プロローグ
中国の歴史には、ただ一人“女帝”の名を残した人物がいる。唐の武則天――そう教科書には書かれているでしょう。ですが、あなたはご存じでしょうか?もう一人、男として育てられ、中華を統一した女がいたことを。
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昼下がりの洛陽。賑やかな街に、突如、略奪を繰り返す契丹の騎馬兵たちの蹄の音が響き渡ります。平和な時間は一瞬で破られ、趙燁華(男名:趙匡胤)は、目の前で大切な人が連れ去られるのを、ただ見ていることしかできなかったのです。
「力のない者が、こんなにも簡単に奪われてしまうのか?」
その問いが、幼い彼女の胸に深く突き刺さりました。この理不尽な世を変えるため、もっと強く、もっと賢くならなければならないと、燁華は心に誓います。傍らにいた妹・翠琴もまた、姉の手を握り、「自分を守れるようになったら、今度は、みんなを守れる人になりたい」と固く誓いました。
これは、激動の五代十国時代 を舞台に、男としての運命を背負い、運命に抗いながらも、愛する者たちと共に中華統一を目指す、一人の女帝と彼女を支えた妹の、壮大な物語の始まりです。
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※このお話は『資治通鑑』や『宋史紀事本末』『五朝名臣言行録』
などの歴史書をベースにした、恋愛色つよめのフィクション小説です
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