15.役割
「魔物討伐!?」
先生から説明を聞いて私は驚く。
「大丈夫だよ、俺たちが一緒だから」
「セイヴァンは大人と同じ力があるし」
ミンハルたちは平然と、というよりむしろ楽しそうにしている。ラプァールド山の時も怖かったから、出来れば関わりたくない。ぽんとセイヴァンが安心させるように私の頭に手を置く。私はセイヴァンを見上げた。
「君は俺が守る」
「ひゅー、かっこいいわ」
冷やかすミンハルに「うるさい」と怒るセイヴァンから目を逸らした。
「セイヴァン様!」
アミューゼが前に出て、セイヴァンの名を呼ぶ。
「私は告発しますわ。今までレイン嬢とはお友達だと思ってましたのに」
アミューゼは何を言うのだろう。セイヴァンの手が私から離れる。優しくされるのも、今日で終わりかな……。
「私、転校してすぐいじめられたの。その主犯がレインだって、やっとわかりましたわ」
「へ?」
いじめの主犯?セイヴァンが私の腰を抱き寄せる。
「何か誤解があるみたいだ。レイン嬢はそんなことしない」
少しも疑いもせず、セイヴァンが信じてくれるのが嬉しかった。でもアミューゼはなぜ私だと思ったのだろう。証拠は何もないはずだけど、一緒に食事してる間に何か掴んだのかな。
「何の証拠もなく、侯爵令嬢を疑ってはいけないよ」
ミンハルがアミューゼを嗜める。アミューゼは何で急にそんなこと言ったんだろう。
「レイン・アルバドール」
フルネームで呼ばれて驚く。アミューゼは私を睨んでいた。
「あんた、自分の役割わかってるでしょ」
その言葉に目を美春。少し前に感じた違和感……。彼女も、転生者だ。そして【氷の公爵のお姫様】を知っている。私はバッとセイヴァンの手を振り払った。
「あら、私に付きまとうくらいだからいじめてほしいのかと思ったわ。たくさんいるのよ、私にいじめられたい人」
「ひ、ひどい」
目に涙を溜め、セイヴァンに抱きつくアミューゼ。振り切った演技に賞賛する。アミューゼに任せれば自然と両想いになるだろうかと思いつつも、アミューゼも転生者なことに不安を覚える。元のアミューゼよりも積極的だし。
「本当なのか、レイン嬢……」
「ええ。でも退屈でしたわ。全く泣かないんですもの」
アミューゼの力を借りなきゃ悪女になれないのもどうかと思うが、正直ありがたい。セイヴァンは私の頭を掴んで、下げさせた。
「すまない。これからは俺がちゃんと見ておく。お詫びに何か好きなものを渡そう」
「それなら、アミューゼって読んでほしいですわ」
セイヴァンの服を掴んでアミューゼが言う。私はその手から目を逸らした。
「それだけでいいのか?アミューゼ嬢」
「はい、嬉しいです」
2人が見つめ合う。私はスカートをぎゅっと握った。セイヴァンと食堂を出て別れ、教室に向かう。とぼとぼ歩いてると、走ってきたアミューゼが私の手を引っ張った。
「話があるの、泥棒猫」
いきなり泥棒猫呼ばわりはどうなんだ?と思いつつ、おとなしくアミューゼについていく。階段の端でアミューゼが止まった。
「何セイヴァンと仲良くなってんの?私とセイヴァンが両想いにならなかったらこの世界がどうなるか知らないの?」
アミューゼの言葉に首を横に振る。私だって、世界が滅びないように小説通りに進めたい。アミューゼが腕を組んで舌打ちをする。
「わかってんならセイヴァンに嫌われてよね。大体セイヴァンは私のなのに
」
アミューゼに返す言葉がなくて、こくこくと頷く。アミューゼからセイヴァンを取る気なんてない。私は平和に、元の世界に帰りたいだけ。
「そうだ。元の世界に帰る方法知ってたりしない?」
アミューゼの腕を掴んで問いかける。私が気づかなかった帰るヒントがあるかもしれないと思ったけど、アミューゼが手を振り払う。
「ないわよ、そんなもん」
……ですよね。私はがっくしと肩を落とす。アミューゼはびしっと私を指差した。
「とにかく、私に協力するなら処刑回避させてあげるからよろしくね」
手を掴まれ、握手される。アミューゼの転生者は元気で、少し怖い一面もあった。でもおかげで気を引き締められた。私はレイン・アルバドール。アミューゼとセイヴァンがくっつかなきゃ、世界は救われない。
わかってるのに胸が痛かった。そりゃ、【氷の公爵のお姫様】のファンなんだ。私だってセイヴァンのことは好き。こんなかっこいい人が私を想ってくれたら、守ってくれたらと想像したこともある。でも、セイヴァンはアミューゼのもの。私が本気になってはいけない。
私は両頬を叩いて気合いを入れ直す。アミューゼとは仲良く出来ないかもしれないけど、転生者がもう1人いると物語通りに進まなきゃいけないと思える。今はまだわからなくても、元の世界に戻る方法もあるかもしれないし。私はAmi先生とコンタクトを取ろうと心に決めた。




