セイヴァン様に会いにきましたの」


 腕を掴むと離される。氷の公爵だもの。すぐに心は開かないの。でもそんなところもかっこよくて、だから溺愛モードになった時の反動がやばい。


「用もないのに高等部に来ない方がいい。変な子だと思われる」

「誰に何言われても平気ですわ」


 前世はブスでデブで、小説が書けることだけが唯一の取り柄だった。けど今は誰もが振り返る美少女ヒロインで、私に惚れない人はいない。私はセイヴァンの腕に抱きついて、頬擦りをする。セイヴァンが私の肩を押した。諦めず、私はセイヴァンの手を掴む。


「もっと早く、セイヴァン様と出会いたかったですわ。そしたら邪魔なんて入らなかったのに」

「何言われても、俺はレイン嬢の婚約者だ。他の人とどうにかなる気はない」


 セイヴァンが去ろうとする。私は「きゃっ」と声を上げて、わざと転んでみせた。セイヴァンは一瞬振り返ったものの、気にせず歩いていってしまう。氷の公爵に設定したのは私だけど、アミューゼにまで冷たくするようになんて作ってない。


「やっぱりレインには今すぐ死んでもらわなきゃ」


 転生悪役令嬢ものによくある、悪役令嬢溺愛ストーリーなんて要らないの。愛されるのは私だけでいい。この世界の特別な存在は私だけがいい。

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