東にあるは天与の地④日高見黄金湧出(ゴールドラッシュ・イースタン)
663年の白村江の戦いの後の話だった。
祖国復興の為に海を渡って戦ってきた璋兄が帰ってきた。会った時にゾッとした。痩せこけて目だけが光っている。
「豊璋王、お久、、、。」
「善光、その名で呼ぶな!」
苛ついたような、吐き捨てるような調子で叫んだ。
「璋、兄ィ、、、、。」
「、、、、、その名も捨てる。これからの名は中大兄王に近侍する鎌足。」
「倭国名だけにするってことか?」
「もともと居た鎌足はずっと倭国に居た。豊璋王は唐に捕らえられ処刑された。それだけだ。百済の衆とも縁を切る。お前がまとめてゆけ。」
「何故、、、。」
命からがら倭国に戻ってきたが、苦り切った顔は緩まらない。
「宿願を果たせず、配下も仲間も見捨てて自分だけがやっと帰ってきた。合わせる顔があるか!」
うっすらと目に涙が浮かんだ。
「百済王子善光、これからは宅を訪ねるなら鎌足を訪ねるということで。」
呆然とする善光を放って璋は住み慣れた邸宅を出た。そして戻ることはなかった。その頃から中臣氏の隆盛は始まり、後に藤原氏と名乗ることとなる。そして百済遺民の中心は善光が始祖となる「百済王氏」が担うこととなる。
古代の公卿に百済王という姓を名乗る一族がいた。名前の通り百済の王に出自を持つ一族だ。直接の祖は百済最後の王、義慈王の子善光である。白村江の戦いの前から日本(当時は倭)で支援の代わりの人質として、又はいざという時の跡継ぎとして過ごしていたが、唐・新羅の連合軍に百済・倭軍が敗れ祖国の復興が絶望的になると、この一族は倭国に骨を埋める覚悟を決め、難波に居を賜り由来を忘れぬように百済王の姓を名乗るようになった。
およそ100年が過ぎ代を重ねて聖武天皇の治世、百済王の支族が集まった。
「陸奥守として赴くと?」
氏の長者、郎虞は息子に問うた。
「ええ、陸奥国が良いです。もう働きかけをしています。」
陸奥国かぁ、郎虞は思った。馬鹿みたいに広い未開の国、蝦夷が跋扈する東夷の地、白村江の戦い以前から国が手をつけるも開拓は遅々とした歩みの寒き所。
「坂東よりも遠いのだぞ。アレだろ、東山道の路を下野国からさらに北に上がったまさに道の奥の。」
息子、敬福は頷いた。
「我が支族が栄える道はそこにあるのかと。いつまでも藤原氏を横目に、、、というのは。」
こういう男だ。恵まれた場所に生まれるもそこには収まりきらない奴だ。
「、、、、赴任が決まったら藤原に挨拶を忘れるな。身体に気をつけろよ。」
「はい。」
百済王郎虞の子、敬福が陸奥国の守として赴任したのは郎虞の死後の743年であった。45歳。男として脂が乗った頃だ。
そうして三陸海岸が始まる下、海岸線が大きく曲がる松島湾に近い陸奥国府に着いた。道すがら報告は聞いていたし、下調べもしてきている。しかし思った以上の辺境だ。
「みちのく、、、みちのおく。」
そうとしか言えないなと思う。儀式もそこそこに任地を周る。と言っても現福島県北部から津軽海峡まで達する巨大な地の北半分は放置されている。まずは南部から開拓を進めている。100年前の白村江の戦い以前の阿倍比羅夫の遠征以降の国家のふわっとした指針だ。
「こここそが私の、支族の未来を開く場所、、、、」
村の様子は畿内とは違う、住人は柵と呼ばれる囲いの中に暮らし、日が昇ると扉を開けて周りの耕地に出かけてゆく。そんなものがない畿内とは異なる緊張感がある。いくつか回って気づいたが明らかに日本の民と異なる民の村がある。
「ここの村は蝦夷か?」
「左様で。」
役人も田舎びている。国府の開拓方針は諸国からの開拓民の移入ともう一つ、蝦夷の定住化だ。もともと焼畑をしていた移動農耕民である生蕃を定住させ、水路を作り生産性の高い穀物を作らせ熟蕃とする。
「海の向こう中華で行われている伝統的蛮族政策だ。どこでやっても効果的というわけか。」
国衙に腰を据えると決裁と儀礼、報告を受ける日々だ。忙しい日々に生まれ育った難波への懐かしさが紛れてゆく。
「ここにも国分寺はあるがな。畿内は他にも同規模の氏族寺がそこいらにあるのだ。物成も豊かで、良い土地だよ。」
「はぇー。そんなものですか。」
地元採用の下級官人が感嘆の声を挙げる。せっかくだからそういう連中ともよく話す。
「しかし、この広き地もいずれそうなる。人が増え、耕地がゆっくりとでも増えている。租の資料を見れば分かる。」
これは介や掾と言った上級官人と話す。
「名取川、北上川といった川も堰掛かりで使えたらな、、、暴れ川だから難しいか。せめて池掛かりが出来るようにため池を作れればな。」
国府としても計画案は作っているがまだ先になりそうだ。
「仏法衆はここには居ないのか?」
「へ?なんですか、ぶ、ぽう、、、しゅう?」
キョトンとした表情、やはり畿内とは違い、居ないか。ここらへんも開拓の進みが遅い所以か。
庸、労徭の振り分けも路や国府の整備から村のため池や陸奥国の村々をより繋げる小道の整備に振り分け直す必要がある。軍役中の壮丁を使うのも良い。これは国衙内で提案しよう。
「国司様に来て頂いて、光栄です。」
村長イダテは言った。ここも蝦夷の村。いや、もう元か。水路が通り、夏の風に青い稲がそよいでいる。何せ阿倍比羅夫に誘われ定住して稲作をして100年。もう立派な律令の民だ。
「ため池はこの前出来ましたが、何か気にかかることはありますか?」
陸奥国守の問いにイダテは顔を曇らせ、小声で言った。
「まだまつろわぬ者がいます。未開地に逃げ込んで我々も敵視され困っています。」
蝦夷の中も一枚岩ではないのか。国衙に帰ると畿内から人が来ていた。
「秀真!こんな遠地に来たのか!」
「お久しぶりです。」
難波で百済王支族に仕えてきた顔なじみだ。
「半年も王子から便りがないので王が心配しています。」
「その呼び方は外ではやめろ。変に聞こえるだろう。」
笑いながら言った。
「百済王支族から若に就任祝いを。丁度、船が出ましたので。」
入り用だろうと、色々送ってきている。それよりも
「お前がやっと来てくれて事が進みそうだ。私人衆を統括してくれ。」
「わかりました。おまかせを。」
赴任に際し、幕僚以外に支族から私兵「私人衆」を連れてきている。防護だけではない。国府の事務以外の任務についてもらっている。陸奥国に来た裏目的用の私人達だ。
「上総国百済衆には知らせています。まずはこっちで当たりが付けば良いのですが。」
「なかなか大変そうだぞ。」
実感がこもっている。
百済王支族は単に元王族というだけではなく、日本で生きる百済遺民の相当数の繋がりの中心だ。難波の屋敷周りにも集まって住んでいるし、各地に散った職人衆や民集団とも連絡を取っている。その中でも金堀衆の知らせに耳を澄ませている。どこでも地蔵の鉱物を発見できた者が権を得る。巨大な露頭、川への流出を第一に見つけ我らがモノとする。百済王支族の密かな願望であった。それがあれば藤原氏を追い抜くのも不可能ではない。同じ出だといえ、今のこの差は淋しいものがある。ここで当てることが出来たならそれがひっくり返るかもしれない。新しい故郷と定めた日本という天下に地に蔵された金銀が解き放たれたなら国全体が富む。昇る百済王氏と共に日本国も栄える、いい事ずくめだ。だから陸奥守として職務に励み、密かに裏目的も成し遂げるよう努める。好機が今だ。
「今上様は黄金探索令を出された。この陸奥国の地蔵宝の知らせはどんな些細なものでも良い、残らず報告するように。」
国家安寧を願う盧遮那仏建立の為に令が出されている。守の職権で情報を集めることが出来る。これを陸奥国でささやかに動く百済金堀衆、百済王私人、いずれ来る上総国百済金堀衆にも渡す。国府側が探し当てることが出来るか?金堀衆が先か?恨みっこ無しの競争だ。技術は金堀衆。勝つ公算はある。
「例えば稲の発育が悪い所の土がキラキラしているとか、川底が光る不思議な場所がある、海岸で朝夕に光る一辺がある、山に独特の雲が立つ。そう言った知らせに注意せよ。」
官人に訓告する。黄金を探せと言われても、、、。戸惑っていた官人の顔が明るくなる。
「職務中に文書の中、民との話の中にそのようなことが見つかったら知らせる。それが黄金探索の任だ。官人が休みに山狩をするようなものではない。諸君らは(耳や目)となれ!」
「「「はい!」」」
「有力な知らせにはこれらの報酬を与える!」
難波の本拠から送ってきた物品だ。これは使わない、報酬に回す。
「「「おー。」」」
驚きの声が上がる。気合が入ったな。
「それではいつも通り励め!」
敬福も執務場所へ戻った。
秀真は私人衆と共に奥州金堀衆に会った。
「いくつかは、というところだな。」
砂金が小規模に採れるがあくまで少量だ。しかし長年取り組んできた金堀衆の目からすると少し違う。
「前にも上総国衆に伝えた通り、どこか巨大な源からほんのひとすくいが散っている、そのような感じなのです。どこかに流れ出している本流があります。名取川から北上川の間くらいかと。」
「それでも広域だな。」
クラリッとした。しかし職務に忙しい若に変わって私が頑張らねば。
「百済を離れた苦難を想え。」
この100年、遺民達は誰もがそう言っている。だから生きていけている。結びついて心を重ねて。
一年目の業績は裏も表も並というところだろう。万事準備に明け暮れた。
「御老体、こういう掘った土がキラキラ光るそういう場所はありますか?」
今日は中山柵に来ている。ここで陸奥国の軍団を動員して水路を掘っている。その視察に来たついでに古老に聞いた。心当たりはなさそうだ。手に持った土をいじる。
「国府の無駄な普請を少し削り、その費で柵の整備をする。人手は訓練も兼ねて軍団を使い安くあげる。これだけのことが大変なことだ。」
ゴチる敬福に大人達が連れ立ってきた。「耕地から逃げ出した俘囚達が賊蝦夷に合わさり、困っている」と城柵のうち、小さいものを指す柵住民達には恐ろしいだろう。根拠地は国府の北東、ここの南西、小田郡の辺りか。軍団の駐屯地の向こうのほうだ。いずれは手を付けねばなるまい。
数日後、官舎に帰ると資料を見る。黄金に関するかもしれない話は集まってきている。政務が忙しく秀真に任せっきりだ。これらの報告も写して渡している。
「失礼します。」
若い女が入ってきた。
「陸奥姫、良いところに来た。腿を貸してくれ。」
召使だ。元は村娘のムッ、だから陸奥姫と呼んでいる。頭を乗せるとすぐ寝入った。
「本来なら、遠国の実入りの良い、、、例えば信濃国を務めて、次は畿内のどこか。それをもって中央へ、、、、それが固い出世の、、、。」
親父殿、それはそうだが、それで藤原に、、、というより、鍛えた才覚を試したくはないのか、、、?ハッと目覚めた。
「うなされてましたね。」
パッチリとした目が言った。疲れていたのかな?
「よく民からあがってくる賊蝦夷というべき連中の数はどれくらいだ?」
問うとおよそ兵300というところらしい。しかし恐ろしく素早く、軍団が近づくと荷物をまとめて移動する。そんなとらえどころのない連中、とのことだった。
「それで兵が退くと、さっと戻って来る。あそこらは畠も田もないので苦労して取っても疲労するだけです。」
役人も税が上がらない地への注力はしたくない。負ける可能性もある。
「でもいつかはせねば。民を安んじて産に専念させることこそが。」
国家の役目だ。役人はその意識が低い。地方豪族の小間使えではないのだぞ。
「今度の陸奥守様は優れたお方じゃ。」
国衙でも村でもそんな声が聞こえ始めた。そんなものかとは思う。百済の王族だった難波の邸宅には蔵書が揃っていたし、代々仕えてきた遺民に囲まれていた。儒教が半島に染み込み始めた時期を経験しているからやんごとなき身分の生まれでも己を鍛えるのは当然と育てられてきた。そして資産も人材も氏族には豊富だ。それも持って任地に来ている。これぐらいは出来るだろう。
「若。」
秀真が訪ねてきた。
「知らせのお陰で、やはり陸奥国にはあるのはわかります。浜の砂に砂金が少し入っています。その源を当てるのはまだかかりそうですが。」
「なら、そろそろ下野衆も呼び寄せようか。以外に国府側もやる気だからな。」
「はい。使者を走らせておきます。」
「おう。」
「ひぃーーー。」
国府の役人が総じて言っている。任期も二年目の敬福が戸籍の点検を命じたのだ。
「治世の基盤の戸籍がでたらめすぎる。視察で訪れた村々の実情と違えすぎだ。」
これを言われた時、役人達に戦慄が走った。そんなものは全て村長任せの適当なものだ。ちょこちょことした間違い、ごまかしはあって当然なものだ。
「そりゃ、近年はだらけているが、そもそも最初から、、、。」
しかし面と向かっては言えない。何せ私財を費やす貴人が尻を叩いているのだ。
「この戸籍が実際に比べて多いにしても、租調庸はちゃんと納められている。ということはどこかに過重な負担があって辻褄が合っているということだ。減っても良いから是正しなければならない。」
守が正論を言うならどうにもならない。とにかく村々に正確な把握が要請され、やりやすいところから手を付けている。
「増えている村、人を把握すれば減収も少ないはずだ。」
秀真に任せっきりなのはこういう事情もあるのだ。官舎にまで仕事を持ってきて呻いている敬福を陸奥姫はじっと見ていた。
中央からの通達に三年目の国府は揺れた。
百済王敬福、上総国に転任
が通達されたのだ。
「実家だな。」
うんざりした顔で敬福は言った。すぐに秀真が呼ばれた。
「こちらからも奥州にいれるように要請を出す。お前は難波の実家に中央への働きかけを取り消して欲しいと伝えてくれ。転任には今のところ従う。ついでに黄金はもうすぐ見つかりそうなので、是非、ともな。」
急いで八道を使い難波へ。途中、藤原宗家にも知らせてから邸宅へ。数十年の間に律令がたわんでいる、なら必要なところに持ち込めば覆すのも容易だろう。
結局、4月に上総国に転任、9月に陸奥国に再任となった。巻き込まれた新陸奥国守石川年足は狐につままれたような顔をしていたという。
「あの守殿が帰ってくる、、。」
転任に伴い暇を出された陸奥姫は村で呟いた。
陸奥国府は歓迎ムードだ。才覚と財力に満ちた陸奥守が行政を引き締めてくれることは、疲れるがやる気が出る。しかも今回の再任に際してより多くの人員を連れてきている。この辺境にそこまでかけているのか。
「呼び寄せようとしていた金堀衆の居る上総国に任命されたのも、天命だった、ということかな?」
直接口説けたからこその上総国衆の北上である。もうすぐ秀真も来る。そうすれば地蔵宝の探索も進むだろう。できれば黄金であってほしい。と思っていると、翌日からは決裁の日々。そちらの方は秀真頼みになるな。
「海からの山型がやや丸みを帯びている。そしてそこから伸びてくる川。付近の浜の砂にも少々、砂金、、、。ここをさかのぼるべきでは?」
陸奥国到着より1年近く、上総国衆の気付きに私人衆、陸奥衆共に頷いた。秀真は敬福からの知らせの中の一遍を思い出した。「今は賊蝦夷が占める小田郡に日を受けて輝く川があった(古老談)」ここだ。場所をつかんだ。
「よりにもよって、そこか、、、。」
百済王敬福は嘆じた。なるほど黄金探索令を受けて官人と組んだ郡長、村長も動いているのに結果が出ぬはずだ。賊を除かなければならない。しかし兵事は慎重に行かねば、というよりガタがきている軍団制で何とかなるのか?
数週間後、小田郡を向こうに控える中山柵に敬福はいた。警備として陸奥国軍団も何人か連れてきている。
「国守様がまた来ていただけるとは、、、。」
村長イダテの隣には陸奥姫。そういえばこの村から来ていたな。
「今夜はごゆっくり。」
山向には私人衆が潜入している。せめて無事を祈るか。日が暮れても小田郡の方を眺めている。
「ご熱心ですね。」
陸奥姫が言った。
「わざわざ陸奥に来た。希望して。そりゃ熱心さ。」
「官舎に書簡を持ち込んでまで励む、これまで居られない漢ですね。」
語調が変わったのを感じ振り向く。見つめている。
「国衙で熱心、そしてお供の方々がほうぼうを探して歩いて何かにご執心。何を見ています?」
驚いた、鋭い目つきだ。ならたばかるのは良くない。
「陸奥国にも黄金探索令が出ている。なら自らも動くべきだろう、ということだ。」
「我らが村はヤマトがこの地に来たころに地に縫いつけられて生きることを選んだ。」
「、、、、、」
目が悲しみを帯びている。
「初めて食べた米の旨さがそれをさせた。地に縫いつけられてるなら、これをいつも味わえると。それに従い、土を掘り耕し、水路を作って生きた。我らは増え、時々は米を食べれるようになった。」
今、女はこの地の霊の声を出している。一人の人の根本にあるこの地の思い。
「でも肥え太るのは国府。そしてヤマトはますます増える。貴方達は、我らを誘った言葉を守っているのか?」
「、、、、国家というものの思いや動きがとらえがたいのはどこでもそうだ。しかし間違いなく守るように努めている。中山柵はじめ、各城柵の発展を思い返してほしい。貴方達も栄えている。それを知ってほしい。」
「そう言って、米の次は黄金を持ち去る気?」
百済王氏のみのことを考えるならそうなる、しかし、
「この地で黄金が産するなら、天下を巡り国の全てが潤う。持ち去るのではなく地に隠された富や宝で人界が幸せになる。必ず。蝦夷であっても、もちろん。」
「蝦夷ではない。エミシ。」
「ああ。エミシも。」
「今、貴方様の供回りが潜んでいっているところに居るエミシ達が我らの姿。野を焼き、風のままに動く我らの。」
「手荒なことは好まない。勝てるかも分からんからな。しかし実は手を携えてこの地を栄えさせたいと思っている。さらに人が増え、米が獲れ、黄金が湧くことで。」
「その言葉は彼らに届かない。この100年のヤマトの在り方を彼らはよく見ている。」
「しかし、言葉は伝えさせてもらう!」
「、、、、、、、、。」
目が敬福をとらえている。
「ヤマトは言の葉が多い。言の葉は魂の震え。そんなに多くは出せるものじゃない。どこかでイツワッテいる。」
「ヤマトじゃない。日本だ。そして百済でもある。耳が痛いが、、、。国を成り立たせるためには多くの言葉がいるのだ。なかなか人としての目ではとらえきれないが。」
陸奥姫が静まってゆく。
一ヶ月して私人衆が戻ってきた。「黄金在り」であった。
「こうも大げさにすることもあるまい。」
陸奥国軍団から兵が出ている。数100。それに私人・上総・陸奥衆が加わる。
「相手が相手、降るとは言え何をする気かは分かりませんので。」
軍団の長の気遣いであった。川の流れの下に砂金が積もっている。凄まじい量だ。
「探しに探した地蔵宝じゃ!」
「これほどの黄金、信じられん!」
川に入った上総衆が騒いでいる。敬福の横には小田のエミシのオンタテ。陸奥姫の兄だ。
「我等を仲間としてここで扱うのはイツワリではないな?」
「百済王氏の決意は国家よりも分かりやすい。信じてほしい。」
「100人近くは袂を分かち外へ去った。いずれお前達が砂金を浚え、川を濁すように世を騒がすぞ。」
「それをも超えてゆく。この地、川、山、人そして兄妹オンタテ、ムッに誓う。川底の黄金は比類なき栄えをこの地にもたらす!」
オンタテの言う通り、広がる水田と村に溶け込めずに去った者達はこの先の時代に阿弖流爲という者に率いられてこの奥州の地で国軍と激突することとなる。
そして百済王敬福が言ったことも実現した。奥州が産し続ける「河底の黄金」はより日本の欲望をこの地に集め、エミシ達や彼らの文化をも取り込み融合しさせて北方の未開地を拓き「日本」という天下に陸奥国・出羽国を加えて栄えることとなったのだ。
日高見と呼ばれた陸奥国で産した莫大な黄金は盧遮那仏の塗金の為に3000両もの量が都に捧げられた。これにより聖武天皇の10年を懸けた悲願、大仏建立は成った。しかしそれだけではない。それ以後も続く黄金の産出は日本国内の商品との交換で都ばかりか四国、九州まで行き渡り、海外の文物、知識の流入のための決済にも使われた。黄金の魔力は留まらず、活性化され増加した商品の奔流を円滑にするための「貨幣」を中国銭に求め、日本の天地に銭の津波を呼び寄せた。元々が稲作信仰の聖性の上に立っていた古代王朝は自らが成した支配範囲の拡大、社会の発展によって生まれた商人の登場によって揺らいでいた、そこに銭の大波である。これ以後、皇統が自らを再定義して日本という世界での位置を据え直すまでは亜細亜極東の小天地に生き残った太陽神の末裔達は出どころがわからない激震に見舞われ続けることとなる。まさに何処かの神話にいうように
「川底から取り出された黄金が神々をも焼き尽くす騒乱を招いた」
のである。
善光、、、、義慈王の子のうち兄弟の豊璋王は半島に渡り戦っていた。「豊璋王=中臣鎌足説」はマイナー学説としてある。面白いのでここではこの説をとる。
生蕃、熟蕃、、、、中国では異民族の定住度合いで2つに取り分けていた。
堰掛かり、、、、河川に堰を作り水路を通し耕作に活かすこと。実行するなら、天水掛かり、清水掛かり、池掛かりよりも技術と力が必要。
国府の四等官、、、、守、介、掾、目
地蔵宝、、、、柳田國男の「地蔵仏という言葉は地下に眠る宝を彷彿とさせ、、、これを世に解き放つ、、」(どの著作だったか覚えていない)を読んだ時の感覚のまま、地下資源を示す造語として使った。
平家物語(自由律に)ep12「炎立ちて」周辺エピソード




